UNDERTALE AU fellswap/⚠️CP.coffee×wine/fellswap…not gold。※コーヒーくんがお兄さんになっています。ワイン様のことをmaster呼び。
昼御飯は大体マフェットのところで食べちゃう。そんなにお腹はすかないので軽いもの、友達と話しながら食べたりしてるとその中のひとりがお酒を持ってきたりする。みんなの顔はいつも覚えてない。でも向こうはおれを覚えててくれてる、話してるうちにそうそう、こういうやつだったってわかってくるのであんまり気にしてない。向こうも気にしてないだろう。でもいつも最初からわかってることもある。お酒を持ってくるやつはほとんどの場合、よそ者だ、ってこと。
よからぬことだって企んでる、かもしれないようなやつ。でも、正直、どうでもいい。みんなもどうでもいいと思ってると思う。そもそもこの場所のことを知らないような、よからぬお客さんがよからぬことをしようとしたならお店のマストレスがにっこり笑って、両方の腕…、…六つの腕のそれぞれ両方の一本ずつの腕で頬杖をついて、後ろの大きな、彼女の大切な「従業員」くんが八つ目をぬらりと光らせる。彼女はその子をペットちゃんって呼んでる。
でも、今日、お昼にそんな風にみんなとわいわい話してたら、お酒を持ったお客さんがやってきた。
よそ者じゃなかった。みんなも知ってる。
おれの兄弟。
「パピルス」
みんなのわいわいとした話し声の喧騒のなか、扉の開く音がして、聞きなれた靴音を聞いた。その時胸がどきんとした。サンズ?お昼にサンズがここに来ることなんてほとんどない。お休みの日以外は都会に行ってて、ロイヤルガードの隊長と一緒に仕事をしているのだから。でも、おれが、彼の靴音を、聞き間違えるとは思わない…そこまで頭が働いた時に、無い脳の奥、脊髄の中まで浸透してるあの声が聞こえたんだ。しかもおれの名前を呼んでる。
これは聞き間違えたりなんかしない。
ふりかえる。入り口の方を見るとその姿が目の中に、光みたいに、あっという間に飛び込んでくる。…おれの、「本物の星」。
「まっ…、マスター…っ!?」
いっぺんどもっちゃった。なんか恥ずかしい、サンズはそんなこと気にもとめないのに。おれが彼に気づいた姿を見て、サンズは首を傾けて、目も口も細めて満足そうに笑っていた。
満足そうだ。なんだか…
聞きなれた靴音をたてながら、サンズがおれの方に歩いてくる。
……やけに機嫌がよさそう。
「楽しそうじゃないか、ん?」
サンズの声がはっきり聞こえるところまで近づいてきて、カウンター席に座ってるおれのところまで来てくれた。ほんとならおれが彼のところまで飛んでいくところなのに、面食らってしまってドキドキしてしまって、動けなかった。
友達がはやしたてる。お前の兄弟じゃないか。珍しいな。この店に来ることも。昼間に来ることも。みんな考えることは同じみたいだった。
「う、うん!楽しいよ!」
ドキドキしたけどおれも笑って返した。お昼ご飯は楽しいし、サンズも来てくれて嬉しいし。
「………」
「…ま、マスター?」
サンズはずっと満足そうに、機嫌がよさそうに、おれのことを見つめて笑っている。なんだか変だと思った。みんなの前であんまりこんな表情しないのに。そこまで考えてて、ふと思った。
お酒臭い。
「マスター…?」
おれが彼のそばに寄るために席を立とうとすると、サンズは右手を平べったく動かして、そのまま、のジェスチャーをとる。
「………パピルス、席は空いてなさそうだな?」
そう言いながらサンズはおれのそばまで来た。カウンター席が友達で埋まってることにおれも今気づいた。いや、でも、マスターが、この店の席に座ったことはない。座るの?おれと一緒にご飯食べてくれるの?驚きと期待でそわそわしちゃってさっきからうまく対応できない。友達のひとりがオレの膝に座るかい?とか言ってるのが聞こえた。冗談なのはわかったけど正直ぶん殴りたい。誰だ今言ったの。
「おかまいなく」
サンズがそう言うが早いか、優雅に、おれの座ってる席のカウンターの上にひらりと腰かけた。
それを見ていたお客さんがおお、とさざ波みたいに沸いた。どこかで小さく口笛も聞こえた。
物腰がとても綺麗で、かっこよくて、ドキドキしたけど、見惚れてるのとはべつのところでおれの頭が動いてたのは、どうして今日はこんなに目立つことをするんだろう?という疑問だった。
そしてカウンターからごん、という音が聞こえてようやく、サンズが左手に、ワインの瓶を持ってることに気がついた。
お酒を飲んでいる。………もしかして、酔っぱらってる??
