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吾妻
2023-05-29 23:25:00
7799文字
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アークナイツ
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きみにしるしを
■ガバな胸元にむむっとする博の話です。いちゃいちゃしてるだけ。テキーラくん、胸元やお腹とか結構ガバガバに開放的ですよね。もしかして解放者って、そういう……?※女ドクター、俺設定を含みます。
発端は、些細な違和感だった。
昼下がり、ドクターの執務室で事務処理の手伝いをしていたときのこと。
ふと、視線を感じたのだ。
「ドクター? 何か用事?」
手元の書類から、視線の出所のほうへ顔を向ける。
部屋の中央に据えられたソファセットから、この執務室の主人のデスクまでは少々距離があり、さらに主人は顔をすっぽりとフェイスマスクで覆っているので、表情は読み取れない。だが、間違いなくこちらを見ていたはずだ。自意識過剰などではなく。
俺はいついかなる時も、持ち前の察しの良さをフル活用して、主人の要望には最短で応えられるよう心掛けている。常に彼女の有能な部下であり続けたいからだ。ゆえに、自然と彼女の動向には敏感になる。
「
……
最近、その格好が多いな」
片肘で頬杖をついたドクターが、脈絡もなくそんなことを言った。
格好? 指摘を受けて、本日の装いを確かめる。
シャツにジャケット、細身のスラックス。普段着ている服装に比べれば、フォーマル寄りだ。
「ここしばらく、事務所回りの外勤が多いから、さすがにいつもの格好じゃ示しがつかないでしょ?」
今日も午前中に一件、事務所回りをしてきたところだった。ロドス本艦が大陸中を巡る中で、近隣都市の事務所を訪れ、直接現地の声に耳を傾けるのは、地味だが大切な仕事の一つだ。俺は元々、故国以外の世界を知るためにロドスに乗り込んだようなものなので、武力行使を伴わない外勤は願ったり叶ったりでもある。
ロドス側は当たり障りなく対外交渉を進められるコミュニケーション能力を必要としていて、俺はそれを提供する見返りに社会勉強ができる。まさにWin-Winの関係だ。実際、腕っぷしで物事を進めるより、こちらの方が穏当で、心も平穏。ケガもしなくて済む。
この装いは、そのための装備のようなものだ。人を見かけで判断するのはいいことではないけど、見た目の印象が警戒心を解くこともある。何事も、スムーズに運ぶほうがいい。
……
ので、近頃はいわゆるスーツ姿でいることが多いのだが、何か問題でもあるのだろうか?
「変?」
「
…………
いや」
なに、その間? 含みを感じるんだけど?
思うところがあるなら聞き出しておいたほうがいいかと考えていたのだが、すぐに「似合ってるよ」と付け加えられて、それを聞いた俺はというと「ほんと?」と素直に喜んでしまって、結果、追及するタイミングを逃してしまった。
我ながらチョロすぎるのではと思いはするが、主人からの褒め言葉に弱い自分も案外嫌いではないので、救いようがない。
ただ、素直に尻尾を振ってしまったせいで、結局彼女が何を見ていたのかについてはわからず仕舞いだったのだが。
*
問題が表面化したのは、発端から数日後の深夜のこと。
今日も今日とて、外回り業務に一日忙殺されて、さらに懇親会なるものにまで招待されてしまい、断るわけにもいかずに招きに応じたところ、すっかりこんな時間になってしまった。
帰り着いた本艦は当然ながらひっそり静まり返っていた。
この時間でも、患者を抱えている医療部の人々は交代で勤務しているのだろうが、その他のオペレーターたちの大半は既に業務を終えている。
