ortensia
2023-08-11 16:38:08
3068文字
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えすしぃぴぃにーごーにーよんじぇいぴぃ。一応現パロよーり。モブがしにます(?)。


 まあ確かにそんな時間の頃合いだった。
「腹減ったな。たまにはおれが手料理をご馳走してやるよ。」
「おや。いつも食べる専門家みたいなおまえが?」
「まあ見てろ、神懸かったヤツ作ってやるから。」
 その台詞の時点で違和感は確かに有った。神?そんな表現を使う男では無いのだ。
「クックパッドで見付けたレシピなんだよ。」
 なんだネットの受け売りか。その記事のどこかに神懸かりなんて表現が有ったのだろうか。
「投稿者の人は、兄が昔作ってくれたシチューが好きで、それを再現したくて模索して居たら、この作り方に辿り着いた(*^^*)らしい。」
 何が(*^^*)だ。まあ、勤勉な人なのかな。
「じゃあ行くか。」
「え?今の我々の家のキッチンでは作れ無いのですか?」
「そうだ。材料が足り無いとかの話だけで無く、屋内で作るより外の方が都合が良いんだ。」
 え?七輪とか?バーベキュー的な?
 しかし連れられて来たのは山の奥地だった。なんでだ。
 人っ子一人居無くて、なんだか山の生き物の気配も遠い。生い茂る木々は人目を遮り、自殺の名所にでも成りそうな樹海だ。なんでだ。
「何を作るんですか?」
「簡単絶品シチューだ。」
「え?」
 レシピのタイトルだろうか、実に安直だ。
 そんなシチューをこれからここで作るのか?こんなところで?シチューを?
「先ず、にんじんは摺り下ろしておく。」
 なんか始まった。
 それにしても、にんじんか……
「鍋にサラダ油と牛の血液と石油を混ぜ合わせる。」
「石油!?」
 と言うか鍋と言いながら取り出されたそれはドラム缶では?
「量多く有りません!?」
「サラダ油は7t、牛の血液は7ℓ、石油は35ℓ必要だ。」
「いったい何人分のシチューなんです!?」
 そもそもシチューの材料では無いだろう!?
「一人分だが、一食分だから少し量が多いかもな。まあ遠慮せずにおまえが好きなだけ食えよ。」
 そんな心配はして居無い。
 しかし一人分でこの量なら、二人分と成ると単純計算でサラダ油が14t必要なわけだから、それは大変なことだろう。量の時点で既に神懸かって居ると言える。最初に記事を見て材料を確認した時点で作るのを辞めたく成るレシピだ、何が簡単絶品なんだ、実際にはこれはそんなどころでは無いが。
「それから、混ぜた液体に豚15kgを入れて強火で83時間加熱する。」
「83時間!?」
 丸三日以上だが!?
 しかし我々はそこで83時間過ごした。この阿保は火加減を強火に保ちながら火の番をし続けた。
「次に弱火にして90時間放置する。」
「まだ続くんですか!?」
 また三日以上掛けるのか!?
「その間にアンモナイトの化石20枚を細かく砕いておく。」
 化石の単位って枚なんだ、とどうでも良いことが思い浮かぶ。
 もうこの先何が起こるか全く予想出来無い。おかしいな、手料理を振る舞うと言われてここ迄着いて来たんだが。今自分が料理の光景を見て居るのだとはとても思え無い。最初に摺り下ろした2本のにんじんが今は懐かしい気すらする。
「アンモナイトの化石とTNT火薬を混ぜ合わせる。」
 わー、温故知新って感じー?……いや違うだろ。
「次は檜を使って鳥居を作る。」
 なんでだ。
「鳥居の着色はお好みなんだが、おまえ、やるか?」
「やります。」
 だからか、なんで材料置き場にペンキが置かれて居るのだろうかと思った。
 鳥居の着色作業は自分にとって身近な作業であったので、この異様な調理現場から受ける衝撃から少しだけ慰められた。と言うかもう料理の光景を目に収めたく無い。
 それでも鳥居を塗り終わってしまった。
……終わりました。」
「よし。こっちも豚入り石油牛サラダ油を充分冷まし終わったぞ。」
 豚入り石油牛サラダ油って何。
「そしたらこの液体の中にアンモナイトTNT火薬を入れて、ゆっくり掻き混ぜる。」
 アンモナイトTNT火薬って何。
「次に純金5kgを土に埋める。だいたい8mくらい。」
「8m……
 やはり色々と神懸かりな数だ、と言うか途方も無い。
 しかしこの男はそれをクリアして行く。このレシピの利用者がこの男以外に居ると言うのか?そもそも投稿したの誰だよ?
