茉神 汐
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10年以上前の黒歴史晒し

創作/10年以上前の産物/厨二感全開



Angel in white





見えないものが、見えたり。
人の本質が、見えたり。
そのせいで、いつも一人でいることが多かった。
両親は、いない。施設で育ったから。
とにかく、施設に入る前の記憶が、全くなかった。







淡野克己 16歳。
高校一年生。
施設は高校卒業までだから、就職しないといけない。
でも、人の本質が見えてしまうから、嫌だった。
丁度、クリスマスの近づいた冬の日だった。
克己はいつものように施設へ帰る為に公園を突っ切ろうとした。
すると・・・・・。
何か、光が見えた。
気になって、光の元凶を見に行く。
そこには、少女がいた。

「・・・・・何してんの?」

声をかけると、少女は酷く驚いたようだった。

「あなた、私が見えるの?」
「見えなきゃ声かけない。」
「・・・珍しい人ね。」
「で、何してんの。」
「・・・・・・・・儀式。」
「何の。」
「成人の。」
「成人式は一月だろ。」
「私、人間じゃないわよ。」

そういった少女の背に、白い羽が見えた。

「・・・・・あ、天使?」
「やっぱり、見えるんだ。」
「見えなくていいものまで見える。」
「・・・・あなた、なんていうの?」
「・・・・・・教えない。」
「私は、湊。」
「だから俺は教えないって。」
「・・・・私が教えたいから教えたの。」

そう言うと、少女は微笑んだ。

「・・・俺、もう戻らないと。」
「そう。じゃ、また会えるといいわね。」
「・・・・・・・・。」

克己は、何も言わずに公園を後にした。







「・・・・ただいま。」
「克己お帰り。」

迎えたのは施設の親。
施設には、五人しかいない。
それほどまでにこの国が裕福だと言うことだ。
たくさんの裕福な人の影で、こうした生活をしている人がいることを、殆ど誰も知らない。
知っていても、何もしてくれない。

「克己、疲れた?」
「当然。」
「・・・・・あ、志槻ね、国立研究所に入ったって。」
「・・・・マジ?」

志槻というのは、克己の先輩だ。
家庭の事情でこの施設に来た、頭の切れる男だった。

「俺だって、こんな力なけりゃ普通に生活できたはず。」
「・・・・まぁ、そんな事言ってもしょうがないでしょ。」
「チビ達は?」
「もうとっくに寝たよ。」

暫くの沈黙に包まれた。

「あのさ、天使見たっつったら笑う?」
「・・・・あんたじゃなければ笑い飛ばすね。」
「女の子さ、可愛かった。」
「・・・・天使って言うか、普通の女の子?」
「違う。本当に羽はえてて白い服だった。」
「・・・・・その子に、恋でもしたの?」
「・・・・・・・・・・・。」
「一目惚れって奴じゃない?」
「・・・・・・・・・・・・・おやすみ。」

そうして、夜は更にふけていった。







とにかく、夢は不思議だ。
現実じゃないのに、現実味があって。
それでも、どこか幻想的で。

真白な空間の中で、
湊と一緒にいる夢を見た。

綺麗な、白。
自分がいることで、汚れてしまうのではないかと思う。
それでも、彼女と一緒にいられることが純粋に嬉しくて。
幸せな時に、目が覚めた。







今日も、帰りは遅い。
今日も、彼女がいそうな気がした。
こういう力を持っているから、勘は良く当たる。
今日は、歌声が聞こえた。
高く、とても澄んでいた。
思わず聞き入ってしまった。


「いたんなら声かけてくれてもいいじゃない。」

突然歌声が途切れたかと思うと、湊がこちらへ近づいてきた。

「なんか、綺麗な声だなって。」
「そう?私の声って、仲間の中では最悪よ。」
「・・・・それは、奴らの耳がおかしいんじゃないか?」
「・・・・・・・・・・・・アリガト。ほめてくれたの、貴方が初めてよ。」
「・・・・・・・・。」