食堂や共有スペースが最も賑わう夕食時も過ぎ、皆就寝しているか、各々私室で時間を過ごしているのだろう。
(さすがに、もう遅いよな)
個人端末の画面に表示された時刻は、そろそろ日付が変わる頃合いだ。
端末を操作して、一時間ほど前に送り付けたメッセージの履歴を確認する。
気疲れのする会食から解放されて気が緩んだのと、若干酒が回っていたのとで浮かれた気分になり、深く考えずに送り付けたメッセージだった。
宛先はドクター。内容は『本艦に戻ったら部屋に行ってもいい?』だ。
よくできた部下を自負する人間が上司に送っていい文面ではない
――
が、業務時間外なら許されるだろう。なにしろ、お付き合いをしているので。可愛い恋人には、いつだって会いたい。
返信は短く一言。『いいよ』とだけ返ってきていた。
お許しは出ているので、このまま部屋を訪ねようかと思ったのだが、酔いが抜けた頭で考えると、さすがに訪ねるには遅い気がする。
ドクターのことだ、今日も忙しくしていただろうし、限られた休息の時間を邪魔してしまうのではないだろうか。訪ねていったところで、ゆっくり休ませてあげればいいだけの話なのだが、生憎と俺は自分の忍耐力をあまり信用していない。
特に今日は、連日続いた事務所巡りにも一段落ついたタイミングだ。戦闘よりは楽な仕事とはいえ、初対面の相手と仕事の話をするのはやはり気疲れしてしまう。酒はそこそこ強いはずなのに、少量でふわふわしてしまったのが良い証拠だ。
そんな状態で、ここしばらくろくにふたりきりの時間を取れなかった恋人に会って、紳士然としていられるだろうか?
……
無理だろう、多分。
実際、先程メッセージを送った時の俺の心境はというと、『今すぐドクターのことぎゅってしたい』だったわけだし。
こんな下心丸出しで会いに行ってもいいものか。
廊下に佇んだまま、ものすごく真剣な面持ちで考え込んでいたら、手の中の端末が図ったようなタイミングで震えた。
画面に表示される、新着メッセージの通知。
送信元の名前を二度見した。普段は向こうから送ってくることなんてほとんどないのに。
しかも、表示された文字列は
――
――
来ないの?
「
……
」
たった五文字の簡潔すぎるメッセージから目を逸らせない。
これってつまり、待っててくれてるってこと?
今の今まで、今夜の訪問は遠慮しておこうかなんて考えていたのに、そんな殊勝な考えは一瞬でどこかに飛んでいってしまった。
気づいたら、手が勝手に『今から行く』と返信している。
もしかして俺、まだ酔ってるかもしれない。
*
「えーと
……
」
先程までは、まだ酔っていたかもしれないが。
今ではすっかり酔いも覚めてしまった。うきうきとドクターの部屋を訪ねたら、なぜかむすっとした様子の恋人に出迎えられたからだ。
来訪を告げたら、向こうからドアが開かれた。いつもは「開いてるよ」と促されて、こっちから入室することが多いのだが、今日は珍しくドクター自身が部屋の入り口までやってきた。
フェイスガードはすでに外されていて、頭ひとつ分ほど低い場所から、端正な顔がこちらを見上げている。
惚れた欲目も確かにあるだろうが、向き合うたびにやっぱり見惚れてしまう。冴え冴えと怜悧な輝きを宿した双眸がまっすぐに前を見ているのが好きだ。その瞳が映す理想を、叶える手助けをしたいと思う。
……
のだが、今日は少しおかしい。
やたらと目が据わっている。
目の下には誤魔化しようのないクマができているので、過労による理性減退だとは思うが、それにしたって妙に機嫌が悪そうだった。
何か怒らせるようなことをしたかな? 慌てて直近の振る舞いを振り返ってみたけれど、思い当たる節がない。
「ドクター、どうかし、た
……
!?」
ひとまずご機嫌取りの笑顔を浮かべて、恋人が臍を曲げている理由を探ろうと試みたのだが、彼女の行動のほうが一歩早かった。
