にゃんにゃんドーナツネタ

昨日呟いてたネタで短いお話。オスラッテ。

 とある日の雪降るリムサ・ロミンサにて。
 オスラの赤魔道士がブラブラと街中を歩いている。アフトカースルの広場には電飾がついた木々が並べられ、プレゼントボックスが積みあがって溢れかえっている。
「しっかし、賑やかよなあ。」
 そんな独り言を呟きながら歩いていると、白髭を付けた赤い外套を着た男性がそっと近づいてきた。
「そこのアウラのお兄さん!もしよろしかったらうちの店の新作ドーナツの試食は如何ですか?」
 男性が両手に持っていたのはトレーに乗せられた色とりどりのドーナツたちだった。
「んー、有難いんだが。俺甘いのは苦手なんだ。」
「おや、そうでしたか?でしたらご家族やご友人へのプレゼント用のドーナツは如何ですか!」
「うーん。」
 プレゼント用とは言われても、贈る人といえば一緒に住んでるミコッテのナイトくらい。そういえば、甘いのが苦手な自分に合わせてかなり辛いものや東方の癖のある料理を一緒に食べてくれるが、彼が甘いものを食べてる姿を滅多に見ていない。自分に隠れてこっそり食べてたりするかもしれないが。たまには、彼に甘いものをあげてもいいかもしれない。
「そうだな、プレゼント用の、見せてもらっても?」
「ええ、どうぞ!」

 男性の案内で近くにあったスイーツ専門店に初めてやってきた。甘いの全く興味ないから、ここに店があるってこと自体知らなかった。中に入ったら結構女性や家族連れがいて、割と人気があるのかなとか思った。
「この時期、うちではドーナツに力を入れています。性別や種族に合わせてオススメのドーナツがありますので。」
「おー、それは知らなかった。」
「ちなみに、贈る予定の方はどのような方でしょうか?」
「えっと、ミコッテの男性。甘いのは多分大丈夫なはずだ。」
「ふむふむ、でしたら。今年の新作の1つであるこちらのドーナツは如何でしょうか!」
 男性が持ってきたのは、見た目にはチョコレートを練りこんだであろう生地のドーナツだった。
「こちら、ミコッテの方向けにうちのパティシエが開発したドーナツになります!味のベースはシンプルなチョコレートですが、つい最近東方から入荷したスパイスを少量混ぜて味にアクセントをつけています。購入されたミコッテの方にはリピーターも多くて。」
「リピーター?そんなに美味しいのかこれ。」
「ええ、今年の新作の中ではダントツの売れ筋商品です!」
 実際店を見回してみると、ミコッテ女性の持つトレーにはそのドーナツを置いてる人が多い。同族が美味しいと言うなら、きっとナイトも好きな味なのかもしれない。
「分かった。じゃあそれを多めに入れて、あとはこの店のオススメのものをいくつか詰めておいてくれ。」
「ありがとうございます!」
 数分待っていると、可愛らしいスノーマンが書かれた箱に入れられたドーナツを男性が持ってきた。ちなみに値段は普通のドーナツ買うより遥かに高かった。まあでも、日ごろの礼も兼ねたプレゼントだし、まあいいかと赤魔道士は思った。

 ゴブレットビュートの家に帰ってくると、ナイトはリビングで本を読んでいた。
「ん、おかえり。」
「ただいま。ほれ、お土産買ってきた。」
「お土産?」
 赤魔道士が箱をナイトに渡すと、不思議そうに首を傾げてナイトが箱を開いた。
え、これ、ドーナツじゃん。」
「そうだけど?ちなみに全部お前用な。」
「うん、甘いのダメだからなそっち。それにしてもざっと見で10個以上はあるなこれ。」
「まあ、適当に食べてな。」
「分かった、ありがとう。ついでになんかお茶でも淹れてくるわー。」
 ナイトは読んでいた本を閉じて机の上に置くと、いそいそとキッチンに向かって行った。

