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砂嵐

望普です。普賢の「愛してる」を疑う太公望。R15ぐらい?

僕はこの瞳で嘘をつく




普賢が自分を見て微笑む。自分だけを見て。
それだけで、太公望は言いようのない苛立ちを感じる。
その正体が何なのか、もやもやした疑問を晴らせないまま、太公望はかすかに眉を寄せた。

「どうしたの?」
小さな小さな表情の変化に、普賢はいつも敏感に気づく。そう指摘すると、普賢は当たり前さ、と笑う。
「僕はいつもきみを見ているからね」


それはわしもだ、と何度言っただろう。そのたびに普賢は「嘘ばっかり」とかわすのだ。

「一方通行なのか?」
薄闇に紛れさせた苛立ち気味な声音を、普賢はやはり、すぐに察した。
「それでいいんだよ」
寝台に肘をついて見下ろす先で、普賢はうっとりと両腕を伸ばしてきた。しなやかな細い腕が、首に絡みつく。
「何が」
さらに苛立つ太公望に、口付けを請うように顎を上げて見せる。その表情に、一瞬何を苛立っていたのか忘れそうになる。
「僕は望ちゃんを見ている。望ちゃんは他を向いている。それでいいのさ」
「わしが、いつ」
言いかけた口をそっと人差し指で遮り、にっこりと笑う。
「いつでも。望ちゃんはそれでいいんだよ」

いつもそうだ。普賢はその声で、微笑で、自分の聞きたいことをすべて封じてしまう。
指の動き一つ、吐く息にさえ、愛を込めているつもりでいるのに、数え切れないほどキスをかわしても、腕の中の細い体に快楽を与えても、それでは素通りしているといっているようなものだ。


ああ、と堪えきれぬように、普賢が喘ぐ。
どこをどんなふうにすれば普賢が喜ぶかなど、もうとっくに知り尽くしている。首筋にも、指先でさえ、太公望が触れると、普賢はいつも全身を震わせて悦びを表すのに。

「だれにでも、か」

ふと頭の隅を過った小さな疑念を、声に出してみた。普賢は荒い息を抑えもせず、しかし、閉じていた目をゆっくり開いた。
「わしでなくても、か」
望ちゃん、と普賢は囁いた。
こんなにもまっすぐ見つめられているのに、太公望はその底を見つけられない。悦楽に涙を溜めた双眸は、その奥になにがあるのか、覗こうとすればするほど、風のある水面のように波打ってなにもかもを隠してしまう。
(こんなにも澄んでいるのに)

普賢は否とも是とも答えぬまま、ごくゆっくりと、微笑を深くした。
「僕には、望ちゃんだけだよ
「普賢」
「だけど、ねえ、望ちゃんは僕よりも大事なものがあるよね」

瞳にも、声にも、唇の柔らかさにも、触れるほど全身が捕らわれる。
足がなまめかしく動いて、求められているのを体の奥で感じ取る。

もがくほど、抜け出せないのを普賢は知っている。そうして彼は、自分の中に、罪悪感という種を植え付けていくのだ。
最奥を感じる。熱が弾ける。

突き抜けるような快感と、どうしようもない歯がゆさを、太公望は普賢の中に放った。