克己は、人に感謝されたのは久しぶりな気がした。
自分の進路と言う問題が目の前に迫っているのに、
湊といるとそんなことも忘れられた。
でも、一人になったときに感じる焦燥感。
周りは、もうとっくに決めてしまったと言うのに。
自分だけが、皆から遅れをとっている気がした。
幻想の後にやってくる現実。
まるで夢のような。
そんな錯覚に陥った。







克己が、学校帰りに湊に会うようになってから、しばらく経った。
クリスマスまであと一週間。
克己は、嫌な予感がしていた。
自分の能力と、湊のことが、周りにばれてしまうのではないかと。
克己の勘は良く当たるし、学校の帰りにクラスメートを見かけるようになった。
クラスメートには、国立研究所で働く親がいる人がそれなりにいる。
克己は、少し前、国立研究所が何を研究しているのか気になったことがあり、調べたことがある。
国立研究所は、いわゆる霊能力、超能力や、超常現象について調べていた。
そのために、サンプルを集めていると言うことも小耳に挟んでいた。
それでも、湊と一緒にいる時間は、とても楽しい。
湊と一緒にいると、全てが浄化されていきそうになる。
その感覚が心地よくて。
湊の人柄にも惹かれていた。
そうして、いつものように公園で湊と話をしていると、何かが光ったような気がした。

「・・・・?さっきの光、何?」
「・・・・カメラのフラッシュ・・・・??」

湊を写真でとっても写りはしない。
自分の真の姿も、写るわけがない。
克己は、別に何でもないだろうと微かな不安を振り払った
克己は、人間の科学技術の進歩の速さを甘く見ていた。







クリスマスの日。
克己は、湊を公園で見つけ、一緒に町を歩いた。
と言っても、湊は姿が見えないので会話をすることはできないのだけれど。
それでも、二人ははじめてのデートを楽しんでいた。
二人は、ある建物に差し掛かった。

「ねぇ、アレは何」
「あれ?あれは国立研究所。」
「・・・・へえ。」

大きくて、立派な研究所だった。
克己は、何かが自分に流れ込んでくるように感じた。

自分は、何故あの姿をしている?
自分は、どこでどうやって生まれた?
自分の、両親はどうなった?
自分は、何?

幼い頃の記憶が、少しずつ・・・・・・。
幼い頃、目が覚めた時、話し声が聴こえた。
小さな頃で、会話の半分も理解できなかったけど。
自分のことを話されているんだとわかった。
扉の隙間から見えたのは・・・・・・・。



淡野、あのサンプルはどうだ?

サンプルと呼ばないで下さい。

あぁ、そうだったな。克己君の調子はどうだ?

順調ですよ。ただ、私の命もそう長くはないでしょう。

何故?

知らなかったんです?私の体はこれの前の研究のウイルスに感染しているんです。

・・・・・それは初耳だが?

私の命は、後三日ほどでしょう。

ほう。

博士、お願いです。克己は、ちゃんとした人間の生活を・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・父さん?

「ねぇ、大丈夫?」

湊の声で、克己は我に返った。
それでも、断片的な記憶は現実として残っている

「・・・・・・・大丈夫。」
「あ、お願いがあるんだけど。」
「何だ?」
「私、まだ貴方の名前聞いてないわ。」
「・・・・あぁ、そういえば。」
「ねぇ、名前教えて。」

湊の顔がすぐ近くに迫ってきた。

「俺は・・・・・。」

克己が口を開いた時、研究所の大きな扉が開いた。

「淡野克己!そこにいる天使共々こちらにきてもらおうか。」
「・・・・・・・・・!!」
「何故、俺が天使を連れていると分かった?」
「我々の技術を甘く見てもらっては困るなぁ。」
「もったいぶらずに教えろ!」
「我々は、天使など、目に見えない生物を写真に収める技術を開発したのさ。」
「じゃあ、何で俺もそこに行かなきゃなんないんだよ!」
「お前は、我々の重要なサンプル第一号だろう?忘れたのか?」
「・・・・か・・・つき?」
「・・・・・・湊・・・・、逃げるぞ。」

