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倉木
2023-12-17 16:31:32
2673文字
Public
Rot
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LD
Rot亀。LとDが感覚共有しているよっていう設定
飛び起きた拍子に散らかっていた足元に散乱していた雑誌が音を立てて落ちていく。
そんな音にすら肩を跳ねさせ、うっすらと見える暗闇の中でそこが自分の部屋であることに気付いた。
安堵の溜息は随分と湿っていて、べたつく額を同じく汗で濡れた手で覆う。
痛烈だったはずの夢は目を覚ましてしまった時に脳が拒否してしまったのか、朧気ですら思い出せない。
明確なのも嫌だが気持ち悪さがまとわりついて離れてくれず、原因がわかればと無理矢理思い出そうとして引きずり出してしまったのは忘れていたいはずの過去の悪夢。
真っ暗闇をひとりさ迷うものだったか、もしくは以前戦った相手になす術もなく蹂躙されるものだったか。
痛いくらい脈打つ心臓は落ち着く様子もなく、こうなったら無理矢理寝ようとしたところで無意味だろう。
世界が終わるかもしれない大敵との戦いの後、こうして悪夢に目が覚めることがあった。
頻度で言えば夜通し起きるのに慣れてしまって、目ざとく見つける兄への言い訳がいい加減尽きてきたくらい。
夜を明かす覚悟を決めたとしてもすぐには動く気になれず暗い天井を見上げた。
そうしてぼんやりとしていた時、ふと部屋の入口付近に影が落ちたのが見える。
兄の覆うような影ではなく、反して小さな弟のものではなく。
「
……
ドニー?」
家族の中で誰よりも夜更かししがちなドナテロなら起きていてもおかしくはないだろうが、大概は研究室に籠って出てこない(たまに目の据わった状態でキッチンに立っているところは見るが)。
半信半疑で声をかけたものの、一拍置いて顔を覗かせたのは背中を丸めたドナテロだった。
いつもように不機嫌を顔に乗せた彼は、唐突に何かを振りかぶる。
「ぶっ!!!」
不意打ちで投げられた枕を顔面に喰らう。
痛みはなくても驚きと衝撃で慌てて払いのけた。
「なにすんだよっ!」
喚くレオナルドにドナテロは綺麗にきまったのが嬉しかったのだろう、勝ち誇ったように鼻で笑った。
そしていつもの偉そうな調子で口を開く。
「うるさくて作業にならないから文句言いに来た」
「はぁ?うるさくしてないだろ、さっきまで寝てたし」
そんな言葉にドナテロは再び不機嫌な顔に戻った。
レオナルドの前に来るとぐっと顔を寄せる。
「僕がうるさいって言ってるんだ、毎日迷惑」
そう非難する台詞だが、間近で見るとドナテロの目もうっすらと隈ができているように見えた。
いつも夜通し作業してるしよく見る表情ではあるがどこか疲れているようだし、そんなドナテロを見ていると背中を擽る不快感。
「
……
あ」
小さい頃、レオナルドとドナテロは何かと感覚を共有することが多かった。
ドナテロが遺伝子の近い生態系がなんとかとか言っていたけれど、理解できなかったので良く覚えてない。
どちらが怪我をして痛みに泣けば片っぽも泣き出すし、どちらかが落ち込めば気が付くと傍にいたもの。
そんな感覚は過敏な時期を抜けた今、たまにざわざわする感覚はあれど意識することもなくなっていたからすっかり忘れていた。
「
……
悪かったよ」
最近の不調はどうやらレオナルドの思った以上に異常を発していて、それがすべて伝わってしまっていたのだ。
耐えがたい感情の激流をよりによって何かとうるさい相手に知られていたことに羞恥がないわけではないが、そんな感情の一部でも共有していたのだと思うと流石にいたたまれなくなる。
それで肩を落としたのだが、そんなレオナルドを見とてもとても嫌そうな顔をされた。
「
…
えぇ、素直に謝るレオとか気持ち悪い」
やれやれと首を振る様にイラっとしたものの、彼はツンとした態度のままどこ吹く風。
「なんだよせっかく謝ったのに!」
文句を言いに来たのならもう用事は終わっただろうに、ベッドサイドに立ったままそこから帰ろうとしない。
そもそも文句だけならわざわざこなくたって、ドナテロならいくらでも手段が思いつくはずだ。
そう考えて浮かんできた可能性に、レオナルドはつい笑いそうになる顔を両手で抑えて隠した。
(意外とわかりやすいんだよなーこいつ
…
)
この天邪鬼は文句を言いに来た体で、心配で様子を見に来たのだろう。
にんまりとした顔はこれ以上我慢できずベッド枠にもたれていた腕を掴んで引き寄せると、バランスを崩したドナテロが倒れこむ。
「何するんだ!」
一人用のベッドの上、レオナルドを挟みこむような体制で上に乗ったドナテロの顔が真っ赤に染まる。
殊勝さを取り去ったレオナルドの方が今は優勢で、しっかりと腕を掴んだまま体制を変えベッドに寝転んだ。
「一緒に寝てくれたら寝れる気がするんだよな~」
ふたりが収まるには狭すぎるスペースは密着せざるを得ない。
「
……
僕まだやることがあるんだけど」
首元に顔をうずめると少しだけ身体が強張る、が言葉で言いながらも抵抗の手は少なかった。
だって枕持ってきてるもんな、その気がないなんて言わせない。
指摘すると怒って帰りそうなのでそれ以上は追及しないことにして首元に顔を寄せる。
スキンシップに慣れていないドナテロが身体を強張らせ、次第に弛緩していくと柔らかな感触は居心地がよかった。
久しぶりに触れ合う感覚に、何故だか今になって思い出したのは夢のこと。
暗闇で目を瞑ったまま揺蕩うのはレオナルド自身。
眠っているのか死んでいるのか、そんなことすらわからないくらい静かに、穏やかに。
そんな自分を客観的に見ていて、言いようのない恐怖を感じて飛び起きたのが、つい先ほどのこと。
叫びたくなるような衝動を感じたのは、果たして自分だったのか否か。
背中に伸びた手に縋りつくような切実さを感じ、答えが見えた気がした。
間近で見たドナテロは目が合うと目元を赤く染めて目をそらしてしまった。
それでも離れずに穏やかに侵食する熱と、溶け合う感覚は酷く懐かしい。
お互い負の感覚を放出すれば通常より何倍も重く押しつぶしてくる。
自分よりも聡明なドナテロのことだ、そのことにいち早く気付きひとりで持て余した期間も長かっただろう。
その鈍感さを反省して、小さくすすり泣く声は聞こえない振りをすることにした。
「おやすみ、良い夢を」
そう言ったのは一体どっちだったか、もしかしたらどっちもだったかもしれない。
今夜はよく眠れそうな気がして、レオナルドは静かに目を閉じる。
そうしてふたりして寝坊した結果、様子を見に来た兄弟に散々からかわれたのは後の話だ。
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