ortensia
2023-12-17 00:47:19
710文字
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フキンシンパロヨーリ。

いさんそーぞくのはなししてる。

 薄い紙っぺら一枚を目前に置いて居た小男が、ぱっと顔を上げて何を言うかと思えば。
「おまえ、おれの遺産受け取らないか?」
 足を組み直す。仕方無いので話を聞いてやることにする。
「おまえの?殺しで儲けた端金(はしたがね)を?」
 男は顔を俯けて、その首の後ろをがりがりと引っ掻いた。殺しで儲けたも、端金なのも、間違って無いからだ、わたしからすれば。
「殺しについてはおまえにとやかく言われたく無いが、まあいい。おれは兎に角、……自分が死んだ後の有り金の行先を決めたいだけだ。」
 男は言う。しかし、それこそ可笑しな話だった。
「遺産?それはおまえ、御実家……故郷に入金して居るのでは?」
「それはそうだが。」
 男はまた首の後ろを掻く。
「おれは、おまえにも何かを遺したいと、思っただけだ。」
「はあ?」
 組んだ足を下ろす。
「待て。何も、おれがおまえに施しをくれてやるなんて話じゃあ無い。」
 男が止めて来た。
「ただおれが、」
 それはこちらが思って居たより寂し気な声だった。
「おまえに、おれのことを忘れてほしく無いと、思っただけだ。」
……
 少し思案したが、やはり嗤うことにした。
 わたしは男に言ってやった。
「金で自分を記憶させようなど、これ程馬鹿げた話が有るものか。」
……ま。そうだよなあ。」
 すると男も嗤った。
 男は目前の紙きれを雑に丸めて、屑籠に放った。そう、いわゆる遺書のことだ。
 その軽い音が紙幣を握ったものと同じなものだから、金も命もなんと軽いものだろうかと思い、ライティングビューローの前に腰掛けて居た男が吹けば飛ぶことの無いように、上から押さえ付けるために乗り上げた。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。