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タイムリミット

楊普の事後メシ。師匠には内緒編。

手にした湯呑には、昨日の飲みかけのお茶が残っていた。とりあえず喉を潤そうと一口含んだ。苦みが増した濃いお茶が、乾いた喉を潤していく。
「何か食べるものを」
言いかけた口を、その人はす、と人差し指で遮って首を横に振った。
「いりません」
「でも」
そんなことを言っている場合ではない。もうすぐ彼の師が帰ってくる。鉢合わせするのは絶対に避けたいのはお互い様だ。それでも
「楊戩」
普賢は軽く腕を掴んだ。
「きみが何も食べていないのを知ったら、玉鼎は不審に思う。何か食べておかないと不自然だよ」
それが体のいい言いわけだということを、彼もおそらくわかっている。この逢瀬をぎりぎりまで引き伸ばしたい、ただそれだけだ――危険を承知で。
わかりました、と楊戩はため息をついた。
「何がある?」
「麺麭とスープなら」
じゃあそれを。言いながら器を手早く用意する。冷めたままのスープをよそい、麺麭を齧って胃袋に流し込む。味なんかしませんね、と笑う横顔に、笑顔を返す余裕なんかなかった。そうこうしている間にも、二人でいられる時間がどんどん目減りしていく。思えば夜はあんなにも短かったのに。
「早く、裏口へ」
促す彼の口元を、指先で軽く拭って、普賢は身を翻した。