細い両腕がこちらの胸元に伸びてきて、シャツの襟を掴む。
そのまま、ぐいと強い力で下方に引き寄せられたかと思ったら、次の瞬間には唇と唇が重なっていた。
一瞬、頭の中に無数のクエスチョンマークが浮かんだものの、ドクターの舌先が先を求めるように唇を舐めてきたので、難しいことを考えるのは後にした。
華奢な腰に腕を回して抱き寄せつつ、一歩室内に踏み込む。開いたままだった扉が背後で閉まったので、体を返してドクターの背をドアに押し付けて、何度も角度を変えて唇を貪った。
「
……
が、する」
呼吸の合間に、ドクターが言葉を漏らす。
「喋らないで。もっとしよ」
ここのところご無沙汰だったのだから、もっと味わいたいし、もっと甘えたい。言葉を封じ込めたくて、舌を絡め合わせようとしたのだけれど。
「
……
しらない、においがする」
と、不機嫌そうな声が続いたので、思わずキスを中断してしまった。
ドアを背に、浅く息をついているドクターの目は、相変わらず据わっていて、胡乱げにこちらを見つめてくる。
「匂い
……
?」
「いつもの、君の香水とは違うだろう?」
(なるほど
……
)
なんとなく、彼女が不機嫌な理由が掴めてきた。
最近出入りしていた事務所の関連企業に、やたらと華やかな香りの香水を好むマダムがいるのだ。握手や挨拶のハグ程度の接触しかなかったのだが、周囲にわかるほど香りを移されているとは思わなかった。特にドクターは、嗅覚に優れた種族に比べて、それほど鼻がきくわけでもないだろうに。
(
……
というか、これってもしかして
――
やきもち!?)
遅れて気がついた。もしかして、ドクターはやきもちをやいているのでは!?
思わず正直な尻尾が揺れてしまった。
ドクターは別に情が薄いわけではないけど、あまり普段から独占欲や執着を顕にするタイプじゃない。だからこそ余計に衝撃が大きかった。疲れで理性が減退していたとしても、これほどストレートに嫉妬してくれたのは初めてじゃないだろうか?
「この香りは
――
」
「それに」
事情を説明しようとしたら、言葉を遮られてしまった。
まだ何かあるのだろうか? 素直に言葉の続きを待っていたら、仏頂面のまま、ドクターがもう一度、俺の襟元を掴んだ。
「
……
胸元、ちょっと開けすぎじゃないか?」
頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされて、思考がフリーズしてしまった。
…………
胸元?
ドクターは、シャツの襟元を掴んだまま、むくれた顔でうつむいている。
確かに、ネクタイもしていなければ、ボタンも首元まで留まっているわけではない。言われてみれば少々開放的な装いかもしれない。
『
……
最近、その格好が多いな』
『変?』
『
…………
いや』
数日前の、執務室での会話が蘇る。
あの含みはまさか、この胸元に言及したかったのだろうか。
急激にいろんな感情が湧き上がってきて、処理限界を超えてしまった。
ドクターはもごもごと「物事にはTPOというものがあって
……
」などと言っているが、その顔はとてもではないが部下に説教している上司などではない。
理性が減退したドクターは、時折本来の彼女からは想像もできないような言動をすることがあり、その度に動揺させられるのだが、今日の破壊力は別格だ。
だって俺はいつも、心の底ではドクターを独占したいと思っていて。
でも、そんな自己中心的な願望が叶うことがないことも知っている。
だから、うまく折り合いをつけて、身のうちに棲んでいる獣をなだめすかしているってのに。
どうしてやろうか、この可愛いいきもの。
「
……
よいしょ」
「!? こら、急に何を
……
!?」
「暴れないの。落としたりしないから」
ドクターの腰に両腕を回して、肩の上に担ぎ上げる。
ジタバタ抵抗しても無駄だよ。力は俺のほうが圧倒的に強いんだから。
