化物じみた花が焼き尽くされて消えたのと同じ頃、カラ松の隣に居た伴侶は文字通り消えた。そこで改めて、彼女が花の妖精であることをカラ松は思い出した。妖精という言葉から連想するイメージからは掛け離れていたと言うのもあったが、カラ松は彼女が何であろうと構わなかったという理由もあった。
「結婚は予想外だったが、やはり何をしても結局は死んだじゃないか」
カラ松は平坦な声で、彼女の姿があった場所に語りかけた。だいたい予想はしていたのだ。だって花の命は人間よりもずっと短い。それ位はカラ松だって分かっている。だから尽くした。望むものを与えた。彼女は望むものを口に出してくれたので、非常にやり易かった。けれどやはり養分にはならなかったのだろう。そう思ったカラ松は、その花の本体が化物じみた姿で赤塚を大暴れしていた事実を知らない。
「帰ろう。我が愛しのファミリーの元へ」
歩みを進めたカラ松は、もう彼女のことなど頭からスッパリと切り捨てていた。相手のいない優しさなど、単なる粗雑なパントマイムだ。面白くはないだろう。
とんでもない事故物件にひたすら尽くしていたカラ松が帰って来た。しかも一人で。あれだけ顎で使われていたのにどうやって、あれだけ入れ込んでいたのにどうやって、兄弟達は聞きたい事が山ほどあったが、どうにも聞き辛かった。落ち込んで居たり、怒っていたりしていれば慰めと称してあれこれ聞き出すことも出来ただろうが、カラ松は恐ろしいほどいつも通りだった。
まず帰宅して第一声が「帰ったぜ、マイファミリー!」だった。気障ったらしい物言いも、空元気という訳でもなさそうで、カラ松はあっという間に日常の松野家に溶け込んでいたのだ。まるであの事故物件の存在など無かったかのように。
「カラ松兄さん、あのドブスは?」
「死んだ。天に定められし運命だったのさ。彼女はそうなるべくしてそうなった。まるで絵画のような光景だった」
日常がそのまま帰って来た。それで良いと他の兄弟は思ったらしいが、トド松だけはカラ松の事が気になって仕方ない。思わず問いかけたトド松に、カラ松はにっこりと笑った。格好付けたつもりの顔ではない。空元気でもない。本当に絵画を見たかのように、感嘆の声で。
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