克己は、湊の手を引いて近くの廃ビルに逃げ込んだ。

「待て!警備部隊、奴らを追え!決して殺すな。」
「は!」

「・・・・・克己・・・・貴方・・・・。」
「俺は、あの研究所で生まれた。」
「・・・・サンプルって何?」
「色々な能力を人間に意図的に植え付けたり、天使の血を混ぜたりしたって。」
「・・・・・・でも、私には羽が見えない・・・・・。」
「それは・・・・・普段自分の力で誰にも見えないように制御してるんだ。」
「それも植え付けられた・・・・・。」
「その能力の応用だ。」

遠くから、たくさんの機械的な足音が聞こえた。

「・・・・下らない話は後だ。全力で屋上まで逃げるぞ!!」
「・・・・うん。」

克己は、湊に余計なことまで言いたくなかった。

羽を消すだけで、その日の動きはほとんどできない。
自分の体も、限界に近づいている。

「克己、屋上。」
「よし、そのまま端まで行くぞ。」
「うん。」

自分の体は、もう限界に近い。
もう、羽ばたく余力もない。
ゴメン。湊。もう、離れ離れだ。

「・・・・・湊、ちょっと座っていいか?」
「うん。でも、追って来る人が・・・・。」
「いいよ。湊は飛べるんだろ?」
「うん。」
「湊、よく聴いてくれ。」
「・・・???」
「研究所にいったら、実験材料にされる。
 だから、奴らがきたら、自分の国に帰れ。
 それで、幸せに暮らせ。」
「それってどういう・・・・・・。」

「いたか?」
「屋上だ。」
「なんとしても逃がすなよ。」
「大切なサンプルだからな。」

遠くで、警備隊たちの声が聞こえた。
その後、足音も屋上に向かってきた。

「逃げろ湊!!」
「でも、あなたは・・・?」
「お前まで実験台にされることは無い!!」
「そんな・・・・・。」
「いいから!!」

大切な、愛しい人を守りたいから。
貴方の笑顔を、守りたいから。

克己は、他人のためにこんなに頑張ったことはなかった。

いつも、人の本質が見えて、怖かったから。
上辺だけで付き合っている人たちが、怖かったから。

克己の真意を読み取ったのか、湊は意を決したようだ。

「・・・・また、後で会いましょう!」
「・・・・あぁ。」

湊は、空へと舞い上がった。
そして、雲の間に消えてしまった。

これで、良かったんだ。
でも、最後に言ってやりたかった。
それは、もう叶うことも無いけど。
それに言ったら、あいつはここにとどまってしまう。

「湊・・・・ずっと好きだった・・・・・・・。」

そう呟くと、克己は全ての力を使ってしまったようにぐったりと俯いてしまった。
警備隊の足音が近づいてきて、銃を突きつけられた。

「見つけたぞ。淡野 克己。」
「一緒に研究所まで来てもらおうか。」

「・・・分かってるよ。」

「気をつけて連行しろよ。」
「あぁ。こいつは重要だからな。」

・・・・俺だって、好きでこの力を持ったわけじゃねぇよ。
研究所の奴らが、勝手に植え付けたんだろうが。


こんな力なんか、無くなってしまえばいいのに。
湊が、見えなくなるのは嫌だけど。
この力のせいで離れ離れになってしまうなら、
湊が、悲しい顔をするなら、
この力は要らない。