そのまま部屋を横切って、窓際に寄せられたベッドに仰向けに下ろす。体を起こされる前に、こちらもベッドに乗り上げて覆い被さった。
「エル
……
っ」
「俺はドクターのものだよ。信じられない?」
「
……
そういう
……
わけじゃ、ない
……
けど」
「けど?」
珍しく狼狽えた様子で、ドクターが視線を逃がす。普段ならこのあたりで追及の手を緩めて、なし崩しに食べちゃうところだけど、今日は全部吐き出させたほうがいいような気がしたし、なにより俺自身がもっと聞きたくて、髪を撫でつつ先を促した。
ドクターはしばらく逡巡した様子を見せたあとで、観念して口を開く。
「
……
君は魅力的だから、いろんな人の目に好ましく映るだろうし
……
」
囁きほどの小さな声を決して聞き逃すまいと耳をそばだてていたら、あまりにも自分に都合のいい言葉が聞こえてきたので、真顔になってしまった。
「でも今更、この関係をなかったことに
……
なんて、ちょっとできそうにないし
……
」
だから、最近とても困っているんだ、と呟いて、ドクターは深い溜息をひとつ零した。
「
……
」
咄嗟に言葉が見つけられなくて、できたことと言えば息を飲むくらいのものだった。
俺は、自分の感情のほうがデカくて重いんだと、いつだって思っているけれど、時折自惚れそうになる。
ドクターって実は俺のこと、結構好きなんじゃないだろうか
――
なんて。
自惚れて、浮かれて、つい我儘なおねだりをしたくなる。
「
……
だったら、ドクターが俺にマーキングしてくれない?」
「
……
は?」
「俺がドクターのものだっていう印、つけてよ」
とんとん、と自分の首筋を示しつつ微笑みかける。察しのいい人なので、意図は伝わっているだろう。
「いつも俺がドクターにしてるみたいに」
今度は、ドクターの白い首筋を人差し指でなぞり下ろす。耳の裏側、首と肩の付け根、それから項。寝台を共にするたびに、唇を這わせ、歯を立てる場所。ここしばらくは忙しかったから、さすがにもう前回の痕は残っていないけれど。
指先で辿られただけで、幾度となく重ねた行為を思い出したのか、ドクターの体がひくりと震えた。
「ほら」
「っ
……
」
硬直しているドクターの背に腕を差し入れて、体勢を入れ替える。
仰向けに寝そべって、強張っているドクターの体を自分の上に乗せた。
やがて、小さな頭が首と肩の間に埋まってきて、耳の下あたりに熱っぽい吐息を感じた。
やわらかい唇が首筋に触れ、ちゅ、と少し強めに吸われる。鈍い痛みが沁みてきて、じわじわと腹のあたりから獰猛な熱が全身に広がっていくのがわかった。
今すぐこちらから噛みついて、全身くまなくくちづけて、頭から足の先まで食べてしまいたくなったけれど、一度唇を離したドクターが、もう一度首筋に吸い付いてきたので、我慢することにした。
ドクターにキスマークをつけてもらえるなんて滅多にないことだし、一生懸命唇を押し当ててくるの、めちゃくちゃ可愛いし。
スーツ姿はもちろん、普段着でも見えそうな位置だなとぼんやり考えたけれど、まぁいいか。フードをかぶってれば見えにくいだろう。
――
別に、見えてもいいけど。
だって俺はもう、ドクターのものだから。
吸い付いていた唇が離れて、熱っぽい吐息が肌にかかる。
「ちゃんとできた?」
頭を撫でながら問い掛ければ、小さくこくりと頷く。
「お願い聞いてくれてありがと。じゃあ今度は俺の番」
後頭部に手をかけて引き寄せ、目の前に無防備にさらされた首筋を甘く噛んだ。
「っ
……
」
歯形が残る程度力を込めてから、その痕を辿るように舌を這わせる。仕上げとばかりに吸い付いて、鬱血を残してから唇を離した。白い肌に、赤い印がくっきりと浮き上がっている。
君の全てを俺のものにしたいなんて、そんな我儘言わないから。
このくらいは許してよ、ドクター?
