さちこ/Sharia
2023-12-16 14:51:10
1287文字
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雪原の温もり

3.0道中

雪山と雪原の冷え方は、同じように見えて実はかなり違う。
シャリアの故郷であるスカテイ山脈、その中腹では山頂から吹き下ろす冷たい風に当てられるせいで身体が冷え込むため、冬は厚着さえすれば案外平気だった。
が、今進んでいるクルザス西部高地はどちらかと言えば気温自体が低いのだ。しんしんと降り続け積もった雪によって奪われる足の温度、ずっと山頂に居るかのような冷たい空気。いくら寒さに慣れているシャリアとはいえ、ここまで来て上着を羽織っていないのはプライドが高い故の意地だった。

「寒いなら上を羽織ればいいだろう」
「さ、寒くなんかないし。イゼルこそ寒くないの?ココとかココとか」
「ひゃっ!? 冷えた指で突くなバカ!」

可愛い声出た、と悪戯っぽい笑顔でイゼルの全身をくすぐるシャリア。
そう、こうして戯れて動けば暖かいのだ。それは山腹も高地も変わらない。シャリア自身、寒ければ母とくっついて互いに暖をとっていたものだ。
仕返しだとイゼルがシャリアのそれよりもずっと冷えた手を丸出しの腹へと当てる。しびびと耳毛を逆立てた後、ぎゃあと女は叫び声をあげて飛び退いた。

「何戯れてるんだ」
「ふふ、なんだか楽しそうだね」

先をずんずん進んでいた男子二人組がふと戻ってきて、早くいくぞと先へ進むことを促す。
しかし光の戦士と氷の巫女は抱き合ったまま互いに顔を見合わせ、何かに合意したように同時に頷く。

……随分あったかそうねぇ、アルフィノ」
「聞けば蒼の竜騎士殿は鎧の中に発熱素材の肌着を仕込んでいるそうじゃないか」

じわじわと広い雪原の中、男二人ににじり寄る女二人。
わざわざ雪に突っ込んで冷やした手を突き出すその姿。

……おい、アルフィノ」
「あぁ……わかった……!」

エレゼン男性達は顔を見合わせ、脱兎の如く戻ってきた道を再び走り出した。

「イゼル!」「任せろ!」

咄嗟につがえた矢にイゼルが氷魔法を付与し、ひんやりと氷属性のエーテルを纏ったそれを彼らの行き先へ放つ。
着弾した途端メキメキと音を立てて出来上がった巨大な氷柱へアルフィノは見事にぶつかり、エスティニアンはギリギリでブレーキをかけた。
「こんなところで蛮神の力を使うな!」と叫んだエスティニアンだが、視線の先には勝ち誇った笑顔を浮かべる英雄しか立っておらず。
死角を縫って背後からにじり寄るもう一つの影に気づくことはなく────冷えた真っ赤な手が体温で温もった鎧の隙間に突っ込まれた。

「────〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!」
「フフ、いい様だな」

少し機嫌良さげなイゼルの隣をすり抜け、氷柱にぶつけた鼻を手で覆うアルフィノの元へ雪になれたヴァナ・ヴィエラが近づき、首に手の甲をぴと、と当てる。

「ひゃあっ!?」
「ふふん、案の定ポカポカね。さすが子供体温ってとこかしら」
「しゃ、シャリアっ冷たい!!流石にお腹はやめ、」
「問答無用っ!くらいなさい!」

クルザス西部高地、高地ドラヴァニア目前のとある道。
しんしんと優しく振る雪の隙間に、子供のように戯れる4人の叫び声が響いていた。