頭を使う時も身体を使う時も、そんな後にはがっつり肉を食べたいという日がある。時間を忘れるほどにハンマーを持って作業をした後には、遅れてきた空腹感が早く食べさせてほしいと強く主張してくる。
ぐっと背を反らせて黒い尻尾まで固まった筋肉を伸ばしてからクロックメーターを見れば、日も沈みかけてもうすぐ誰かしらがここに帰ってくる頃合いだろうか。ゼンは手早く道具を整理してから何か用意しようと炊事場に向かった。
調理用の前掛けを着けてから慣れた手つきで炊飯や味噌汁の出汁や具の準備を済ませる。その過程でざっと食材を確認してみれば、大きなドードーの肉があったのでこれで適当におかずを作ろうかと思案した。
まずは肉に切って大きさや厚みを調整する。切り終えたそれらをボールに入れて、醤油と料理酒で下味をつけておく。味が付くのを待つ間に別のボールで醤油や蜂蜜、米酢などを合わせ、刻んだジンジャーやグリーンリーキを入れて混ぜてタレを作っておく。しかしタレが思ったより手早く出来てしまったのでついでに付け合わせのラノシアレタスも洗ってちぎっておく。
そして下味が付いた肉の水気を切ったり両面に片栗粉をまぶしておけば準備は完了である。
するとこのタイミングで賑やかな声と3人分の足音が玄関から聞こえてきた。どうやらロイとケリィ、ニコが同時に帰ってきたらしい。もうすぐ夕飯が出来るから準備しておくように声をかければ、3人共素直な返事が返ってきて手を洗ったり着替えたりしに行ったようだった。
さて少し急ぐかと改めて食材と向き合おうとしたとき、てててと駆けてくる音の後にゼンの足にぎゅっと何かが引っ付いた。見るとぐうぐうとお腹を鳴らしているニコがゼンの足にしがみついている。
「今日のご飯はなあに?」
どうにも待ちきれない様子で、せがむように瞳を揺らしてゼンを見上げている。そんなニコにゼンは諭すように優しい声色で言った。
「今日はとっておきの肉料理だ、皆が腹いっぱいになるように今から作るから。もう少しだけ待てるか?これから油も使うから飛んで当たると痛いぞ?」
それを聞いたニコは嬉しそうに顔を綻ばす。後から着替えてきたロイとケリィもゼンの方へとやってきて手伝いをすると言い出し、ニコも2人に習うように食事の準備を手伝い始めた。
さて大詰め、フライパンに多めに油を注ぎ肉を入れ両面をじっくりと揚げていく。皮にも油をかけつつ火を通せば表面がパリパリとキツネ色に揚がっていく。あとは油を切った後に食べやすいようにサクサクと切り分け、3人がレタスを盛り付けてくれた皿にのせて仕上げにタレをかければ完成だ。ご飯も味噌汁も3人の協力もあってすぐに盛り付けまで終わり、ようやく食べれるようになった頃だった。
「家の外まで随分といい匂いがすると思ったら…。」
服から白い角、尻尾まで目立つ土汚れをつけたルカが帰ってきた。そのまま食卓につこうとしたので止めてくれとロイやケリィが言い出し、ニコは我慢の限界なのか熱々の料理へと手を伸ばそうとしている。
「おい、せめて身体を綺麗にしてから来い。」
ニコを制止しつつルカに言い放つと、不満そうにルカは引っ込んでいく。そして待っていた3人には先に食事を始めてもらい、ゼンはルカの食事を用意していた。
暫くすると服を着替え髪の毛を濡らしたルカが戻ってきた。手に持った手ぬぐいでガシガシと頭や角を拭いている。
「これでいいか?」
「いいけど、こっちまで水を飛ばすなよ。」
「分かってる。」
そしてルカは食卓につくとすぐに黙々と食事を始めた。それぞれがワイワイと今日あった事などを喋りながら食事をしていく中で、ふとゼンがそれとなくルカの様子を伺ってみた。ルカは静かに料理を咀嚼した後にチラッとゼンの方へ視線を移し、ゆっくりと声を発さずに唇を動かした。そのサインに気が付いたゼンが一瞬たじろいていると、ニコが食事を終えてパンッと手を合わせた。
「ごちそうさま!おいしかった!」
そう言ってゼンの方へと笑顔でやってくるニコと、何事もなかったかのように視線を戻して食事を続けるルカを見比べてから、ゼンはニコの頭を撫でつつ呆れたようにため息をついた。
(5人の日常風景?をなんとなく想像して。どんなサインを伝えたのかはご想像にお任せします…。ちなみに作ったおかずは油淋鶏、片栗粉が調べてもデータベースになかったけど、きっとどこかにあると信じて。)
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