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やわらかな刃

刺青入りの師匠×普賢のピロートーク。

「ここにあるのはなに?」

なにかが背中を伝う感覚がして目を覚ました。触れるというにはあまりにも遠慮がちな、肌に接するかどうかというぎりぎりの気配のようなもの。身じろぎをすると「ごめんなさい」とささやかな声が耳を揺るがせた。
どうした、と問うと「これ」と指が背中を這う。
「ここにあるのはなに?」
「ここ、とは」
私は自分では見えないのだが。だろうね、と普賢はくすりと笑う。
背中一面に彫られたそれを初めて見たとき、普賢はふと息を飲み、触れてもいいの、と不安げに訊いたものだ。背に腕を回すのにも躊躇うほどのそれに、縋るにはさらに時間がかかった。それはそうだろう、他者を寄せ付けないために彫ったものなのだから。
これ、と普賢は腰の少し上あたりを指でつついた。
「ここにね、小さな刀みたいなものがあるんだ」
「刀」
そうだったかなと首を傾げる。刺青を入れたのはずいぶん昔のことだ。そのころ、絵柄を選ぶ権利などなかったし、背中を見ることはできないから気づかなかったが、刀であるなら、それはきっと
「守護の意味ではないかな」
触れれば万物を切る刃を持つのなら、それは誰かを守るものでなければならない。胸の奥底に刻まれた教えは、余すところなく弟子に伝えた自信はある。
「そうなんだ」
普賢はじっと自分の背中を見つめているようだった。
「だからあなたの剣はとてもやさしいんだね」
うつ伏せた背を、さらさらと指が辿る。恐れられこそすれ、やさしいなどと言うのはお前くらいだよ。そういって仰向けになり、背中を敷布にうずめてしまってから、普賢を抱え上げた。その瞳は笑みを含んで見下ろしている。
「僕も怖いさ。もう無理といってもやめてくれないんだから」
「それは……お前がそうさせているから」
普賢がくすりと笑い、そしてゆっくりと上体を凭れかけさせた。
「たとえばこうやって?」
怖いのはこちらのほうだ。
玉鼎は苦笑し、その滑らかな肌を受け止める。