服の胸元を乱しつつ、今度は浮いた鎖骨に歯を立てる。上機嫌に甘噛みを繰り返していたら、観念したような溜息が落ちてきた。
「
……
すぐ噛むな、君は」
「痛い?」
「
……
痛くはない。むしろ、くすぐった
……
、いっ!?」
油断している隙に、弱点である耳の裏側に強く吸い付いたら、声が高く上擦った。
やばい。その声、腰にクる。
ベッドに運んだときから大体わかってたけど、やっぱり今日も自制は無理そうだ。
もう一度体を返して、仰向けに押し倒して、それから。
「大好きだよ、ドクター」
ぱたぱた尻尾を振りながらキスをして、あとは。
気が済むまでベッドの上でもつれ合うことにした。
*
遠くでアラームが鳴っている。
うつ伏せに転がったまま、ベッドの上を手探りにしてみたが、目当ての端末は見つからない。
(
……
あれ?)
それどころか、何も探り当てられなくて、びっくりして目が覚めた。
慌てて上体を起こし、二人で寝るには手狭なベッドの上を探して、
「
……
ドクター?」
この部屋の主がいないことに気がついた。
昨日の出来事は、まさか夢? いや、そんなはずはない。
だってここはドクターの部屋だし、俺は裸だし、ベッドの下に脱ぎ捨てた服の山の中からアラーム音が聞こえてきている。
どう考えても、昨晩のじゃれあいが夢のはずがないのだ。
だとしたら、ドクターはどこへ行ったのだろう?
ひっそりと静まり返った室内に、自分以外の気配はない。
とりあえず、床の上から上着を拾い上げて、鳴り続けているアラームを止める。時刻は朝の七時。内勤なら、今から支度をしても十分間に合う。
腑に落ちない気分のまま端末をチェックしていたら、メッセージが届いていることに気がついた。
――
ケルシーから呼び出しがあったので、先に出る。ゆっくりできるなら寝ていていいから。
なるほど、仕事の呼び出しがかかって先に起き出したらしい。
仕事人間の彼女が昼夜問わず呼び出され、二つ返事でそれに応じるのは別に珍しくもなんともない。でも、これまでは先に起きるときでも、一応声をかけてくれてたんだけどな。
それだけ時間がなかったのか、それとも声をかけたくない事情でもあったのか。
……
後者ではないことを祈りつつ、ひとまずシャワーでも借りようとベッドを降り、浴室の鏡の前に立ったところで。
「
……
うわ」
思わず声が出た。
連日の外勤から社交辞令飛び交う飲み会を経て、疲れていたにも関わらず、明け方まで欲望に任せて恋人と散々いちゃいちゃして、顔には疲れが出ているし髪も跳ねていて、全くもってスマートな姿ではない。
けど、問題はそこではなく。
首筋から鎖骨、胸元のあたりまで、それはもうたくさん、赤い痕が散っていた。
(やっぱり、ヤキモチやいてたんじゃん
……
)
しかも、かなり。相当。めちゃくちゃに。
そして、この印を残した張本人は、朝になって己の所業を目の当たりにし、恥ずかしくなって先に部屋を出たのだろう。
さすがにここまで大胆に痕を残されると、隠せるような服を選ばなくてはならない。
良さげな服が手持ちにあったか考えつつ、シャワーのハンドルに手をかける。
もっと早く気づいてあげられたらよかったな、などと妬かせてしまったことへの反省の念もあるにはあるが。
口元がにやけるのを止められなかった。
俺、自分が思ってるよりずっと、愛されてるかもしれない。
睡眠不足で体は怠いし、頭はぼんやりと重い。それでも、機嫌だけは無闇矢鱈に良かった。
その後、珍しく首元あたりまで隠れる服を着て、尻尾をパタパタさせつつドクターを昼食に誘いに行ったら、思いっきり気まずそうに顔を背けられることになるのだが
……
。
それはまた別の話。
【終わり】
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