倉木
2023-12-17 16:06:02
1742文字
Public 新亀
 

LD

新亀


原型なんてもはやなくなってしまっているくらいの鉄の残骸たち。
残った残骸とパーツの色味から、かろうじてあの装置かな?と判別できるくらいの代物になっていた。

「わぁ、派手に壊したねぇ」

思わず感心した声が出てしまって、それを嫌味と受け取ったらしくガラクタの残骸を抱えた相手は小さく謝罪の言葉を述べた。
我等がリーダーが叱られる前の子どもよろしく意気消沈した様子で現れた後、その言葉は既に3度目だ。
こんなに反省するのならやらなきゃいいのに。

「ラフと喧嘩して踏みつぶしたんでしょ、甲羅で」

え、と驚いた顔には笑顔で返す。
破損状況を見れば大体どんなことがあったかなんてわかる、こんな粉々になることなんてよっぽど丈夫で重たいものにプレスされなければ起こらない。
そしてそんな事態なんて、わざわざ統計とらなくたてミケランジェロでさえ答えられるだろう。

「その……すまなかった」

4回目。
他のふたりに比べたらまだ少ない方だが、素直だから良いってわけでもないくらいにはドナテロの作品達に対する破壊数は少なくない。
幸い今回のは生活に支障が出るレベルではない玩具の類だ。
無碍に扱われて腹が立たないとは言わないが、そんないかにも悪いことしてしまったといった顔をされたら何も言えなくなってしまう。
怒る気すら失せる、なんて一番厄介だ。

「ラファエロは逃げてしまって、後で絶対謝らせる」

「あ、いいよ多分後でこっそり来るだろうし」

レオナルドに負けず劣らず気まずい顔をしているところが容易に想像できてしまって、そんな様がそっくりで想像だけで笑えてしまうくらい。
こんなところ良く似てるのだこの兄弟は、本人たちは嫌がるだろうけど。

「今頃どこかでお詫びの品でも探してんじゃないかな」

別に謝罪のだけで良いだろうに、それだけでは足らないときっと頭を抱えながら外を飛び回っているはずだ。
きっとそれを知ったら目の前の兄はまた怒って喧嘩になるだろうが、そうして持ってくるものは意外とセンスが良いので結構楽しみだったりするからドナテロは敢えて言っていない。

……よく把握してるんだな」

代わりに聞こえた、少し硬い声に顔を上げる。
面白くないという気持ちが全面に出ている憮然とした表情。

「何?嫉妬でもしてるの?」

それともここでもラファエロと張り合っているのかと思ったが、途端にレオナルドは真っ赤になった。

「そ、そんなことは!」

なんの説得力もない否定の言葉だが、どうやら今回の感情の矛先は自分だってわかって思わず顔が緩む。
気恥ずかしさであまり直球な愛情表現を好まない相手だからこそドナテロは彼にとってちゃんと特別なのだと、そう思える状況は何度あったって嬉しいもの。
それに普段の真面目一徹な彼のこういう表情を見るのは気分が良い。
本人が無意識なせいで、猶更だ。

「それで?まさかレオも謝罪だけで許してくれるなんて思ってないよね?」

気分の良さのまま少し面白くなってきてしまって、そう言葉を投げつけてみた。
負けず嫌いなレオナルドのそんな子どもっぽいところを引き出すのは結構楽しい。
さて、どうでるのだろうと思った矢先、腕を掴まれ引き寄せられると触れ合う唇の感触。

………へ」

ぽかんと口を開けていたであろうドナテロに対して、してきた張本人の方が恥じらって俯いていた。

「いや……前に、たまにはこっちからしてくれって、言ってたから

いやいや、なんでお前の方が恥ずかしがってんの。
そのくせ、お詫びにキスをひとつなんてロマンチストにも程がある。

……オーケー、降参だよ」

自分のキスでお詫びになるなんて、無意識な傲慢さんなところもレオナルドらしいといえばらしい。
隠しきれないであろう真っ赤な顔をあえて隠さずハンズアップ。
鼻を鳴らしたレオナルドに両手を広げれば、抱きしめようとして自分の両の手が塞がっていることに気付き。
机に破片を落とさないよう丁寧に置いてから、ようやく空いた手で抱き上げる仕草は反して少し乱暴だった。
鼻先を擦り合わせ、熱のこもった表情には先ほどの殊勝さ等どこにもない。
それでいい、ここから先はただの逢瀬だから。