ぽふむん
2023-10-14 22:32:43
2073文字
Public ワンドロ
 

天の岩戸でねんころり

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

「書庫」「熟睡」をお借りしました。

氷柱if

鬼ならばこういうめんどくさい事態でも一発で片付いちゃうんだけど、人なのでそうはいきません。

※神山さん、ろくさんというのは童磨さん補佐官✨👴🏻さんを捏造命名したものです。

童磨くんの方こそ柱if、現代ifだとストーカーまがいの被害に会いそうなタイプだよなぁ……というところからのイメージです。



寺院という場所は、古い文献が大切に収納されているなどということがある。
この寺院も例外ではなく。

古きを訪ねて新しきを知る

そのつもりで、奥の院の宝物庫兼書庫に入らせてもらった。

当主である男がどこにも見当たらない。
自室の僧房にすら居ないと言う。


なんだか今日は、童磨を探し回る信者の声でいつもは静かな寺院が騒がしい。
一般信者は立ち入り禁止の場所の最奥にまで声が響いている。

剃髪の首席補佐官が重々しい隠し扉を開け中に入れてくれると
「本来であれば、それ相応のおもてなしをせねばならぬところですが 少々立て込んでおりまして。御無礼ご容赦くださいませ」
そう言い残して足早に去っていった。


「全く、あの人はどこに行ったんでしょうね」

そうつぶやきながら、薄暗いがきちんと手入れの行き届いた書庫に入っていく。

今から百年以上前の信者が寄進したとかいう本草学の本。
趣味の範囲だったと言われるが、この内容のどこが?と言いたくなるほど本格的なものだ。

すごい
中々どうして、昔の人の方が知見が豊かだったのかもしれない。

舌を巻きながら読みふけっていたら

「う……ぅん……

どさっ

書庫の奥から物音がして、びくっと身構えた。
そぉっと物音のした方を覗いてみると、この寺院の当主が丸くなって寝ていた。

───な……なんでこんなところで寝ているの?───

そぉっと額に手を当ててみる。
熱は無い。

体調が悪いわけでは無さそうだ。

驚くほどぐっすり寝ている。
───まつげ長い───

あぁ、いかんいかん、風邪をひく
ここは神山に掛布団を持ってきてもらうか……いや、違う。
肩を軽く叩く

「どぉま!童磨、起きなさい!こんなとこで寝てたら風邪ひくでしょ」

「う〜……んにゃむにゃむにゃ……うなぎのタレをね……

起きない

「寝ぼけてないで!」

ぱぁん

お尻を一発思いっきり叩いてみる。
「痛っ………………へ?しのぶちゃん?」
いきなりの臀部への攻撃に驚いて目を開け、目の前で仁王立ちしているしのぶに目を瞬かせる。

「なんでこんなところで寝てるんですか?風邪ひくでしょ。怒りますよ」

「いやん、怒っちゃやだよ」
頭を抱えて隅っこに丸くなる大男。仕草が妙に可愛らしい。

「何をしてたんですか?こんなところで」
今度は優しく問いかけてみる。

「いや……あはは、本当は接見を求めてる信者がいたんだけどね、どうも気分が優れなくて、ろくさんにうまいこと言って今日は断ってもらったのに……

そう言えば、神山がボヤいていた。
やたら執拗い信者がいて、童磨を追いかけ回していると。

また後日と言ったのに、今日に至っては一般信者は立ち入り禁止の区域にまで侵入しようとし、雪隠トイレや風呂にまで探しに来るらしい。

「ゆっくりしたいのに覗かれてさぁ……俺、今日はゆっくりしたかったんだ」

遠くから「教祖様ぁ、教祖様ぁ、どうかお顔をお見せ下さいませぇ。先程おひぃ様がお見えになりました。おひいさまは良くてなぜ私は……年増な我が身が疎ましゅうございます」などとわめく女の声と、止めに走る信者達の騒ぎ声が聞こえる。
立ち入り禁止区域の最奥、しかも隠し扉の裏にまで聞こえるということは、

ついに侵入

いつものように笑う余裕が無い。いや、しのぶの前でのみ見せる素の表情で「眠たいよぉ」と呟いた。

「もしかして、私最悪のタイミングできちゃいました?」

「いや、しのぶちゃんはいいよ。やすらぐから」

童磨は、しのぶをふんわりと抱き枕のように抱きしめると法衣で包みこんだ

「ねぇ、添い寝して。起きたらろくさんにお茶でも入れてもらおうよ。壺切茶があるよ。俺おにぎりも食べたい」

眠い
口調がむにゃむにゃ眠そうだ。

───そう言えば、昨夜任務で、その後早朝の勤行をして……相当疲れて眠かったんですね。こんな床で痛いでしょうに───

座った姿勢では、またさっきみたいに倒れ込んでしまう。
「少し横になりましょ」
そう言って横たわらせ、しのぶは羽織を脱ぎ畳むと、まくら代わりに童磨の頭に下に入れる。
自分自身は童磨の脇の下の頭を沈め添い寝の体勢をとる。
「床……冷たいですね」
「ごめんね。外がうるさいから」
頭を撫でてやると、子どもが含羞むように笑った。

「静かに寝れるように神山さんが、苦労なさってます。あとで神山さんにもありがとう、ごめんなさいですよ」

「うん……すぅ……すぅ……

また深い眠りについた。

「と……んか……つ。……牛なべ」
なんで今日は寝言がことごとく食べ物?
さっきおにぎりがどうとか……
さては、食事すらとる間もなく追いかけ回されたのか?
お腹がなる音も聞こえた。
「かわいそうに……お腹も空かせていたんですね」


無性に腹が立ってきた。
童磨を起こさぬようにそぉっと抜け出すと、しのぶは件の執拗い信者に一喝入れるため、時々聞こえる寝言を聞きながら書庫を後にした。