いつも贈られてばかりでは申し訳ない。以前もそう思っていたが、それでもクルウはきっと今回も俺に対して何かを用意してくれているのだろう。ここのところ、彼はせわしなくあちこちへ赴いては、キッチンに甘い香りを残していく。
「クルウに会ったかって? ああ、この間お前の好きそうな酒についてこっそり聞かれたから、紅海御殿の部屋に残ってて、たまたま持ち出していた未開封の酒を渡しておいたよ。たまにはこうやって整理整頓しに来てくれないと、俺やシンの荷物でそろそろ埋まりそうだよ?」
数日前、主である俺がいない部屋で好き勝手に呑んでくつろいでいたヴァスクさんとシンさんから情報を貰いつつ、空き瓶や散らかっている荷物を片づけながら考え事をしていた。彼に対しての感謝の気持ちを伝える意味で、この時期にふさわしい贈り物をしようではないか。
そして現在、俺の髪色によく似た青い缶を手に自宅へと戻ってみたが、鍵が閉まっていたのでどうやらクルウは帰ってきていない様子だった。早速扉の鍵を開けて家の中に入り、彼が帰ってくるまでプレゼントと共にリビングで待ってみた。しかしそれから数時間経っても帰ってくることはなく、代わりにリンクパールがリンリンと鳴り始めた。FCハウスの方にいた数人からの連絡で「お宅の白いもふもふが寝てて動かないから迎えに来い」ということだった。寝てるとは一体何があったのか、急いでハウスの方へとテレポを唱えて行ってみた。
ハウスの中に入ると、沢山の皿やグラス、空き瓶が積まれているテーブルの近くのソファに横たわるクルウの姿があった。顔は赤く発熱しているようだが、苦しんでいるわけでもなくスヤスヤと眠っている。周りで介抱してくれていた仲間たちに話を聞いてみると、どうやらクルウは酒に合うチョコレートを作るために、同じ調理師の技術を持っていたり、酒を好む仲間たちから情報を貰うためにあれこれと聞いて回っていたらしい。しかしそれが気が付けば調理師同士のチョコレートのお披露目会になり、それ以外のプリンやらクッキーなどの菓子のお披露目会に変わり、せっかくならこのまま食事でも作ろうかと料理大会になり、ついにはあるだけ酒を取り出しておつまみを作っては味を比べる……という名目の宴会と化していたらしい。羨ましい、なんで俺も呼ばなかったんだ。いや、それは一旦置いておこう。元々酒にはあまり強くない奴なので、試飲した分でそれはもう見事に酔って寝てしまったらしいクルウ。仲間内でこの子をどうしようかとなって、やっと俺が呼ばれたということだった。「お前は毎回こいつを悩ませるくらいなら、いい加減甘味も美味しく食えるようになれよ」と後ろから酔っ払いたちに声をかけられつつ、とりあえずは寝ているクルウを抱き上げて自宅まで連れ帰ることにした。「今夜は無理させるなよ」とか聞こえた気がしたが、無視。
もちろん、その後はちゃんとクルウをベッドに寝かせてあげた。ベッドサイドには酔い覚まし用の水差しとコップ、それから黒いリボンで飾り付けがされた青い缶を置く。俺はクルウみたいに凝ったものを自分で作れるわけではないが、それでも彼の好奇心を突けるようなものをと探してきたのがこの桜の香りを閉じ込めたビターチョコレートだ。エオルゼアではまず流通が難しく、東方地域でも高級品の象徴にもなる金箔も添えられている。クルウの作る最高品質のチョコレートがもちろん一番美味しいだろうが、彼はきっとこれにも興味を持ってくれるだろう。そうだ、このリボンにメモ代わりにタグを付けておこうか。文章は……「日ごろの感謝の気持ちをこめて」だなんて、ちょっとありきたりが過ぎるかもしれないが。それでも一途に、溢れるほどの感謝を伝えて、これからも幸福が続くように願っていたいから。
※元ネタ
診断メーカー「あなたはチョコレート」より
ディルがクルーシュへ贈るのはビターチョコレート。
金箔が散らされており、仄かに桜が香ります。
青色の缶に黒色のタグ付きリボンのラッピングが特徴的。
チョコレート言葉は「最初で最後の恋」「正義」「幸福」
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