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茉莉花茶
望普の事後メシ、白鶴洞編。
いつもより少し早い時間にその人は起きてきた。
今日は特に予定はなかったはず、もっとゆっくり寝ていてくださいと声をかけたが、もごもごと生返事が返ってきただけ。食卓について肘をついたまま動かない。
まだ眠いんだろう。
いつもの茉莉花茶を少し濃い目に入れて出す。湯呑から湯気がふわりと上る向こうで、彼はまだうつろな目で窓の外を眺めている。
夜遅くまで起きていたんだろうか。いつもそうだが師匠は夢中になったら時間も忘れて没頭してしまう。昨日もなにか面白い本でも読みふけっていたのかもしれない。
それともどこか具合が悪いとか。それならなにか栄養のあるものを食べたほうがいい。
ちょうど桃と杏が食べごろだ。水を張った桶の中で軽く洗い、くるりと薄皮をむく。熟れた果実は崩れる前のぎりぎりの柔らかさで、注意深くくし形に切って皿に盛りつけた。
あとは小さめの茶碗に盛ったお粥を食卓に運ぶ。茉莉花茶には口を付けていないようだった。「師匠、大丈夫ですか」と顔を覗き込むと、思いつめたような目で見つめ返される。
「
……
木吒」
「はい」
なにか言いかけて、そして口を噤んだ。木吒が次の言葉を待っている間、言おうかどうか、迷っているようだった。そして「あの」と言いにくそうに口を開く。
「
……
昨日の夜中、目を覚ましたりした?」
「夜中?」
首を傾げ、そして「いえ」と笑う。
「朝までぐっすり眠ってました!」
ほう、と。彼の師は大きく息をついた。なにかひどく安心したように顔をほころばせる。
「そう。それならよかった」
なにがよかったのかはわからないが、師匠が笑ってくれてよかった。とりあえず体調が悪いのではなさそうだ。
「桃、食べごろですよ」
ほんとうにいい香り。少し冷めた茉莉花茶をこくりと飲んで、彼は桃を一口頬張った。
了
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