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yn
2022-02-05 22:09:24
1650文字
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拳コユ
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知らない生き物
✊コユ前提の✊が子供を作ることに対してどう思っているかの私見メモ的SS。勢いで書いたから後で消すかもしれんです。人によってはセンシティブな事だから一応ご注意。読むの自己責任よろしゅう(現時点での見解で今後ドゥルンドゥルンに変化する可能性があります)
「俺ァ親父にゃなれないよ」
一瞬、何を言ったのかわからなかった。
驚いて言葉の出どころを見ると、長兄であるケンが一升瓶を抱えてテーブルに突っ伏している。あっちゃんはお行儀よくベッドの中、ミカエラは何故かケンの着物に包まって壁際で爆睡している。
吸血鬼殺しという物騒極まりないその酒は名前に違わぬ桁外れの度数で、試しにと舐めたミカエラは慌てて別の酒で口を濯ぎ、トオルはちょんと触れた舌先がしばらくヒリヒリしていたほどだ。
馬鹿な兄は「上等だコラ弟の仇は俺が討つ」と勇んでかぱかぱとグラスを開けていたので流石だなと感心し切っていたが、ザルにも限界はあるらしい。
綺麗に剃り上げられた頭は手ぬぐいが外れていて、てっぺんまで真っ赤に染まったのがよくわかる。どろりとした目で机に伏した泥酔姿は初めて見るもので、思わずスマホで写真を撮ってしまった。まだ仕事中であろう兄の彼女にこっそりと送っておいた。反応が楽しみだ。
今なら何聞いても答えてくれそうと、未来の兄嫁たる人間の娘についてあれこれと聞きまくり、惚気を散々聞かされて食傷気味だったところで、適当に流していた深夜ドラマで子供が遊ぶシーンが目に留まった。
本当に何気なく、「コユキちゃんとケン兄の赤ちゃんできたら俺めっちゃ可愛がるなあ」と口からこぼれた。他意はない。質問したつもりもない。しかしケンは答えた。冒頭のそれである。
「
……
なに?なんて?」
聞き間違いかと思い、一応聞き返してみる。濁った目はトオルを見ているようで見ていない。聞こえる単語に対して無意識で答えているのだろう。
ケンはヒヒ、と小さく笑った。
「俺ァ、親父にゃなれねえっていったの」
「
……
何で?俺育てたのケン兄じゃん」
トオルにとって、ケンは兄であり父だ。人に紛れる吸血鬼としての生き方も、身の立て方も、命の守る為の逃げ方も全部ケンが教えてくれた。
元々面倒見が良い性分だったから、一時住んでいた長屋の子供にも人気があったし、昼の遊びも夜の遊びも上手かったから慕う奴も多かった。年がら年中あちこちを放浪していたケンとトオルが、周りにすぐ馴染めたのはケンの開けっ広げで懐深い性分が大きい。
それを一番近くで見ていたのはトオルだという自負もある。
子供ができたらきっとこの兄はいい父になるだろう。そう思っているのに、当の本人は真逆の考えらしい。
「俺、このシンヨコであんたほど父親向いてる吸血鬼もいねえと思うよ」
「ばっかお前、なーんもわかってねえ」
「何がよ。俺のこと育てたのあんたじゃん」
「そりゃおまえ、トオルは弟で俺は兄貴だからな」
「何それ」
ふひひ、と何故か半笑いのケンは瓶の口を指で弄るケンは、本当に自分の兄なのかと疑いたくなるほどに情けなく見えた。張りのない声が、まるで弁の壊れた蛇口から垂れ流される水のように言葉を紡いでいく。
「親父を知らねえからな、俺ぁ」
「
……
」
「親父を知らねえ、おふくろとまともな話もできねえ。賢い弟以外の馬鹿な血族は一同揃って人殺し。ご本人様も過去に何人埋めて捨てて流してきたか知れねえ。そんな男が、ガキ作っちゃいけねえよォ」
「
……
」
「己の親を手本に親するもんだろ、たぶんよ」
「知らねえよそんなん。俺だって、あんたしか知らねえもん」
「そんな男のガキ宿すなんて、あの子が可哀想だ
……
とっつぁんにも面目立たねえ
……
」
「
……
コユキちゃんは、そんなこと思うような子じゃねえよ」
「ははは
……
尚更」
出来た娘だから、あの子はそう言うさ。
言葉尻はほとんど消えて、聞き取れなかった。そのままぐおぐおと熊のようないびきをかきはじめた兄をぼんやり見つめる。
「
……
ばかなにいさんだ」
「ホントにね」
何処かからか聞こえた、眠気で舌の回らない声に返事を返して、トオルは持っていた缶チューハイを一気に煽る。
先程まで嬉々として飲んでいたそれは、安いガムのような味がした。
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