ヒノチャン
2023-05-02 01:00:32
2033文字
Public ヒノチャン創作
 

標本室は解き放たれている

捏造が大いに含まれる固定夢主の夢小説です。
ニチアサ🫅王者の敵幹部🐢ムジさん夢。バツガメ=ヒノチャンのここでの怪人名。
宰相を一瞬しか見てないのに書いてるのマジで末期すぎる。

地帝国バグナラク。
奈落王デズナラク8世が支配する、悪の帝国。
地底深くで屈辱に耐え、力を蓄えた。彼らは予言通りに動いた地上へと姿を現す。
これは、奈落王と宰相の地上への出発数時間前


……

─ああ、やかましい。
集まっていたサナギム戦闘員たちを押し除けて、カメジムは自室へと急いだ。
ガシャガシャと節足が土を噛む音がやかましい。
夏の、発情期に泣き喚く蝉の声。耳障りだ。
「か~めじむッ宰相ぉ~」
るんたった、るんたった、とスキップしながら寄ってくるのは、同じく地帝国の幹部の一人。
幹部といえど、それらしい仕事はしていないように思うが。
まあいい、カメジムは肩を落とした。物は使いようだ。
「なんです、バツガメ氏。貴女の任務は奈落王の護衛ではありませんでしたか?」
「おやおや!何もそう苛立つことはありますまいてぇ!ことは順調!奈落王は最強!大ボスに護衛などと怒りに触れ、首を跳ね飛ばされるでしょうなあ!」
そうなれ、と思って采配したのだが。
カメジムは大きなため息をつく。
「お元気ないですねぇこれから楽しい地上の任務ですよ?」
バツガメはそっとカメジムの肩を触り、揉みしだく。
「ああもう、触らないでくださいよ鬱陶しいですねぇ」
自室の前についた。
立ち止まると、背後の怪人も立ち止まる。ついてくる気だ。
………貴女も、標本をお望みですか?」
苛立ちを隠さず、上擦った声でそう囁く。
「ええ、望んでいます。そうすればあなたは私を見ていつだって思い出す。そしてうっとりと顔を綻ばせるでしょう?それほどまでに幸福なことはありませんよ」
蛾の目モスアイは、曇りない。口角はわからない、覆われているから。
仮面で。いつも動きがオーバーすぎるくらいなので、こんなに静かに突っ立っていて、こちらを見下ろしていると不気味とさえ思える。
触覚にしては太すぎる、その触覚。
奈落王様の触手を見るたびに、脳裏にこの怪人のことがふと浮かぶ。
「標本になりたくば、わたくしの審美眼に適わねばなりませんね
「なってもいいんですね!?」
「だめです、貴女うるさいですので」
「標本になれば静かなんですがぁー?」
バツガメはしゃがみ込んで、わざとらしくカメジムの顔を見上げた。
「まさか、眠らせながらするわけがないでしょうに。ウッフッフッフッフ!私は生きたまま標本を作りますよ?蛾の君、それが嫌ならばわたくしにはもう近づくべきではありません」
自室の部屋を開ける。むせかえるホルマリンの香り。スーッと鼻から抜けていくのはアルコール臭。
遅れて、血生臭さが足元を撫でた。
「わたくしの標本室は常に開かれています、ピンを刺されて保存されたいのであればいつだってわたくしは歓迎いたしますよバツガメ氏。貴女はうるさいですけど、その羽根は素晴らしい美しさです。羽ばたく姿は、何よりも美しいと思えるでしょうウッフッフ!で、す、が!苦し悶え貴女のその美しい羽根はズタズタになってるかもしれませんけどねぇくくくく」
怪人は扉の前で立っていた。入ってこない。
カメジムはそれに満足すると、「では」と短く声をかけて強く扉を閉めた。
─さて、切り替えなければ

これから地上へ出て、地球の秘宝を貰い受けに行かねばならぬ。


「はぁやれやれ、やることがやま積みですねぇ」
自室の扉を開ければ、研究室は少しだけ片付いていた。血生臭いあの匂いもない。アルコールの爽やかな香りだけが香ってくる。
「おかえりなさーい!」
………標本になりに来たんですか?」
「いいえ?研究室があまりにも環境が悪かったので改善いたしました。助手も何人か雇いましたよ、それぞれ引き継ぎを行ってくださいね」
「な、一体誰の権限で」
カメムジは言いかけてやめた。こいつはなかなか仕事ができると思って、地位は与えなかったもののかなりあれやこれやとタスクを割り振ったのだ。言ってしまえば、自分の都合で好きに動かせる助手のようなものだ。
机の上の整理された書類を見て、脳内で天秤が揺れ動く。
「宰相ぉ?標本を作るのは、趣味のお部屋を別に作ってそこでやったらどうです?好きなことを仕事にするのっていいことですけど、あなたの場合はちゃんと仕事と息抜きを分けた生活をするべきですよお?」
怪人はニコニコしていた。
本当は目の色も、口の動きもわからないのだが。
バツガメは、小躍りするみたいに足取り軽く、カメムジの周囲をうろうろしている。
わかりましたから、わたくしの周りで手をつなぎ輪になってステップ踏むのやめてくれませぇん?」
イライラしながら言うと、雇ったと言っていた助手の方はオドオドしていたが、バツガメはスルーして続けた。
「や、め、て、く、だ、さ、い」
長杖を怪人の足元に何度も突き刺せば、器用にそれを交わしながら逃げいった。
「また様子見にきますねぇ~!」
楽しそうに、声は笑っていた。