ojyohu
2016-11-01 21:58:58
1480文字
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かたくりの花言葉

岩融がやきもち焼くだけのお話

感想受付:可
返品受付:不可
誰向け:私向け

新しく顕現した刀たちの練度の調整を兼ねた遠征から帰還した岩融の耳にひっそりと駆け込んできたのは、
遠き時代を共に歩んだ、稚い見た目とは裏腹に時折身をつまされるような痛いこと言ってくる、今剣が主たる審神者を呼ぶ声だった。

度々欄間に額をぶつけてしまうほどの長駆を有効活用して、浴場へと向かう道すがら眼前に広がる庭を眺めてみれば、何やら妙に土と葉にまみれた今剣と、つい先日恋仲と胸を張って言える仲になったばかりの審神者がいた。
見える限りから推察するに、恐らく岩融の可愛い子天狗が弘法も筆の誤りが如く隠れ鬼かなにかの最中に近くの木々から転げ落ちたのであろう。
で、それを共に鬼事に興じていた他の短刀たちに急遽呼ばれた主が駆けつけた……といったところだろうか。

頬についた土やら髪に絡みついた木の葉を手早くとってやる主と失敗したところを知られて拗ねているのか頬を膨らませながらも去れるがままの今剣。

いつだったか主が言っていた、
「可愛いと可愛いを足すとさらに可愛い」
と、
「可愛いは正義」
だったかはこういう時に使えばいいのだろうか?
恐らくあってはいると思う。

そこまで考えて特に問題もなさそうだと思い、二人のところに行く前にさっさと汗を流そう、と歩みだしたその瞬間。
一度見て、視線を外し、風を切る音がする程思い切り振り返りもう一度見た。

主が今剣の額に口づけを落としているところを。

脳裏を駆け巡ったのはただひたすらに「羨ましい」であった。

そのまま羨ましいに占領された頭のまま、気づいたら湯船に浸かっていた次第である。

羨ましい
それに気づいてしまったらそこに思考は一直線である。

岩融がこの本丸に顕現されたのは今の半分ほどの数しかいない頃である
比較的顕現しやすい短刀は、当時確認されていた全員が既に顕現済みであったし、今剣はこの本丸の初期刀・陸奥守に続く最古参の初鍛刀と聞いている。
この段階でも羨ましいと思ってしまうのに、その頃どころか今でも時折短刀達は不寝番だなんだと理由をつけて主の寝床に潜り込んでいると一期一振や江雪左文字がこぼしていた。
その中でも今剣は群を抜いて添い寝されているのも知っている。

岩融が滅多にしてもらえない頬への口づけも短刀たちと主が仲睦まじくしていたのも知っている。
回数に関しては誉れの関係なのか今剣が首位独走なことも知っている。

正直に言おう。


たいっへん、羨ましい。


この体躯に文句はないし小さきものたちも可愛いとは思うが、それとこれとは別問題。
羨ましいものは羨ましい。










「なので主」
「へ?」
身支度を整え、そそくさと主の元へ向かい。
途中歌仙から預かった菓子で主を釣って、胡座をかいた膝に乗せて腕の中に閉じ込めたならば。

「俺のここにも一つ褒美をくれ」
と言って額を指さした。










おまけ




「あるじさま!いわとおし!ぼくも”すいーとぽてと”、たべたいです!」
ぽすんっ、と軽い音をたて岩融の膝ではなく、その上の審神者の膝に飛び込む今剣。

「えへへ~。これがあるじさまのいう、だいすきと だいすきを たして いっぱいしあわせ のじょうたいですね!」


「だいすきな いわとおしと だいすきな あるじさま 、それに だいすきな あまいおかし ですからね!」
えっへん、と胸をはって言う今剣に対してか、か細い声で「かわいいは、せいぎっ」と聞こえてきた。

「主、息はしてるか?」











(可愛いから許す)