普段のクルウは別に手が付けられないタイプではない、大概は眠くなるのかゴロンと寝っ転がってしまう。そもそも彼は酒にはそんなに強くないのだ。
ただ、どうも今回は酔い方が悪かったらしい。知り合いからライスワインを頂いたので飲ませたのだが、どうにも彼には強すぎたものらしくあっさりと堕ちた。いや、堕ち過ぎた。
最初は普段と同じようにウトウトとしていたので、ソファーに寝かせて杯やつまみを片付けていた。大方片付けも済んだ頃合いにベッドまで運ぼうとして彼に近づいた瞬間、すごい勢いで腕が伸びてきてソファーに身体を叩きつけられた。
「お、いっ!なにする…っ?」
そのまま俺はうつ伏せの状態にされて、その上にクルウが乗り掛かる。狭い空間に圧力をかけられて、ギギッとソファーが悲鳴を上げた。そして次の瞬間、項に鋭い痛みが走った。
「いっ、た…!?」
プツッと皮膚に何かが入る。熱い吐息が幾度となくかかり、ザラザラの舌がチロチロと動いて肌を撫でる。思いっきり噛まれたのだ。
「ウー…、ふーううっ!」
「こら、クルウ…!やめろ離せ!」
ジタバタと暴れて彼から逃れようとするが、それに伴って彼の噛む力も強くなっていく。段々と溢れていく血の感触に、これ以上は首が引き千切られそうだ…と一旦抵抗を止める。すると彼は牙を抜いてくれて、噛み跡があるところをペロペロと舐め始めた。
「クルウ、そこ舐めなくていいから…。」
諭してはおいたが、彼は止めてくれない。そのまま髪や肩まで舌を這わされる。俺は相変わらずソファーに潰されているので詳細は分からないが、角で聞く限り彼の呼吸はずっと乱れている。そして、尻の辺りでもぞもぞと何かが当たる感覚。
「うー…っ。」
「…はあ、クルウ、ちょっとどいて。ここじゃ狭いから。」
彼も何かを察したようで、ようやく上から退いてくれた。起き上がって顔を見ると、唇を僅かに朱に濡らし、ピンと耳と尻尾を立ててこちらを見つめる猫がいた。
「お前の好きなようにしていいから、ベッドでやろう。」
それを聞いてゆらりと笑みを浮かべた彼に、結局俺は一晩中身体を噛まれるはめになった。
「あの、ごめん。」
「いや、俺こそ軽率にあの酒飲ませなきゃ良かったし…。というか覚えてないんだろう?」
「だからごめんって言ってるじゃん…。」
朝起きて俺の身体に大量の噛み跡、更に腰痛と喉の痛みで起き上がれない状態にクルウが悲鳴を上げて、慌てて治療箱とタオルを取りにバタバタと家中を走った。それぞれの処理をしてもらいつつ昨日の状況を話はしたが、彼はどうもあまり覚えてないようだった。今度からは俺の晩酌用の酒は彼に見つからないようにしておいたほうがよさそうだと改めて思った。
ちなみに、あのライスワインをくれた知り合いに後日この話をしたところ、あげておいて良かった、おかげでいい酒の肴が出来たとケラケラと笑われた。非常に悔しかった。
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