210日後に来る刀

狸本丸怪談、散歩ピンの怪

不動行光がヒトガタとピンを持ってトコトコと歩いていたので、加州清光は思わず不動の首根っこを引っ掴んだ。
「ちょーっと待った!そのヒトガタ、どこから持ち込んだんだよ」
「郵便受けに入ってた」
「うちの郵便受けに?」
「いや、知り合いの本丸のに」
あとこれも付いていたって、と不動は白い封筒をジャージのポケットから取り出してきた。薄らと香の匂いがするのだが、驚くほど不快であった。
封筒の中身曰く、毎朝毎夜一本ずつピンをヒトガタに刺すこと210日目に、望んだ者が訪れる、とのことらしい。
「流行ってるんだってさ。うちには人間無骨がいないって話したら、譲ってやるって」
断ったけど、強引に押し付けられたんだよ。
ピンそれ自体は、審神者の外出時に行き先で打ち込むようにと支給されているものと違いないように見える。ここ最近、刀剣男士との交換所が導入されたあのピンだ。
この本丸にもピン自体は支給されてはいるのだが、
「うちはあんまりさ、散歩しないじゃん」
「あるじを外に出したら、碌なことないからね」
化かすし。どこ行くか分からないし。肉球も火傷するし。獣だもの。仕方がなかろう。
「そもそも、このピンのシール交換所に人間無骨はいなかっただろ」
「分かってるって。これをくれた他所の乱もそう言っててさ。そこでこのヒトガタの出番なんだって」
そう、そこで210日の儀式が出てくる訳である。ヒトガタに、毎日コツコツピンを打ち付ける。
加州は頭を抱えてた。駄目じゃん。
「これ、どう見てもヤバい呪術じゃん!!」
「だよね。オレもそう思う」
うんうん、と不動は深く何度も頷く。
「教えてくれた乱のところは白山吉光が来たって言うんだけどさぁ」
後ろにいるの、どう見ても乾涸びた猿なんだよ。
だからこれは御神刀部屋に持っていくところであったと言う不動の頭を犬さながらに撫でグリ回し、次の人間無骨チャンスは全力で行こうと加州は決めた。