克己は、しばらくの間気を失っていたようだ。
気がつくと、たくさんの研究器具ががある部屋に連れ込まれていた。

「博士、連れてきました。」

博士の顔は、克己の良く知っている人物だった。

「そこに座らせて。それが終わったら全員退出してください。」
「・・・・何故ですか?」
「精神状態が不安定なようだ。いつ力が暴走するか分からんからな。」
「分かりました。」

博士は、警備隊の足音が聞こえなくなるまで口を開かなかった。
足音が聞こえなくなったのを確認すると、博士はゆっくりと口を開いた。

「さて、久しぶりだな。克己。」
「お前・・・・志槻か。」
「お前も、大変な力持ってたんだな。」
「・・・・なんだ、気づいてたからこの研究室に来たんじゃないのか?」
「そんなわけないだろう。お前が力持ってるなんて昨日知らされたよ。」
「・・・・・ずいぶんいい加減だな。」
「上層部なんてそんなもんだ。」
「・・・・・・・・・・俺は、殺されるのか?」
「バカなこと言うな。俺の質問に答えたり、検査受けるだけでいいんだよ。」
「俺の、昔の記憶も、分かるかな。」
「そんなのお前次第だろ。きっかけでもあればすぐ思い出すだろ。」
「・・・・・・・。」
「よし、お前は今日疲れてるだろ。集中力はないと困るんで眠ってもらうよ。」
「・・・・・やっぱり殺すんじゃないのか?」
「眠るの意味が違う。睡眠をとれって事だよ。隣の部屋で寝るといい。俺の部屋だ。」
「・・・・サンキュ。」

湊は、無事自分の国に帰れたのだろうか
湊のことばかり、頭の中に渦巻いて、離れない。

「・・・・・・・湊・・・。」







その日の夢は、懐かしかった。
懐かしい、腕に抱かれて。
懐かしい声が聴こえて。
断片的だったけど、暖かかった。







「克己、起きろ。検査やるから。」
「・・・・・・・・・・・・・眠い。」
「半日以上爆睡しといてよく言うぜ。」
「・・・・・・・・あ、そ。」

・・・・・やばい。
昨日から力が戻りにくくなってる。

「志槻・・・・。」
「なんだよ。」
「これ終わったら、気が済むまで寝ていいか?」
「いいぜ。どうせそうしないと本調子になんないんだろ?」

志槻は、書類に何かを書いていた。

「よし、克己検査するから隣の部屋いって着替えて来い。」
「りょおかーい。」


「意外とにあってるな。」
「・・・・・志槻、あんま嬉しくない。」
「じゃ、CTスキャンからな。」
「・・・・・ここに寝んの?」
「そうだ。早くしろよ。」

微かな、記憶の光が、研究所に来てから強くなった。
忘れかけていた、幼い記憶が、徐々に姿を現した。
その記憶の先、克己の両親の行く末は。
克己が記憶を無くした原因は。
複雑に絡まっていた糸が、徐々に解かれていく。
絡まっていた元を、見つけたかのように・・・・・。

あなた、この子、名前付けてあげましょう?

あぁ、こいつは造られた命でも、俺らの子供だもんな。

なんて名前にします?

そうだなぁ・・・・克己って言うのはどうだ?

克己?

こいつは、この力のせいで色々あるかもしれんが、それでも、「己に克つ」子になって欲しいからな。

いい名前ね。克己、今日からあなたは淡野 克己よ。


・・・・・・・父さん。母さん・・・・・・・・・。
扉の向こうに見たのは、細胞を偶然発明された新種のウイルスに侵食された父と、
克己のことを実験材料にしか見ていない欲におぼれた哀れな博士の姿だった。
博士の本質は、どこまでも、黒く、まともに見ていられなかった。
父の本質は、どこまでも純粋に、全てを愛する、暖かい色だった。
それは、母も同じ。


淡野、あのサンプルはどうだ?

サンプルと呼ばないで下さい。

あぁ、そうだったな。克己君の調子はどうだ?

順調ですよ。ただ、私の命もそう長くはないでしょう。

何故?