 ナイトが淹れてくれたカモミールティーを飲みながら、赤魔道士は美味しそうにドーナツを頬張るナイトを見ていた。特に先程オススメされていたチョコレートベースのドーナツは「凄い!これ味が全然違う!」と、とても嬉しそうに食べていた。やはりミコッテに合う味のようだ。一口だけ食べさせてもらったけど、チョコレートという割にはあんまり甘くないように思えた。
 しかし、この後のナイトの様子は少しずつおかしくなっていった。例えば、リビングに飾ってあるドリンキングアプカルの動きをずっと見ていたり、ソファに座っていた赤魔道士の横にやたらとすり寄ってきたり、挙句にはテーブルの下に潜りこもうとして背中ぶつけたり
「お前本当に何してるんだ。」
「うう。」
 ナイトの背中を擦ってやりながら、赤魔道士が呆れたように問いかける。
「なんか、気ににゃってつい。」
はい?」
「うなう。」
 ナイトが耳と尻尾を伏せてしょんぼりしている。いや、ちょっと待て。
「今なんて?」
「にゃんか、気が付いたら喋り方が変ににゃった。」
「え、あの、まさか、わざと変えてるとかじゃないよな。」
「普通に出来てるならそうしてる。にゃんかおかしくにゃってる。あとは動くものが色々気ににゃって仕方にゃいんだ。」
 こうして喋ってる間にもどんどんにゃんにゃんしてる。
「どっか身体の調子がおかしいとかあるか?」
「うー、それはにゃい。というかいつもよりも元気にゃ感じ。」
「元気。」
「にゃんだろ、お酒のんだ時と似てる気がする。」
「酔ってるってことか?」
たぶん?」
 勿論酒は飲んでいない。じゃあ、もう原因は先程のドーナツくらいしかないのでは?
「そういえば、ドーナツにスパイス混ぜてるやつがあるって言ってたな。」
「スパイス。ああ、さっきのチョコのやつかにゃ。」
「そうそう。」
「んにゃ、にゃんかそのスパイスが関わっていそうだにゃん。」
ちょっと店に行って聞いてくるか。」
 赤魔道士が座っていたソファから立ち上がって歩き出した次の瞬間、後ろから何かがぶつかってきた。
「いっ、た!?」
 ぶつかってきたのはナイト。何故か自分の尻尾を掴まれて引っ張られているような感覚がする。
あ、にゃ?にゃんで俺!?」
 ぶつかってきて尻尾を掴んでいるナイト本人も困惑している。
「ちょっと、尻尾引っ張るな!それ痛いから!」
「ご、ごめん!」
 慌てて尻尾から手を離してくれたナイトは、かなり落ち着きがない。
「一体どうなってるんだ。」
「ううう、どうして。」
 いよいよ泣き出しそうになっているナイト。赤魔道士はとりあえずと頭を撫でて落ち着かせようとする。ナイトはもはや無意識なのか、もっと撫でてと言わんばかりに頭を手にすり寄らせてゴロゴロと喉を鳴らしている。
「というかこれ、もう完全に猫だよな。」
「ねこ。」
 ナイトは相変わらず喉を鳴らしながら、目を細めて尻尾をゆらゆらと揺らしている。
「スパイスで猫っぽくなるとかそんな効能のやつあるのか、いやミコッテの場合はウンカイツルの事とかもあるしなん?」
 いつの間にかナイトが正面に移動して赤魔道士の身体にくっついている。既にしがみついていて、離しそうな気配はない。
「んー、にゃー。」
「なんだよお前。」
「猫ににゃったにゃら、猫らしくにゃらんとにゃ。」
「もうほとんどにゃしか言えてないぞ。」
「それでもいいにゃん。」
 ナイトはそう言って、赤魔道士の胸元に頭をつけて髪と耳をスリスリさせる。赤魔道士はくすぐったくて思わず身体を捩らせる。
「ふふ、たまには甘えさせてもらう、にゃん。」
 この状況をどうしようか、という事は赤魔道士の頭の中から一瞬で吹き飛んだ。可愛い猫め!どうしてくれる!

 ちなみに、後日元の状態に戻ったナイトと何故か機嫌のいい赤魔道士が店を訪れた時にこの事について聞いてみたが、どうもあの日に作ったドーナツの中にスパイス配分を間違えて多く入れたものが紛れていたらしく、お詫びとしてバスケット入りの大量のドーナツを無償で貰ってしまった。ナイトはそれでもあのドーナツの味を気に入ったらしく、たまに店に寄ってはスイーツを買ってくるようになった。赤魔道士は相変わらずほとんど食べれないが。