MN*B
2022-07-08 21:57:29
2268文字
Public 即興二次創作小説
 

願い事のその前に

呪術廻戦二次創作小説。七夕ネタ。
登場キャラ:京都校二年、三輪霞・禪院真依・究極メカ丸(与幸吉)

即興二次小説で書いたものを加筆修正したものです。
ジャンル:呪術廻戦 お題:黒尽くめの解散
元→【 http://sokkyo-niji.com/novel.php?id=203563

 湿気を多く含んだ風が、細く青い葉を揺らす。
それを眺める真依は呆れた声で言った。

「敷地内に腐るほど生えてるじゃない、竹なんて」

「真依~。これは笹ですよ、笹!」

真依の横から三輪が訂正を入れた。必要な訂正とも言えなかったが。
そんな三輪のさらにその横に居たメカ丸が情緒のないことを言う。

「これは竹だろウ。竹なんてどうするんダ」

「これって七夕飾りのですよ、メカ丸。え、というかこれって笹じゃないんですか?」

「どっちでもいいわよ」

真依は投げやりにため息をついた。

 彼らの通う呪術高専 京都校、その建物の出入り口のところに先日までなかったものがあった。それが今彼女たちが話している"竹"であり"笹"である。ちなみに、高さで言ってしまえば『竹』だった。
それに目が留まった真依が立ち止まり、一緒に歩いていた三輪も止まり、そこへ通りがかったメカ丸も立ち止まった。という状況である。
 話をする彼女らの前には、立派な"笹"が紐で括られて飾られていた。禄すっぽ飾りらしい飾りもつけられておらず、現状では飾り気のない竹でしかない。

「誰がこんなとこに置いたの」

ちょっと邪魔ね、といった態度を隠しもせず、真依は言った。

「補助監督の田辺さんですよ。ほら、ちょっと訛りがある喋りをする方です」

そう。と、興味なさげに真依は頷く。答えが欲しくて尋ねたわけではなかったので。
その会話をメカ丸が引き継ぐ。

「三輪はなんで知っているんダ?」

「そりゃまぁ、ここに設置するのを手伝ったんで! ついでというかお駄賃として、余った笹を実家用に貰ったんです」

弟たちが喜ぶかと思って……と、三輪ははにかんだ。
 その様子をメカ丸のレンズ越しに見た本体、与幸吉は少し言葉に詰まった。その後、「……そうカ」と小さい声がメカ丸のスピーカーから鳴った。
 その不自然な間に気がつかない三輪は、うーんと唸りながら顎に人差し指を置いた。

「でもまだ置いたばかりで飾りがひとつもないんですよね……そうだ!」

「嫌よ」

「まだ何も言ってないじゃないですか! もう!」

間髪入れずに拒否をした真依に、不貞腐れる三輪。
もちろん真依はからかい半分で、三輪もそのことはわかっている。女子同士のじゃれ合いだった。

「それで? 話は聞いてあげる。話だけね、一応」

いじわる~!と三輪が悲鳴をあげる。そしてプイっとそっぽを向いた。具体的に言えば、メカ丸の方向になる。

「いいですよー。メカ丸はきっと手伝ってくれますから……ね、メカ丸!」

「なんのことダ……

「飾りですよ、飾り。笹に飾る七夕飾りを作りませんか?」

一緒にやれば楽しいですよ!と、三輪は誘った。
メカ丸は、なるほどナと呟いて、暫し沈黙する。

 メカ丸は機械だ。それも用途は呪霊を祓ったり、時には物を破壊するためのものだ。その指先は太く、細かな作業に向いているとは言えない。
だが、メカ丸もとい与幸吉には、誰かと一緒にこういった行事にいそしむ、といった経験もなかった。もしかすると、与幸吉本人のほうがメカ丸より"向いていない"かもしれない。それなら……と、与幸吉の唇が震えた。

……うまく作れるかわからなイ。それでもいいカ?」

その言葉を聞いて、三輪は顔をパァっと輝かせた。

「いいですよ! というか、うまく作らなくたっていいんですよ、こういうのって!」

一緒に頑張りましょうね!と三輪はメカ丸の手を掴んだ。

「あら。仲間外れ?」

拗ねたように真依が口を挟む。
三輪がにやけた口元を隠しもせず、真依のほうへ向き直る。

「しょうがないですね~。真依も一緒に作りましょう」

「私も作るのは確定なのね」

真依はツンとして言う。
 彼女は、しょうがないわねといった風な、少し高飛車な態度を崩さない。しかしそれがパフォーマンスなのは、三輪もメカ丸も理解していた。

 今日はもう予定空いてますか?と、三輪は二人へ尋ねる。それに真依とメカ丸は肯定を返す。
その返事を聞いて、三輪はこれまた嬉しそうにしてテンションをあげた。その勢いのままに彼女は喋る。

「折り紙ってどこかにないですかね」

「事務に行けバ、あるかもしれないナ」

「買いに行ったほうが早いんじゃない?」

「そうですねー……とりあえず今日は、あるもので作りましょう! なんにもなかったら、今度、任務帰りにでも買いに行きます」

でもチラシとか、代わりがあるならそれで!三輪はそう意気込んだ。
そんな彼女とは反対に、真依はうんざりした様子をみせる。

「相変わらず貧乏性ね」

「貧乏ですから!」

「最悪、コピー用紙になるんじゃないカ……

「なるほど。白い飾りもいいかもしれませんね~」

メカ丸の危惧もなんのその。三輪はこうなると梃子でも動かない。その生い立ちゆえに、お金を使わずに楽しむ方法が身についているので。
それが今までの付き合いでわかっている二人は、しょうがないなと、内心で折れてあげた。
 ただし、真依は脳裏で買い物の予定を立て、メカ丸は密かにネットを眺めて作り方を調べている。……真依は貧乏くさいのは好みじゃなく、メカ丸は凝り性だった。
三輪はそんなことも露知らず、ビシッと片手を上げた。

「それじゃ、道具を持って食堂に集合で!」

それを合図に、三人は動き出した。