Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
無窓居室
2023-03-15 02:11:33
2025文字
Public
Clear cache
優しい鬼に甘いケーキ
ホワイトデーネタで👦視点の😈👹。
付き合ってるのかそうでないのか微妙なくらいの関係です。
😈と👦の会話で👹は直接出てきません。
部屋に戻るとブラックが来ていた。片手にカメラちゃんを抱いて、もう片方の手では目にも止まらぬ速さでパソコンのキーボードを打っている。ふわふわとパソコンごと宙に浮きながら、いつもと同じ笑っているように見える表情で何か考えているようだった。
「お帰り、アカネちゃんはどうだった?」
本当は魔界に住んでいる悪魔にお帰り、なんておかしいのかもしれないけど、ブラックは今日アカネちゃんと会うとかで朝には居なかったんだ。だからお帰り。もう慣れたやりとりだ。
「いつも通りでしたよ」
なんてことない短い返事。でも瞳だけを細めるあの変な笑い方が、普段よりほんの少しうきうきしてるように見える。
ブラックの考えていることは俺にはさっぱり分からないけど、そのときの機嫌みたいなものはかなり分かりやすく伝わってくる気がすることがあって、多分、たとえば今がそのときなんだと思う。
「可愛かったんだね」
ついつい俺も調子に乗って、普段とは逆にブラックをからかうようなことを言ってみた。
なんたって今日はホワイトデーだ。学校でもみんながそういう噂話に夢中だったし、俺もひめちゃんの机の引き出しに二駅先のデパートまで行って買ったクッキー(手の先に乗るくらいの袋が俺の1ヶ月分のお小遣いと同じ値段だった!)を入れたときから、なんだかぼうっとした気分が抜けない。
ブラックだって動画の打ち合わせとかなんとか言ってたけど、絶対アカネちゃんとデートしてたんだろ。知ってるんだから。
すまして何も教えてくれない悪魔の友達を、今日こそはちょっとくらい慌てさせてやりたかった。
「相変わらず先の予想がつかなくて面白い人です。駅ビルのケーキショップで窓際の眺めの良い席に座れたって喜んでいたのに、外を見たがるお子さん連れが来るとそこを譲ってしまったんですよ。それでその子が窓の方を見て声を上げるたび、ずっと嬉しそうにしてました。アカネさんにはその子が何を見てたのか分からないのにね」
俺のちょっとした企みなんて気にも留めてないように、ブラックはキーボードを打つ手を止めて首をかしげて見せた。もしかしてさっきからその時のことを思い返していたのかな。
最寄りの駅のビルからは電車が行ったり来たりするところがよく見えて、休みの日のカフェやレストランにはそういうのが好きな子でいっぱいだ。きっとその子も電車に喜んでたんだろうな
……
とブラックに教えてあげようとしたのに。
「ま、オレちゃんは他人の視界を借りられるので見ましたけど」
「勝手なことするなよ!!」
この悪魔。まぁ借りられた側に不都合ないなら別にいいのかもだけど
…
。いや、よくないか?小さな子にだってプライバシーあるよなぁ。
「赤の他人が外を見ている姿ってそんなに嬉しいものですか?アカネさんが見たかったのは外の景色で、電車を見て喜ぶお子さんではなかったはずですが
…
」
いかにも分からない、という仕草でブラックが肩を竦める。何でも思いのままに手に入れられる悪魔にも、それだけは掴めないと言いたいみたいに。
「人が喜んでると自分も嬉しくなるし、いいことすると気分が良いでしょ」
「それはそれは。悪魔のオレちゃんには想像もつかないことです」
よく言うよ。アカネちゃんのそういうところが誰より好きなのはブラックのくせに。
優しい女の子と付き合えて幸せ、って素直に言えばいいのにさ。もしかするとからかわれてるのは俺の方なのかもしれない。
「ま、いいです。自分に無いものほど欲しくなるのは悪魔の習性ですから──いえ、コラボ相手としての話ですよ」
ニタリ、とブラックの笑顔が怪しげなものになる。歪んだ目はいつも持ってる鎌の刃みたいで、吊り上がった口元から尖った歯が見えた。でもその表情は楽しそうで、俺にもあんまり怖くは見えない。
だけど笑ったままこっちを見られると、びくんと心臓が跳ねるのを感じた。舌なめずりするその口で、ブラックはアカネちゃんにどんな言葉をささやいたんだろう。一緒にどんなケーキを味わったんだろう。そういうことを想像してしまう顔だった。
いつの間にかカメラちゃんもブラックの手の中から抜け出して、赤らめた顔に両手を当てるポーズをしている。
「うっかり食べてしまわないように、気をつけなくては
……
」
駅ビルのケーキショップには心当たりがあった。いつも店の前に綺麗なケーキやタルトが並んでて、クラスの女の子達もよく話してるあそこだろう。
ブラックがアカネちゃんと食べたのはチョコレートケーキかな。それとも苺がのったやつかな。考えちゃダメだと思うのに、甘い匂いやクリームの溶けていくような感じやスポンジの柔らかさまでが、頭の中に浮かんできてなかなか消えてくれない。
怖がらせられたわけでもないのに、俺は心の中でぎゃふんとつぶやいた。
2023/03/14
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内