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sugu_yoru
2023-09-03 19:58:36
1846文字
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【天ヤマ】映画で揺さぶられる九条天③
アイナナ 天ヤマ 勉強中。映画に影響されて、大和への気持ちに気づいてしまう九条天。
続きます。
* * *
「あぁアレ、脚本家の力が大きかったみたいよ。オレも試写の他にもう一回観に行っちゃったよ~! 原作と違って心の機微が繊細っていうかさー」
ロケで一緒になったRe:valeの百が、撮影用のスニーカーに履き替えながら八重歯を零し、そう天に話し掛ける。午前中は保護猫カフェの仕事で、天は秋の日差しの中で衣装に残っていた猫の毛を摘んで宙に放った。
「原作の翻訳もそれなりに英文に忠実で、それでいて日本語の美しさもあって、悪くはなかったんですけどね」
「ぎょぎょ! 天ってばもしかして
……
」
「あぁハイ。原文(英文)の方を読みました」
「流石飛び級、流石海外の大学ぅ! ヒュ~格好良いねぇ!」
「茶化さないでくださいよ。ボクから見れば、百さんだって相当格好良い」
「自分が格好良いっていうのを否定しないの、天らしい」
「否定したり、下げたり、卑下したら、ボクのファンに失礼なので」
「だからそれが、天らしいなって」
二人の頭の上を、緑色の葉っぱがさわさわ揺れる。九月の、気持ち良い秋日和。猫も可愛かったが、これからレジャーを楽しむロケを、天は楽しみにしていた。百の相方の千はと言うと、未だに二階堂大和とセットでロケやゲスト番組に出演している。
『詩人探偵キキの事件簿 海辺の街』は、興行収入70億越えの大ヒットとなった。公開から四ヶ月以上経った今も、細々と一日一回の上映をルーチンにする女性が多く、じわじわと観客動員数を増やしている。天は思い立って、以前疑問に思ったことを尋ねてみる。
「百さん、寂しくないですか?」
「オレぇ? 毎週一緒にレギュラー出て、歌番組とかラジオも出て、事務所でも顔を合わすのに?」
「そうですよね、すみません。変なことを
……
」
「寂しいに決まってるじゃん! ダーリンとセット売りされるのはやっぱりモモちゃんじゃないと!
……
というのはいつもの奴として」
「定番のやつとして、ですね」
「さっきの保護猫カフェでの天みたいにさ、いつもは構えない大和のこと、これでもかってほどちょっかい出しても怒られない場が設けられて、千はめちゃくちゃホクホクしてたよ? だからぜーんぜん寂しくはない!」
「なるほど」
「普段大和って千のこと、昔を知られてるからか恥ずかしがって避けちゃうじゃない? テレビで千に何か言われて調子を崩しちゃう大和ってば超可愛いジャン!」
「
……
」
確かにそれも話題になっている。後輩然として、たじたじになっている大和は可愛げがあった。
「大和ってさ、ああ見えて構いがいがあるってか可愛いよね」
「はい」
「おや、年下でもそう思う?」
「はい、ボクの方が一応先輩なので」
「ニャハハハハ! そーだったそーだった!!」
バシバシッと叩かれて、天は勢いにベンチから転げ落ちそうになり、元凶の百に捕まれて持ち直す。「悪いわるい」と笑った先輩の声を掻き消すように、「百さん、九条さん、本番でーす」とスタッフが呼びに来た。
あとで聞いたところによると、千が大和との出演が増えたことで、百も他のグループのメンバーや、ソロでの仕事が増えて面白いと言っていた。単体仕事を微塵も不安に感じず、この業界をサバイブする百は、やはりアイドルという仕事が向いている。
そして、昔は少し不安そうにしていた千との関係も、揺るがないほど安定した絆で結ばれているのだなと思う。
同じグループでもないのに、天の方はなぜこんなに不安に感じるのか、自分でじぶんがよく分からなかった。二階堂大和は、天のものではないというのに
……
。
* * *
「おはよーございます」
「
……
おはよう、ございます」
そんなもやもやしている天の元に、件の二階堂大和がある日急に現れた。このあとの番組はWEB配信番組のゲストで、彼が出るなんて聞いていない。同じ局にいることも知らなかった。
「キミ、何か仕事?」
「そうじゃなきゃここ(WEB局)になんて居ないよ。出番が終わって、帰ろうとしたら九条の名前が貼ってあったから挨拶に来ちゃった!」
ぶりっ子っぽくポージングする大和に椅子を引いてあげて、天は浮つく気持ちとは裏腹に「ああそう」と小さく声を出した。それに大和が少し眉を下げる。
「迷惑だった?」
「全然、出番までまだ一時間くらいある」
「ハハ、何だそりゃ。入りがはやくない?」
「カフェに寄ろうと思っていたんだけどね、混んでいて、テイクアウトで楽屋に持ち込むことにした」
<続く>
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