さちこ/Sharia
2023-12-18 08:37:34
1620文字
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結局さらに2日かかった

6.5後

異界ヴォイドの危機が去って数日。
それぞれが思い思いに過ごす中、ガレマルドから帰ってきたばかりのアルフィノは石の家に詰めっぱなしだった。

目の前には大量の書類の山。彼が不在の間溜まっていたものだ。
タタルでも処理できるものはしてくれていたらしいが、それでも盟主としての判子やサインが必要なものは全て積み上げるしかなかったとか。心配してたまに様子を見にくるシャリアを癒やしにしつつ、かつてミンフィリアが詰めていた部屋にもう3日も徹夜でこもりっきりだった。

「アルフィノ〜?生きてる〜?」

がちゃりと扉が開き、可愛らしい二対の耳がぴょこりと生えた。英雄殿のお出ましだ。
けっこう減ってる、と呟きつつ、彼女は当然のようにアルフィノの隣へと立ってコトリと紅茶を置いた。
ぼうっとする視界に紫色を察知し、アルフィノは真っ黒なクマを飼っている瞳をシャリアへと向ける。

……シャリア……
「はいはい、シャリアよ。書類だいぶ減ったじゃない」
……大丈夫だ……まだ生きてる」

うんうん、と頷く女の弓だこだらけの手が白いふわふわを撫で回す。
よく頑張ったねと労いの言葉をかければ、アルフィノはふらふらとシャリアの腹へと顔を埋める。

「ほら、あとちょっとじゃない。今日はもうここに居てあげるからさっさと終わらせなさいな」
……あぁ……論文よりマシだ」

そりゃあそうだ、脳死でサインするだけなのだから。
しかしそう口に出すとタタルにものすごく怒られてしまうため、シャリアはそっと心の内側に言葉をしまった。一応アルフィノは内容も確認しなければいけないらしい。

ふと、アルフィノが次の書類に手を伸ばしたまま固まっているのに気づく。
ぼうっとあまり焦点の合っていない瞳がシャリアを見上げており、その限界具合を物語っている。
やっぱり休んだ方が、と問いかけようとした、次の瞬間。

「うわっ……んん゛っ!?」

灰色のシャツへとアルフィノの小さな手が引っ掛けられ、グンと女の上半身が大地へと引き寄せられる。
そして途中で止められたと思えば、少年の薄い桜色の唇が吟を紡ぐ口へとくっついた。
そして呆気に取られ薄く開いた歯の隙間から、小さな舌が女の口腔へと入り込み────好き勝手蹂躙し始めた。

「ん゛っ!?!? んぅ、〜〜〜〜〜っ!!」

歯列をなぞり、上口の裏を擦り、舌を搾り上げ、頬の裏を舐めとる。
やがて女の腰が抜けて座り込んだ後も数秒じゅるじゅると蹂躙を続け、満足したようにすっかり低い場所へと移動した恋人の口から舌を引き抜く。
すっかり正気を取り戻した瞳が柔く細められ、ヴィナ特有の雪のような青白い肌をするりと撫で上げた。そして最後に仕上げ代わりのバードキスを女の額へと浴びせ、書類へと向き直る。

「うん。これがあるならやりきれそうだ」
「そ、そそそんなっやらせるわけないでしょ!?」
「今日は一緒に居てくれるのだろう? いい充電機能だね」

目の前に横たわる少年の太ももを激情のままに叩き、そのまま手すりにして立ち上がる。
小さく痛いと悲鳴をあげたアルフィノは滑り止め用の布が巻かれた手が足から離れるとヒリヒリと痛むそこをさすり、ふにゃりと気の抜けた顔で笑った。
耳の内側を真っ赤にしたシャリアは照れ隠しをするように書類を1束手に取って机へと叩きつける。

「ん!!お・し・ご・と!!!!」
「この束が終わったらまたいいかい?」
「ダメに決まってんでしょーが、こンのマセガキッ!!!!」

少年はひとしきりクスクスと笑ってから紅茶を優雅に飲み込む。
散々92歳で年上なのだと言っているくせに、うぶな反応を返してくるものだから。自分の矢はからかいがいがあって困る。
ついには羽ペンまで用意して差し出してくる彼女に一つ礼を言って、再び書類に向き合う。

あの褒美があると考えれば、こんなちっぽけな山はすぐに片付けてしまえる気がした。