「ええと…ま、マスター……、お、お酒飲んで」「いけないか?」
質問を遮りながらサンズがおれの顔の前まで、自分の顔を寄せてきた。口調も穏やかで、変わらずご機嫌で、満足そうな表情。だけど寄せてきた顔を見て、その瞳に、なにか……
「……」
寂しそうなものが浮かんでいるのを見た。
おれはそれを見つめ返した。
その時おれは、どんな表情をしたんだろう。
「…マスター、う、んっ………!」
おれは何を言おうとしたんだったかわからないけど何か言いたくてサンズに話しかけた、それもまた遮られた。サンズはワインの瓶をカウンターに残して、両手でおれの頭をそっと固定して、無い唇を重ねてきた。
まわりの友達がどわ、っと沸き上がったのがわかった。
一人か二人かが手を鳴らしてるのと、近くではないところから長く高い指笛が聞こえてきた。
そりゃ沸き上がると思う。サンズは綺麗だし、おれだってサンズが誰かと…っていうか、おれとキスしてるところ見てみたいもの。
サンズの顔が暖かい。触れてるところは歯と歯だけなんだけど、サンズの体温がお酒のせいで高いのがわかった。無い唇を重ねたまま、右手はそのままで、左手をおれの肩の方にまわしてきた。そうしてハッとした。これ、長い。
これ、挨拶のキスじゃない。
そうハッとしたあとに、サンズがおれの歯と歯を重ねたまま、器用に口を開いて、おれの口も一緒にこじ開けた。口のなかに風と、熱いものが入ってくる気配を感じた。
「……………!!」
おれは両手で、たぶんすごい速さでサンズの長いマントを翻して、サンズとおれの頭をすっぽりと隠した。
上手く隠しきれたみたいで、まわりからええー?とかおいおい!とか残念そうな声が聞こえてくる。何人かがすこし優しく笑ってくれてる声も聞こえた。
ほんのり薄暗い、赤くて柔らかい光の中で、サンズがくすりと笑うのがわかった。
そのまま容赦なくおれのなかにお邪魔してきた。
すごい。ここだけ、別の世界だった。あっという間にまわりの声が薄れて聞こえる。熱くて、甘くてじりっとした味がする。おれはあんまりお酒を飲まないからそれもともなって、味覚から嗅覚から世界が一転した。そもそもを言えばお昼にサンズがこのお店に来たときからおれの世界は一転してたけど。すごくびっくりしたけどあまりにも嬉しい。
気が動転するのをなんとか抑えながら、サンズから注がれる全部を受け止める。サンズが器用におれを愛でるたびに背筋も頭も痺れる。愛しい感覚から、お酒とサンズの匂いから、頭がくらくらしてくるけど、マントが絶対捲れないように右手でマント越しにサンズの頭をおれは抱えてた。そのせいでうかつに身じろぎもできない。倒れないように左手でカウンターをひっつかんでるけど震えてる。足も震えてるのがわかる。これはちょっと、その……、
まずい。
「なんだよ~~見してくんないの~?」
隣の席のパピルスのともだちがそう言っているのが聞こえた。おそらくマントを捲ろうとしたのだろう、その瞬間、その声がしたところからスパン、と小気味良い音が響いた。そのあと、椅子もおそらく座っていた本人も、一緒にがたんと倒れる音がした。
「まっ、マフェットのスパイダーヨーヨーだ!!」
「マジか!初めて見た!!」
店全体がどっと沸く。おそらくは私がパピルスにキスをした時よりも。マフェットのスパイダーヨーヨーか。確かに話には聞いたことがあった。マフェットは「ペットちゃん」に頼らずとも単機で十分に強いと謳われていたが、その実力を目にしたものは今では少ないらしい。威力としては、がたんと倒れた何者かが起き上がってこないところを察するにとても的確だ。私も見たかったな。
こどもがはしゃぐような歓声が次々とあがる。どうやらマフェットがそのまま、様々な技を披露してみせているらしい。客のほとんどはもはや彼女の方に釘付けだろう。
本当に、良いマストレスだ。
私は右手をパピルスの頭から外して、カウンターへと下ろし、手探りでパピルスの手をつきとめる。彼の手の甲をそろりと撫でる。
