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キューピッド
望普的には悲恋すぎるので、なんでも許せる方のみどうぞ。
現パロ的ななにか。王天君と普賢の密談。望ちゃんからあえて離れる普賢。
「実は僕、結婚したんだ」
待ち合わせたカフェに、普賢は遅れてやってきた。ごめんねといいながら水を一口飲み、そして声をひそめる。
「
…
望ちゃん、一緒じゃないよね?」
「
…
いねーよ」
そもそも別々に来てほしいといったのは彼のほうだ。そう、よかった、とあからさまにホッとした笑顔を見せる。店員に注文し、そしておもむろに切り出した。
「実は僕、結婚したんだ」
「は?」
思わずそう訊き返していた。
「
……
結婚」
「そう。昨日出してきちゃった」
「
……
おい、ちょっと待て。まさかそれ」
「うん。望ちゃんにはまだ言ってない」
まだとかいう問題じゃないだろう。やつがどれだけ普賢のことを思っているか知らない王天君ではない。そしてそれは普賢も同じはず。
「相手だれ」
「職場の女の子」
同じチームにいて、飲み会で仲良くなってね、と話す普賢は普通にどこにでもいる幸せそうな若者に見える。王天君は頭を抱えた。だから一人で来いと言ったのか。
「
……
やつにバレたらヤバいんじゃねーの」
それなんだけど、と普賢は頷く。
「近々引っ越そうと思って」
わけがわからない。なんでそこまで、と大きくため息をついた。
「やつと一緒に暮らしてれば食いっぱぐれることもねーし、そもそもおめーもやつのこと嫌いじゃねーだろうが」
「うん。大好き。たぶん」
「たぶん?」
問い返した王天君に、普賢はしばし考えたあと「たぶん」と繰り返した。
「望ちゃんのことは大好き。でも望ちゃんは僕のこと、好きじゃだめだと思うんだ」
「なんだそれ」
別に太公望の肩を持つつもりなんかない。それでもこのやりかたは気にいらない。
「フェアじゃねえだろ」
「わかってる」
わかってるよ、と普賢は笑う。
「だったらなんでそんなこと」
「ねえ、王ちゃん」
運ばれてきたグラスにストローをさしながら、普賢はぽつりとつぶやいた。グラスの中、上半分に注がれた白い液体がマーブル模様を描きながら、黒いソーダに溶けていく。
「僕らはもう、別々にちゃんと幸せにならなきゃいけない。僕は僕で、望ちゃんは望ちゃんで」
「それが結婚?相手にも失礼だろうが」
「彼女のことは、ちゃんと愛してるよ、大丈夫。でも僕は一人で幸せになるつもりはない」
だからきみに話すんだ。まっすぐ向けられる目はどこまでも真剣だった。
「僕はきみがいつ裏切るか怯えながら生きていく。それをきみにも一緒に持っててほしい。
……
僕が簡単に幸せにならないように、見張っててくれる?」
共犯か。めんどくせえ。
はあ、と大きなため息をついて、王天君は冷めたコーヒーを飲み干す。
本当に本気かどうかなど、今さら問うまでもなかった。
「やつはきっと、血眼になって探すぜ?見つかったらどうするつもりだ」
大丈夫だよ、と普賢はにっこり笑った。
「僕は昔からかくれんぼが得意なんだ」
しばらくして、普賢と連絡が取れない、と太公望に訊かれた。顔は蒼白で、それでも「知らねえ」と言い張った。「おめーが知らねえんなら、オレが知ってるわけねーだろ」と言ったら案外あっさりと引き下がった。
「どっかで幸せにやってるなら、それはそれでいいんじゃねえの。野暮だろうが?」
そう言ってやったが耳には届かないようだった。
桜が咲く頃、一通だけメールが届いた。僕は元気。そうひと言だけ書かれていた。
幸せになろうが、どこかでやつに見つかろうが、関係ねえな。オレに頼んだ時点で間違ってた。そう思うがいい。
メールをフォルダごと削除して、携帯の電源を落とした。
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