Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
yn
2022-05-24 21:00:27
4253文字
Public
拳コユ
Clear cache
夢の話
拳コユ前提、本編Δ嘘コユ大集合話です。
三時空かき分け練習とも言う。書きたいところだけ書いたのであまり意味がわからないヤツです。難しいことは考えず読んでくだされば幸い。
───はい、大丈夫です。
熱はありません。体調に異常はありません。意識もしっかりしています。はい。健康です。
これ、皆さんは聞こえているんでしょうか。いえ、あの、一応、内緒にしておく約束をしているんです。あまり話さない方がいいんじゃないかなって。二人と。
二人、はい二人です。わたしも入れて、三人。
はい
……
そうです、よね。お話し、しないとですもんね。わかりました。
もしまた二人に会えたら、謝ります。
おっしゃる通りです。最近、ずっと不思議な夢を見ていました。
わたしと『わたし』と【わたし】の夢です。わたしは自分をわたしだと分かっているし、これが夢なんだということも認識していました。
『わたし』と【わたし】は別のわたしなんだろう、と、思います。『わたし』はわたしと同じ顔をした吸血鬼で、【わたし】は人間だけど、なんだか少しやつれて見えました。歳ももしかしたら、少し下かも。
なぜこうなったのかは
……
わたしにはわかりません。
『わたし』は少し心当たりがあるようでした。〝あの子がそう望んだから、多分本番前にわたしたちで試しているんですよ〟と、言っていました。
あの子ってだれ?と聞くと、『わたし』はナイショです、と悪戯に笑いました。『わたし』は私と同じ顔をしているけれど、おしゃべりです。多分わたしより口数が多いかな。逆に黙ったままの【わたし】は不安げに小さくなるばかりでした。
え、あ、はい。そうです。わたしと、『吸血鬼のわたし』と、【人間のわたし】がいるんです。全部で三人。円卓を囲んで、椅子に腰掛けてる。
わたしは、ずっと黙ったまま泣きそうな【わたし】がなんだかとっても可哀想になってしまって。二人に、折角こうして会えたんだから何かお話をしませんか?と誘いました。
それ以来わたしは、彼女達に会うと話をします。それは本当に取り止めのないことで、今日あった嬉しいことや、悲しいこと、怒ったこと。ご飯や料理の話です。
『わたし』は吸血鬼ですが新横浜に住んでいるそうです。退治人ギルドがあって、吸血鬼対策課があって、吸血鬼の皆さんがいる。わたしの住んでいる新横浜とあまり変わりないように感じました。ロナルドさんが吸血鬼でドラルクさんが吸血鬼対策課だったり、こちらの吸血鬼の皆さんが人間で退治人の皆さんが吸血鬼で、と不思議なところはたくさんあるけど、毎日楽しく暮らしているそうです。
けど、【わたし】の住んでいる新横浜はまるで違います。吸血鬼と人間の対立が深く、昼のない世界。彼女は人間と吸血鬼が共に歩める世界を目指して、彼と共に昼と夜のどちらにもいけない人たちを助けたり、人と吸血鬼の橋渡しをしていると言いました。
なのでいつもわたしたちが会えると、最初に【わたし】の世界であったことを聞き、慰めることから始まります。
誰が怪我をした。誰を助けられなかった。もっとこうしていれば、もっと強ければ。彼の助けになれるのに。
彼女は悲しそうにぽつぽつと話すのです。わたしはそれが自分のことのように苦しくて、いつも【わたし】のことを抱きしめたくなります。『わたし』もそれは同じようですが、わたしたちが椅子から立ち上がることはありません。きっとそれはしちゃいけないんだと思います。理由はよく、わからないんですけれど。
はい。わかりません。でもきっと彼女達に触れると、良くないと思うんです。
───え、彼?ああ、はい。
二人とのお話の大部分は、その、彼のことなんです。えっと
……
は、恥ずかしいのでその、言いたくない、です。すみません。
とにかく、わたしと『わたし』と【わたし】には、共通する彼の人の話をよくします。
わたしと【わたし】の彼は吸血鬼ですが、中身は全く違うようでした。
こちらの彼は明るくて優しくて、わたしのことをいつも気にかけてくれて、かっこよくて大きくて
……
あ、ああっはい、すみません、ごめんなさい、つい
……
えっと、とにかく、気の良い人なんです。はい。うう、お父さんには内緒にしてくださいね。なんでもです、なんでも!