パピルスの左手に一際力が入ったのがわかった。カウンターに傷がつかなければよいのだが。私は徐々に、マフェットへの止まない歓声を背景に、徐々にカウンターから腰を上げ、パピルスに抱き止められるように動いた。未だ舌と舌を離さないまま。ほんとうにゆっくりと。
パピルスは私をゆっくり抱き止め、そのまま徐々に徐々に椅子から下りて、左手を支点にして、カウンターの下の方までゆっくりとかがんでいった。たくさんの賑やかな店の客の中から、私達の姿がうまいこと消えていった。カウンターに左手を残したまま。
ようやく、カウンターの下のほうにずるずると体を預けたパピルスが長く息をついた。いじわるなことをしてしまったとは思う。だけど、
それとこれとは別だ。
「ん…、ん…~っ!!」
さきほどの状態からではまだ難しかったのでここで、深く、一層優しく、傷痕を残すような口づけを見舞わせてやる。パピルスがさきほどまでよりも、派手に背中を震わせた。その愛しい背中を、彼の腕の下からさすり上げる。パピルスの右手は未だにマント越しに私の頭を支えている。もう誰も見ていないのに。ほんとうに真面目だなと思った。
ちゅっ、と音を立てて、糸を引かないように唇を離した。パピルスの息が荒くて、それを抑えようとしているのがたまらなくいとおしい。
「ま、ます、た、…ぁ」
息を整えながら、とぎれとぎれに言うものだから彼の口からよだれがぽとりと落ちる。先ほどよりも一際薄暗く、明かりの色が赤いのも伴い、ひどく官能的に見えた。なかなか悪くない。
悪くはないが、まだ、彼の右手は私の頭を支えている。
「………、別に、見られてもかまわなかったんだぞ?」
本心だ。そのつもりで行動したのだから。
今日は会合もはやくに切り上げたのでお昼ご飯を一緒に、お前と食べられるかもしれない、って思ってたんだ。家にお前は居なかった。マフェットの店の窓をそっと覗いて、お前は楽しそうにお昼ご飯を食べていた。ともだちと一緒に。
ともかくとして、家に帰って、料理を作った。過程でワインもあけた。そんなに高価なものでもない。気がついたら半分より少なくなっていた。そこから、お前にキスをするまで、あまりはっきりと覚えていない。
見せつけたかった。
子供みたいな動機なのは、情けないけれど、本心だ。
私は今どんな表情をしているんだろう。
パピルスは、ふるふるふるっ、と細かく首を振った。それは、そうだろうな。私のしたことは情けないし、恥ずべきことだし、おおよそ褒められた行為じゃない。でも、だって、お前が、さ、
「見せたくない………」
「………」
パピルスのその口調ははっきりしていた。その表情は、切なくて、…悔しそうだった。
右手がするりと私の頭から背中へ滑り、上のほうでかたりと音が鳴って、その瞬間、パピルスの両手が包むように私を抱きしめた。
どちらかというと優しくない抱擁で、このまま飲み込むつもりなのかもしれない生物のような、これを逃せば明日には飢えて死ぬかのような、切実な力がこもっていた。
赤くて柔らかい光の元は、まだ私たちに被さったままだった。
サンズの耳元で、パピルスの喉がごそりと鳴る。サンズにしか聞こえないように、確かなことを伝えた。
見せたくない。
すごく綺麗なあなたの格別綺麗なところを。
ほかの誰にも。
まわりの、上のほうでは次々と歓声があがる。
熱と震えを抑え込むように、ほかの全部から逃げ出すようにそこにしばらく留まった。
ほかの誰にも渡したくなかった。
「……」
「………」
「なあ、パピルス」
「うん…」
「昼食、その………、食べるか?…パスタだ。…まだ完成する前だけどな、…もうお腹いっぱい、だろうけど」
「たべる…」
「…うん」
「サンズとご飯たべたい」
「……、ぼくもだよ…、パピルス」

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