知らなかったんです?私の体はこれの前の研究のウイルスに感染しているんです。

・・・・・それは初耳だが?

私の命は、後三日ほどでしょう。

ほう。

博士、お願いです。克己には、ちゃんとした人間の生活を送らせてください。

何故?結局は、自分の能力に苦悩して社会に順応できないクズになるんじゃないですか?

社会に順応できないかどうかは、克己自身が決めることです。

今日のところは、引き上げてあげましょう。三日後が、楽しみだな。


嘘だ。父さんは、あのウイルスに感染したんじゃない。
自分から、ウイルスを住ませたんだ。
父さんは、何故そんなことをしたの?
俺が、こんな能力を持ってたから?
父さんは、何でそんなことしたの??


克己、ごめんね。母さん、あなたの母さんになりきれてないよね。・・・・・・・ゴメンね・・・・・・・・・。






パァン!!!!!!!!!!!







―――――――――――――かあさん!!!!!!!!!!!!!!!







うわっ!!!何だこれはっ!!!!!
これが、研究によって生み出された、究極の生命体!!?
った・・・・・たすけ・・・・・・・・・・・・・・・・・









あぁ、そうか。
記憶が無かったのは・・・・・・。
俺が、暴走していたから・・・・・・・・・・?





誰が、俺の暴走を食い止めたんだろう・・・・・・・?






「かーつーきっ!!検査終わったぞ!何ボケっとしてんだ。」
「・・・・・・・・・・・・?終わった・・・・・・・・・・・??」
「克己、大丈夫か?」
「・・・・・・・・あぁ、大・・・・・・・丈夫だと・・・・・・・・・・・。」

・・・・・・・・くそっ目が、霞んできやがった。
なんで、こんなに辛いんだ??
これは・・・・・・何なんだ?

「克己っ!!!!!」

志槻・・・耳元で騒ぐなよ・・・・・・・・・・・・。











「え・・・・・これは・・・・・・・・・・・。」

検査結果の紙を見た志槻は、驚愕の色を隠せなかった。
CTスキャンを見ていて、なんとなく覚悟はしていた。
しかし、

「これじゃ、ただの・・・・・実験道具じゃ・・・・・・・・。」

体のあちこちに、小さな基板がはめ込まれていた。
血液検査では、人間の血液のほかに、サンプルとしてしかない、天使の血も混ざっていた。
DNA鑑定の結果も、淡野夫妻のものとはかけ離れ、人間のものとも違うものだった。
過去の研究記録からも、『淡野克己』という名前が大量に発見された。
しかも、超常現象などについての調査がはじまった頃からだ。

「・・・・・・・克己・・・・・・。」







幼い頃は、好奇心が旺盛だった。
何か気になるものがあると、とりあえず目を通していた。
一番新しいので、気になっていたのは父が毎日書いていたものだった。
幼い頃だが、何かの力で字が読めるようになっていたらしい。
その記憶も、はっきりと蘇ってきた。

『研究所の新しい研究テーマの一部、霊能力などの研究に先駆け、
全ての特殊能力をもった生命体を作り出すように指示された。
乳児院から、身寄りの無い赤ん坊を引き取った。
天使については、偶然見つけた怪我をした天使からサンプルを採取。
怪我の手当てをして放してあげた。
個々の能力を制御する為の基盤を作成し、体の要所に埋め込んだ。
全ての能力を制御する中枢部は、脳に直接埋め込んだ。
もし、オーバーヒートしたら、記憶を飛ばす仕組みになっている。
これで、この子も罪悪感に苦しまなくて済むだろう。
しかし、他人にはただの実験道具としか見られなくても、
こうして色々とやっていくうちに、こういうことをすべきだったのかと思うようになった。
愛着が生まれてきたのだ。
妻と一緒に、克己という名前を付け、戸籍登録に行った。
こうしていくうちに、なぜか克己への罪悪感が生まれた。
だからと言うわけではないが、体に、以前の研究で偶然生まれたウイルスを注入した。
克己には、すまないと思っているが、それでも、自分は克己のように実験材料になった経験もある。
克己には、まっとうな人生を歩んでもらいたい。
克己には、自分の記憶はあってはいけないような気がする。
幼い頃の内に、自分が死ねば・・・・・・・・・・・・。
このことを考えている時点で、半分以上ウイルスに侵食されているのかもしれない。』