……
はい、【わたし】と一緒にいる彼は、吸血鬼だけれど、全く違うんです。乾いていて、どこか遠くを見ているんですって。弟さんたちを守りたくて、でも分かり合えず
……
【わたし】が聞いても細かなところは話してくれないそうです。でも、強くて優しいところはおんなじなんですって。
もう一人の『わたし』の方ですか?はい、いるそうです。でもあっちの彼は人間で退治人なんですって。もう二十年近く退治人をしてるベテランで、人気の退治人だとか。ヴァモネさんみたいな感じかなあ。聞けば聞くほど不思議ですよね。
どんな話か詳しく
……
?本当に、大した話はしていません。
私はその日にあった出来事や、彼と出かけた話、それからお料理のこと、お父さんのこと、とか。彼のご兄弟の話も少しだけ。
『わたし』が話すのは大抵家族のことと彼のことの二つです。お父さんと空を飛んでお散歩した話、彼の退治に同行して下等吸血鬼の捕獲を手伝って褒められた話、とか。そうそう、『わたし』にも、ゴウセツと言う名前のお父さんがいるんですって。古き血の吸血鬼だそうです。お会いしてみたいなあ。
【わたし】の話はいつも、最初は業務録みたいなんです。何処そこで何があった、何をして収穫が何、被害がどのくらい。大抵、途中で『わたし』が難しい話はやめて!と降参して、それからは彼の話です。彼は煙草を吸うそうで、彼のために巻いた煙草の出来を褒めてもらった、とか、逃げるときに抱き上げてくれた腕にドキドキした、とか。
本当に取り留めのない、女の子同士の話です。うー恥ずかしい。これ記録するんですか?やだなあ
……
。
二人とお話しするのは、二週間に一度くらいでした。それが一週間になって、三日になって
……
毎日になって。それで、ここに運ばれたんですよね。ご面倒をおかけしました。
最後にお話ししたときに、『わたし』が〝きっとこれが最後ですよ〟と言ったんです。
〝あの子に聞いてきたんです。どうかなあ、って〟
それに、【わたし】が不安げに聞きました。
〝あのこ、って、誰ですか
……
〟
〝そっちにいるのかわからないから、詳しくお話はできません。でも、きっと大丈夫だって言っていたのできっとこれがわたしたちが会える最後ですね〟
そう言って、『わたし』はにっこり笑っていました。
わたし、周りがこんな大騒ぎになっているのを知らなかったので、えっと、こうして会えなくなるの、ちょっと残念だな、なんて思ったんです。すみません。
でも二人もそう思ったみたいでした。特に【わたし】は、同年代の女の子とお話しすることがあまりなかったらしくて。
〝残念です
……
不思議なお友達ができた、と、思ったんですけど〟
〝わたしもです。いいなあ、そっちの彼は吸血鬼で。こっちの彼も、早く血族になってくれないかなあ〟
そう、『わたし』が笑っていたのを覚えています。
なんとなく外が騒がしくなって、ああ終わりなんだと思いました。
お別れですね、とわたしが言うと、【わたし】が悲しそうに笑いました。
〝わたしたちもそちらのお二方のように、昼と夜が手を取れるよう、がんばります〟
わたしはなんて言ったらよいのかわからなくて、黙って頷きました。そうしたら『わたし』が立ち上がって、身を乗り出したんです。誰かが椅子から立ち上がったのは、初めてのことでした。
〝人間はすぐ死んじゃうんですから、無理しないように!そっちの彼にもっと甘えたらいいんですよお〟
〝でも、ご迷惑に、なっちゃいます〟
〝いいんです!ちょっとくらい!えいっと抱きしめてみたらいいんですよ!こう、裸になって後ろっから!ぎゅっと!〟
〝ひええそんなの無理ですよお〟
【わたし】が真っ赤になってブンブン手を振りました。それで、『わたし』が【わたし】の方に、手を伸ばしたんです。
あと数ミリで、触れてしまう、と思った瞬間でした。
『わたし』の椅子の下に真っ黒な穴が開いて、ぐわぁっと白くて小さな手がたくさん出てきたんです。小さな手が『わたし』の体をあちこち掴んで、引っ張りました。とても恐ろしい光景だけど、不思議と怖くはなかったです。
『わたし』はやぁん、なんて言って、手に引かれるがまま穴に吸い込まれていきました。消える瞬間、〝二人ともお元気で!〟と言ったのが聞こえました。
【わたし】の方も同じように、白い手がずるずると這い出て、彼女を穴に引っ張っていきました。彼女はこちらを見てさみしそうに笑ってから、〝そちらの彼と末永くお幸せに〟と言ってくれました。
彼女たちが消えて、わたしは一人になったんです。
数秒して、わたしにも手のお迎えが来ました。ずるずるとたくさんの手が生えてきて、わたしを優しく引っ張ります。そのうち一本の手のひらに口があって、はくはくと開閉しました。むかえにきたよ、といったんだと思います。音としてはわからなかったんですけど、多分そう言っていました。
そのままわたしは穴に落ちて、落ちて
…………
落ち切った、と思ったら、ふわっと浮いたんです。浮いたというか、誰かに力強く掴まれて、引っ張り上げられたような心地でした。
それで目を開けたら、ケンさんとミカエラさんが汗だくでわたしをのぞき込んでいて、トオルさんが小さくなったあっちゃんを抱っこして泣きそうになっていて
……
お父さんがわたしの手をぎゅっと握ってくれていたんです。ちょっと、痛かったな。
―――
わたしがおはなしできるのは、これがすべてです。
え?野球拳ですか?『わたし』のほうの彼は好きでエッチなビデオとか見てるみたいですけど、【わたし】のほうの彼はしないらしいです。とてもじゃないけど信じられな
…………
あ!
………………
。
えっと
………………
。
あの
……
マイクってこれですか
…………
?
…………
えい!
「あ゛!?」
ばきん、という音が響き、スピーカーから聞こえていた音声が途切れる。ケンが取調室のガラスを拳で叩き、オイコラとドスをきかせるが、コユキは知らんぷりをして顔を背けている。同室で聞き取りをしていたカズラはもはやコユキを見ておらず、ガラス越しにケンに向かって「弁償」と訴えていた。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内