MN*B
2023-03-28 00:12:10
897文字
Public 即興二次創作小説
 

胸中の廃墟 【日車寛見】

即興二次小説がなくなったので、自分でお題を探してきて時間制限を設けて書いた小説です。
時間制限:30分 ジャンル:呪術廻戦 お題:郷愁と遊園地

 突然、手に入れた力。それで創り出したガベルを振り下ろし、ついていた液体を振り払う。ビッと半円状に赤い線が地面に広がる。写真でしか見たことがなかった光景が目の前にあった。

 数刻前、日車寛見はとあるテーマパークに足を踏み入れた。そこは遊園地のような煌びやかさよりも、どこか郷愁を感じさせる趣の場所で、広々としているというより狭苦しさのある、細々としたアトラクションが詰め込まれた場所だった。
 日車はそんな中で、見晴らしの悪い通路で待ち伏せをされた。むしろ、相手のテリトリーに踏み込んだといったほうがいいのかもしれない。そして、それを返り討ちにしたのだった。

 にこやかに微笑んだように見える猫の置き物は、明かりがポツリポツリとしかついていない屋内で影を纏っている。それは今は亡き『日常の中の非日常』の象徴だったのだろう。
手の中の凶器を消して一息をつけば、血生臭さが鼻をつく。自分で作り出したそれから目を逸らして、奥へと足を向けた。


 シンとして、音楽の一つもないテーマパーク内を闊歩する。まるで閉園後のようで、もしも本当にそうだったのなら、後ろめたさと冒険心が擽られていた。
 こういった場所に来たのは、一体いつぶりのことだろうか。動きもしないアトラクションを横目にしながら、子どもの頃の記憶へと思いを馳せて……途中で頭を振る。
 今の自分が昔の記憶を思い出すのは、何故だか酷く憚れることのように思えたのだ。ある意味、自己防衛なのだろう。綺麗なものは綺麗なままにしておきたい。薄汚れたところに出せば汚れて霞んでしまうのではないかと、馬鹿らしくもそう思ってしまったのだ。

 この場所が醸し出すノスタルジィにやられてしまっている。眉間にシワが寄ったのを自覚した。
 深く息を吐いて、足を動かす。出口を目指す。来た道を戻るより、先を進んでいったほうが出口に近いのを、途中で見かけた地図で把握していたから、足取りに迷いはなかった。

 ホールにステージ。脇にはまた猫の置き物。再びの来訪を望む言葉。それを暫し眺めて、背を向ける。――きっと、自分はもう来ないのだろうと自覚しながら。