・・・・・・・父さん・・・・・。

この力のせいで、誰かを苦しめるなら、
この力のせいで、不幸が訪れるなら、
この力は要らない。
この力なんか必要ない。

もう、この特殊な能力なんか必要ない!!!!!!








ドォン!!!!!!!!









「克己っ!どうした!」

研究所一体が大きくゆれるほどの轟音を聞きつけ、
志槻をはじめ、たくさんの所員が駆けつけてきた。

この力の根本的な基板を、全て消し去ってしまえば。
この力を持つ、自分自身を消し去ってしまえば。
全て終わる。

「・・・・・・・・志槻・・・・・・・。」
「え?なんか言ったか?克己!」
「さよなら。」
「克己っ!バカな真似は止せ!!」


あぁ、もう何もかも終わっていくんだ。

眩い光に包まれて、
全てを許されたような気がした。
眩い光に包まれて、
もう誰かの苦しむ顔を見なくて済むような気がした。
眩い光に包まれて、
懐かしさに包まれて、
心の安息を得た。

天使も、超常現象も、霊能力も、
全てなくなってしまえばいいのに。
そうすれば、再びこんなことも起こらないはず。
誰の記憶からも、そういうことが無くなってしまえばいい。





ゴメン、湊。
お前のこと、ずっとずっと、愛してる・・・。
湊、お前のこと、見えなくなるけど、
それでも・・・・・・・・・



















あれから、数ヶ月が経った。
今日は、バレンタイン。
人々は、超常現象などのことをすっかり忘れ、
いつもどおりの生活を送っていた。
淡野克己はというと、
特殊能力などに関することは、全て消え失せていた。
それでも、今までの記憶は残っていた。
しかし、意識不明の重体だった為、
近くの大病院に入院することになった。
そして、今日、退院することになった。

「克己、退院おめでとう。」
「・・・・あぁ。」
「ったく、もっと喜べっつの。」
「・・・・・・十分喜んでるよ。」
「ま、これから気を付けろよな。」
「・・・・何に?」
「イロイロ。」
「・・・・・・・じゃ。」

雪が、降ってきた。


克己は、行くあてもなかったので、
施設に向かうことにした。
近くの公園を、少しためらいながらも突っ切ろうとした。

降りしきる雪の中、
女性を見た気がした。

「み・・・・なと・・・・・?」

その声に驚いたのか、その女性は天に舞い昇った。
そしてすぐに、見えなくなっていた。
その時は、それで終わった。







そして、月日は流れ、克己は社会人になった。
暖かい、桜の咲く春。
克己は、人ごみの中を歩いていた。
ふと、顔をあげると美しい女性が近づいてきた。

「・・・・克己?」

克己は、その女性に見覚えが会った。
しかし、彼女は、他人の目には見えないはず。
しかし、もしかしたらと思って、その女性の名を呼んだ。

「湊・・・・・?」

その名を呼ぶと、女性は嬉しそうに微笑んだ。

「覚えててくれた?」
「・・・・・ずっと、どうしたのかなって考えてたよ。」
「ホント?」
「あぁ。でも、どうやったんだ?他人にも見えているだろ?」
「・・・・・あのね、自分で女神様にお願いしたの。」
「・・・・・・・・・なんて?」
「克己と、ずっと一緒にいたいって。」


ここにいる誰も、彼女が天使だということは知らない。
そのことを知っているのは、

克己と湊だけ。








FIN.