天海翡翠
2019-07-30 15:37:03
1953文字
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終焉への執着

5.0クリア後を前提としたお話。勢いだけで書いた短いエメ光っぽい雰囲気の何か。

「さあ、終末のアーモロートに案内しよう。」
 その言葉に導かれるように目を開けると、そこにあったのは煉獄の炎に包まれた壮大な街だった。人々が逃げ惑い、異形の存在に襲われてその命を散らしていく。街の外へと必死に駆けていく人々の波をすり抜けるように自分は武器を構えて一歩踏み出した。

 第一世界から無尽の光が払われた今、水晶公や暁の仲間から勧められて世界を巡る自由な時間を得た。ある日はクリスタリウムの人々と交流を深め、ある日は各地で活動する暁の仲間の様子を見に行き、そしてある日にはただ目的を決めずに一人旅をした。
 様々な場所を巡って最後に辿り着いたのがテンペストだった。海底の生物やオンド族が生息しているこの地の奥に、未だにぼんやりと灯が見える街があった。アシエン・エメトセルクが作り出したこの街には、自分より遥かに大きな人間たちが暮らしている。取っ手にすら到底届かない大きな扉は、自分が近づいた瞬間にすんなりと開いて街の中へと迎え入れてくれた。
 街を歩く人々は、自分を見ても警戒することはない。小さな人間の来訪にあまり関心はないようで、自分たちの営みを淡々と刻んでいる。自分のやるべきことが最初から決まっていたかのように、ただひたすらに同じ時を繰り返す。この街は、途方もない遠い昔のひと時の再現。それは初めてこの街に来た時に真実を既に見抜いていたある人に教えてもらった。
 そのひと時を見て、心のずっと奥深くに微かに痛みが走った。何故だか分からないが、泣きそうになった。どうしてと考えても分からず、ただそれは自分が光に呑まれかけているが故の痛みだと思い込んだ。
 だけど、その痛みは彼との決着がついても尚、消えることはなかった。

 ある大きな建物といっても自分には全てが大きすぎるが、その中でもとりわけ厳かな雰囲気の漂う建物の中に入る。かつてこの建物に入るために使った証はまだ機能するようで、問題なく通された。
 その建物の最奥の扉にたどり着き、手を押し当てて開こうとしたがビクともしない。やはり、あの先の世界は彼の力があればこそ行けたのだろうか。彼のいない今となってはもうこの先には行けないのかもしれない。
 ならばせめてと、目を閉じてこの場でかつての戦いを思い出す。すると扉に触れていたはずの手からその感触が消えて、そこにいないはずの彼の声がまた響いた。
 こうして、再び幻想を冒険することが出来るようになった。あの町と同じように、同じ滅びの時が繰り返される。3つの災いを退ければ終わる幻想の世界を、その風景を目に焼き付けるように何度も訪れた。暇さえあれば海底に行く自分のことを不思議に思う仲間たちもいたが、それも気にせずに終末幻想に身を委ねた。

 忘れない、忘れたくない。また託された、あの言葉がただひたすらにこの幻想を想起させようと自分を動かす。第一世界の罪喰い討伐の旅の中で、少し皮肉な笑顔で過去を語ってくれた彼の声が響く。絶望の過去に、せめて一つの希望を差し込んでやるんだと、何度も自分を奮起させてひたすらに武器を振るった。
 もし彼がこんな自分を見たら、きっと呆れるんだろうな。だけどまだ、自分がこの痛みの答えを見つけるまではせめてこの魔法は消えないでほしいと思う。だからどうか、またその声で導いてほしい。いつか彼が闇の星々の上で「なんだ、やればできるじゃないか。」とか言ってくれる日が来たらいいのにと、叶わない願いを抱きながら再び幻想の幕開けを待とう。

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「厄災はこの程度ではない、真相を見せてやろう。」
 本当に、このなりそこないの考えていることは分からない。何故またここにやってきてしまったのだろう。何故また私たちの忌々しい過去に挑むのだろう。終わったはずの物語が何度も開かれては読破される。そしてまた「もう一度」と望んでいる。
 この空間に僅かに縫い留められた魂の残滓ではもはや、新たな幻想も創造も紡ぐことは出来ない。だが、あの英雄が想起したものに少し手を加えてやるくらいは出来るらしい。ならば完全に消えるまでの暇つぶしにでも利用させてもらおう。そうだな、夜の夢を待つ赤子に読み聞かせるような物語ではないが、それでもいいならまたあの声を演じてやろう。せめて、その先の未来に目を向ける前に私たちのことを刻むがいい。たとえあの言葉が枷になっていたとしても、言ったことをもう後悔はしていないのだから。
 二度と変える事の出来ない台詞に、また一つ私の小さなエーテルを乗せる。あの英雄の耳に届くまでどうか消えないことを願って。また、暗い街に星々が終焉の炎を降らす。
「さあ、終末のアーモロートに案内しよう。」