さちこ/Sharia
2023-12-16 14:46:24
2406文字
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絆と信頼

6.0後

いつもきみはわたしの前をずんずんと歩いていた。
眩い光の方へ、目を背けずに、ずっと前を歩いていた。

わたしの名前を呼ぶきみの声が好きだと気づいたのはいつだっただろうか。
ガレマルド? イシュガルド? いいや、きっともう初めて会ったあの馬車の中で、わたしは既にきみへと一目惚れしていたのだ。
最初の頃は嬉しそうに、楽しそうに。
ある時は少しばつが悪そうな感じで。
きみの呼び方は苗字から名前になったくらいであまり変わらないのに、次第にその声から深い信頼を感じるようになっていった。

だからこそ、ショックだった。
ひょんなことから受けた逃げ出した魔獣の退治依頼。まだ決戦の傷が癒えていないものの、わたし自身まだまだ動けるから受けたものだ。何度も心配するきみに、何度も大丈夫だと返した。だってきみがつきっきりで看病してくれていたのだから当然だ。
だというのに、起きたら隣の部屋からきみの姿がすっかりこんと消えてしまっていた。わたしがまだ眠っているうちに退治へと出かけてしまったのだ。

慌ててナップルームを飛び出して、リトル・シャーレアンへと飛び込もうと走った。
途中で色んな人とすれ違ったが、それどころではなかった。

正直、あの子は一人では弱い。
仲間がいて、その仲間を補助して初めて真価を発揮するタイプだ。
今回逃げ出した魔獣は獰猛で、とてもきみ一人では倒しきれないだろう。だと言うのに、本当にバカだ。
まだきみは一人で全て何とかできるようになろうとしている。わたしがいるって言うのに。
昔の……クリスタルブレイブ時代の方がまだきちんと頼ってくれていた。わたしを武器扱いしていたとしても。

わたしはきみに頼られるのが嬉しいの。
きみからの依頼ならなんでも受けるし、報酬がなくったってすぐに動いてみせる。
それだけきみが好きってことなんだよ。そこらへんわかってないよね、ホント。嫌んなっちゃう。
決戦の直後に死ぬって勘違いしてポロッと好き〜ってこぼしちゃったせいか知らないけど最近ずっとくっついてきてるっていうのにさ。

「アルフィノのバカッ!!」

ボロボロのきみに迫る魔獣をガンブレードで吹き飛ばし、思わず飛び出た第一声がそれだった。
ポカンとしてわたしの名をその声で呼ぶ彼をすぐさま抱き上げて、オールド・シャーレアンへすぐさまテレポを唱えた。

……シャリア……? どうしてここに……
「黙って。静かに運ばれてなさい」

つん、とそっぽを向いてそう告げる。
街中で横抱きが恥ずかしいのかすこしもぞついているけれど離してやるものですか。
一人で無茶するからそうなるのだ。わたしはもうすぐ100になる大人で、アルフィノはまだ20にも満たない赤子だ。怪我にしたってわたしの方がいつも治りが早い。
いつもいつも荒事はわたしに任せろって言ってるのに、彼ときたら……

……?」

あぁもう、キョトンとした顔も可愛いわね!!
そう勝手に心の中で怒りを抑えながら、アルフィノがいつも使っているナップルーム、その奥のベッドへと彼を放り込む。そのまま常備してある救急箱の中身を使って、テキパキと露出している怪我の手当てを始めた。

「フフ、君に手当てをしてもらうなんてなんだか新鮮だね」
「きみが勝手に一人で行ったからでしょ。なんでそんなことしたのよ」

魔獣はモブハントの手配書に載るほど凶暴で、本当はアルフィノがガレマルドへ帰ってから対処する予定だった相手だった。
それがついてくるって言って聞かないから、絶対前に出ないことを条件に同行を許可したのだ。
だというのに、と彼を睨めば、少し罰が悪そうに理由を呟いた。

……まだ君は決戦の傷が癒えていないだろう? だから……

まぁ、それは確かにそうなのだが。
あのウルトラ戦闘狂坊ちゃんにつけられた傷はまだ塞がり切ってすらいない。少し包帯に血だって滲んでいる。
だが、それがどうしたというのだ。

「わたしの傷なんてどうでも「良くない!!」……え、」

食い気味に耳元で叫ばれたせいで、ぴたりと手当ての手が止まる。
思わず目を丸くして目の前の少年を見上げると、彼はそっと頬のガーゼを撫で、ぽつりと呟いた。

「もう、傷だらけの君は見たくないんだ」

ぐ、と歯を噛み締めるきみを見て、ふと思い出す。
あの祝賀会の夜、まったく同じところを怪我して、同じガーゼを貼って、同じように撫でられたことを。
生傷の絶えなかったわたしをようやくきちんと見てくれて、絶望したような顔をしたきみを、よく覚えている。

「大丈夫よ。わたし、あの時ほど弱くないもの」
「私が嫌なんだ。頼むから、もう……
「戦場に出るな、とか言わないでよ? わたしはきみの矢なんだからもっと頼って」

落ち着かせるようにぎゅうと小さな少年を抱きしめる。
わたしができることなんて、狩りか木工くらいだ。そんなわたしから狩りを取り上げてしまったら、それはもうただのへっぽこ木工師になってしまう。

「って、何だか話すり替えられちゃってるし。ともかく、勝手に行ったこと怒ってるんだからね」
「うっ……それは、すまない。せめて何か君の負担を減らしたかったのだが」
「ばか。もう十分助かってるっての。……しょーがないから賢人バーガー奢りで許したげる」

終わり!とあちこちガーゼと絆創膏、包帯まみれになったきみに手を差し出す。

あの時とは正反対だ。親を殺した帝国の影に怯え、周囲のもの全て信じなかったわたしと、エオルゼアを救済するためにやってきた、自信満々だったきみ。
いつもわたしは、きみから差し出される手をただ握るだけだった。

……フフ、やはり君には敵わないね」

でも、今はもう違う。もう、一緒に歩んでいける。
きみは────アルフィノは微笑んで、わたしの差し出した手を握ったのだった。