「この場所にアンモナイトTNTと混ぜた豚入り石油牛サラダ油をゆっくり注ぐんだが、勢いが付くと埋めた純金が出て来てしまうんだ。」
「へえ。」
 へえ、と返したものの、何も分から無い。
「そしたらここに鳥居を北側に向けて建てる。」
「ふうん。」
 ふうん、と返したものの、もう何も分から無い。
「この鳥居に馬頭観音とミカエルとキルンギキビとオシリスを彫るんだが、おまえ、やるか?」
 これまた何故材料置き場に置かれて居るのかと思って居た彫刻セットを差し出される。
「まあ、知り合いより専門では有りませんが、おまえよりは出来ます。」
「こう言うのは気持ちが大事なんだよ。」
 こう言うの、って、これがもうどう言うのなのか分から無いんだが。
「モチーフに成って居れば大丈夫なんだよ。間違えると小中規模の爆発が起こるから。」
 大丈夫じゃ無いが!?
「流石、手際が良いな。そしたらこの鳥居の下で1975年3月19日20時24分以降に生まれた人の6kgを焼く。」
 どなた。
「ぎゃあ下から前方後円墳が!?」
「4mくらいの小さな前方後円墳が生えて来たら、もう10分くらい焼くぞ。」
 なんで前方後円墳が生えるのが正常なレシピなんだよ。
「よし焼き終わったな。じゃあ摺り下ろしにんじんを掛けるぞ。」
 漸く?漸くにんじん?
「そしてここから一時安全圏迄離脱する。」
「安全圏……?」
 それは逆に言えば、危険なことが起こると言うことでは?
 思ってる間に手を取られて樹海の中を連れられる。現場から80mくらい離れた。
「今から何度か大声を上げるが、回数を正確に数える必要が有るので、あまり気を削が無いでくれ。」
「わ、分かりました……。」
 やるなと言われればやりたく成るが、これ迄のよく分から無い調理手順を振り返るに、何か一つでも過ちを犯せば、その代償がこちらにも飛び火するだろうことは容易に想像が付くので、我慢することにする。
「1422回だからな。」
 また大規模な数字だ。
 そして始まった。
「ぐわー!」
「は!?」
「ぐわー!」
「え……
「ぐわー!」
 そしてそれは確かに1422回叫ばれた。
……終わった。」
「終わりましたか……。」
 なんだか聞いて居るだけだったこちらも疲れた。
「そうしたらさっきの焼き人間が爆発するんだが、」
「焼き人間が爆発……
「凄まじい光量で発光するから、さっきの場所の方は見るな。」
 だいたい1分後くらいに、たしかに爆発音が聞こえ、樹海が真っ白に成る程の光が放たれたようだった。
「じゃ、戻るか。」
「ええ。」
 もう、なんのために何をやったんだっけ?
 そして爆心地にそれは有った。
「はいお待たせ。神懸かり的超自然シチュー。」
 そうだった。シチューを作って貰うと言う話だった。
 それは器によそわれた、傷一つ無い、特になんの変哲も無いシチューだった。
 記憶を探るが、材料置き場にこの陶器の器は置いて居無かった。
「あの、調理の様子を見て居て思ったのですが、」
「なんだ?」
「にんじん摺り下ろしておくタイミング、早過ぎません?」
 シチューの味は、特に絶品と言う程でも無く、至って普通だった。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。