三成は、とても深い海底に居たのだと言っていた。俄には信じ難かったが、彼は不思議なことに、海に潜ると魚へと姿を変えて海底へ、深く遠く泳いでいくものだった。目の当たりにしても尚、信じるには時間がかかったが、見たことのない長い鮫の姿を見せられ、触れてしまえば信じる他ない。
共に潜水しても、三成は決して深い海の底に連れていってはくれない。只人が行くことの出来ない、深海。三成しか知らぬ世界を庭先の池から夢想しようとしても、うまくいくはずもなかった。
「深い海の底は、お前の見る世界は……どんな場所なんだ」
「暗い、天日の光も、音も届かん」
一人言に返答があり、思わず振り向いたら、やはり三成がいた。地上の姿は人と違わない。眼はこの池を介して帰るべき深海を見ているのか、言葉に感じるほの暗さに反して、三成は穏やかな表情だ。
「棲む者の光はあるが、地上に比べてしまえばずっと暗い」
「三成……」
そんな世界を、太陽の光も届かぬほど深い場所を、家康は知らない。きっと見てきた世界のどこよりも、海の底は暗いのだろう。
「貴様のような奴に、あの世界は似合わん」
そう言い残した三成の背中を見送るだけで、結局深海の世界の半分も理解出来なかった。
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