「今日の8位は蠍座のあなた!蟹座の人と行動すると新しい扉が開くかも!?ーーそんな蠍座のラッキーアイテムは、オレンジ色のジャージです!」
テレビから流れてきたそんな声に、高尾和成は朝食を摂りながら顔を引き攣らせた。曰く「おは朝って国民の個人情報握ってんのかよ」と思いながら。どう贔屓目に見ても、そんな占いの内容にピンポイントで当たるのは、高尾の知る限り自分しかいない。蟹座の相棒、緑間真太郎とは登下校どころか教室でも部活でも共に行動することが殆どだし、所属するバスケ部のジャージはオレンジ色だ。持ち歩くどころか身に付けることもある。しかも、何の因果か今日は近くの高校との練習試合で、ジャージを着用するのだ。
「わぉ、コンプリート……」
「変なこと言ってないで、食べ終わったらさっさと片付けなさい」
思わず呟いた言葉を母親にバッサリと切られ、高尾は返事をしながら空になった食器を台所の流し台に運んだ。
「そして、今日の一位は蟹座のあなた!何をやっても絶好調、向かうところ敵なし!ラッキーアイテムはあなたが名前を書いた色紙!これでさらに絶好調!」
直筆サインかよ!と朝から笑いに震えながら、高尾は支度をするために自室に戻った。いやしかし、妙ちきりんな置物だの、高そうな焼き物だの、簡単には手に入らない物じゃなくて良かったわ、と独り言ちた高尾はまだ、ラッキーアイテムやアドバイス通りに動いた際の、おは朝占いの脅威の的中率を知らなかった。
「真ちゃん、今日のラッキーアイテムどんな感じよ」
「抜かりないのだよ。一番上手く書けたものを持っているからな」
「ぶっは!なに、昨日から調べて書いてたのかよ?」
「当然だ。ラッキーアイテムにも俺は人事を尽くしているのだよ」
緑間と合流した高尾は、その色紙を手に持つ姿にまず噴き出し、それが散々書いた中で一番上手く書けたものだと知り、再び噴き出した。見せてみろよ、と高尾が言えば、見易いように持ち替えてくれる位には、どうやら緑間は認めてくれているらしい。
「やっべー!真ちゃんマジ達筆!」
ーー 特にこの緑って字、超好きかも!
などと考えてしまった高尾は、その日の間ずっと、緑間の書いた筆文字が頭から離れなかった。恋か!と自分で突っ込みながらも、否定出来なかったことが高尾の頭を悩ませる。
ーー 蟹座の人と行動すると新しい扉が開くかも!?
確かに開いたかもしれない。かわいいグラビアアイドルを頭に浮かべたって、すぐに緑間の書いた筆文字のがいいかも、とちょっと思ってしまうのだ。高尾はその夜、頭を抱えて眠れぬ時を過ごしていた。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.