ortensia
2023-07-23 11:34:52
967文字
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よーり

おめでとう。

 傭兵はぱちくりと、訝しげに瞬いた。目の前ののっぽが、お誕生日のプレゼントは何か希望は有りますか、と訊いて来たからだ。
「別に要らないだろ、」
 プレゼントとか。
 傭兵がそう言えば、はあ?と強めの語気が返って来た。
「じゃあおまえ、わたしのことは祝ってくれないつもりですか?」
 それは。
 うーん。
……祝いたいと思う。」
「でしょう?」
 それでこの問答は解決と言わんばかりに、リッパーは何事も無かったかのようにまたプレゼントの希望は無いのかと同じことを訊いて来る。
 傭兵にとっては、自分の日はどうでも良いが、リッパーの日は祝いたくなるものであった。対してどうやらリッパーは、ひとの日を祝うのが当然なら、自分のものもそうであって然るべき、と思って居るらしかった。逆の考えだ。
 しかし、そう考えると、それもそうか、と思えて来た。
 どうやら傭兵よりリッパーの方が、ひとや物事を公平に考えられて居るらしいと気付いた。傭兵の誕生日に成ってリッパーが朝からはしゃいだ様子を見せると、それを見て漸く他の者達は傭兵の誕生日に気付いたようであったくらいだ。そして口々に言う。傭兵の性格からして自分のそれを公言することは無いだろうが、知って居たならリッパーが言ってくれても良いじゃ無いか。
 するとリッパーは。
「何故わたしが触れ回るのです?」
 ところが、リッパーの中では別に、ひとも自分も同じように祝われて当然、と言う考えなわけではなかったようで、単に自分の日をひとに祝わせたいだけであったようだ。
 つまり、自分の記念日を祝わせたいという望みと、傭兵の誕生日を祝いたいという望みに、互換性は無い。しかし。
「わたしがしたいからお祝いして居るだけなのに。」
 自分がしたいからする。その行動原理の内容は同じであった。
 リッパーに対してで言えば、傭兵だってそうだ。
 リッパーだから祝いたいと思った、そう気が付いた。そして今はリッパーも、傭兵だから祝いたいと思って居た、それに気付いた。
 それからは。
「なあ、今度のおれの誕生日なんだけど、」
 傭兵は、自分の誕生日を自分では祝いたいとは、相変わらず思えなかった。
「はいはい。今年はどのようなご希望が?」
 しかし、たったひとり、この男になら、祝われたいと思うようになった。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。