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共喰い

王天君×普賢。閨の中の物騒な会話。

さらりと肌を撫でる感覚に目が覚めた。隣で眠っていると思っていたその人が、うっすらと目を開けて自分の二の腕に触れている。
なんだ」
ぼそりと呟くと「きれいだなって思って」とふわりと微笑んだ。

二の腕にあるのは蜘蛛を模した刺青だ。もうずいぶん前に刻まれた。蜘蛛の巣に羽を半分千切られた蝶が絡まるその図柄は、自分を表したものだと言われ、つまんねえ、趣味悪ぃなと毒づいたのを覚えている。
「こんなもんがきれい? 嘘つけ」
吐き捨てるように言うが「本当だよ」と譲らない。「本当にきれい」
うっとりと、何度も輪郭をなぞる指の動きに、昨夜の熱を思い出す。腕に、背にすがり付いて喘いだ息は普段の姿からは想像できないほど扇情的だった。

ぐいと腕を引き、仰向けになったその細い身体に覆い被さる。乞う瞳が笑みをたたえている。
「僕も入れようかな、それ」
「はぁ?」
冗談じゃねえ。彼はくすりと笑って自分の細い腕を掲げて見せた。
「何の絵がいいかな選べるなら植物より動物。そう、竜とか獅子、鵺」
「け、似合わねぇ」
「そんなことないよ」
からかったつもりが、返ってきた言葉は意外なほど真剣だった。まっすぐな瞳が射るように見上げる。
「僕は誰かが思ってるほど、穏やかでも優しくもない。自分自身を表すものを選べるなら、牙を持つものがいい」
嘘など排除した冷静な声音に、それが彼の本心であると悟る。
獣を画くなら」
言いながら、その唇を指でなぞった。どこまでも柔らかで冷たい。毒でも含んでいるんじゃないかと思うほど。
「生き餌も画かねぇとな」
「餌?」
「でないと、自らが喰われちまうらしいぜ」
ふうん。冷たい唇が弧を描く。獲物を見つけたように。
「ねえ、だったら」
きみが喰らってよ。僕を。
牙を持った竜を蜘蛛が喰らうなんて、聞いたことがない。案外本当に毒を持っていて、喰われると見せかけて喰らうつもりなのかもしれない。
どこまでも優しげで儚げなのもきっと罠だ。
それでも、「いいぜ」
言ってその細い首に爪を立てる。