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sugu_yoru
2023-08-06 23:34:35
1890文字
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【天ヤマ】呪いにかけられて3
アイナナ 天ヤマ 勉強中。九条天の一言に振り回される二階堂大和の話。
続きます。
「わぁ~い」
と近寄って来た七瀬陸は、ソファの傍に即しゃがんで、大和が差し出した手のひらにパチンと自分のを合わせる。すると、それを大和はぎゅうっと握り込んで、突然の束縛の裏切りに、陸は悲鳴を上げた。
「ぎゃ! ちょっと力が強い!!」
「はっはっはっは」
「七瀬さん、そろそろ二階堂さんを見習って着替えたらどうです?」
陸と一緒に楽屋に入ってきた和泉一織が、当たり前のように兄(三月)の隣を陣取って、早々に着替えはじめてそう言った。
「だって、大和さんが」
「はっはっはっは」
「離してくれな
……
い!」
「リク、お前さんの兄弟愛が俺の個人情報の漏洩に繋がってるんだよ」
「ヤマさん! 機嫌悪いのりっくんに当たるの、ヤメロよな!」
「いて!」
環に後ろから紙(台本)を丸めた筒で叩かれて、大和は大げさに呻いて手の力を緩める。しゅぽりと白魚のような手が大和の手から引き抜かれ、陸が傍から逃げて行ってしまった。
「環~、ありがとう」
「いいってことよ!」
というやりとりを聞きながら、鏡を見て、打たれてわずかにへこんだ髪の毛を戻しつつ、ようやく大和は立ち上がった。
「大和さん」
今度は逢坂壮五が、先ほど脱がせた大和の上着を甲斐甲斐しく広げてくれたので、軽く礼を言って、それに腕を通した。それと同時に、前の仕事で押していた六弥ナギが慌ただしくマネージャーと入室して来て、大急ぎで着替え始めた。
大和はぼんやりとその喧噪を見つめながら、「そうだ、本番が近いんだった」と思い至った。
……
本番が近い。彼が、見るかも知れない。そうこうする内に、スタッフが呼び込みにやって来る。
「
……
じゃあ、行くか」
大和への返事とともに、七人は揃って部屋を出る。扉の前ですれ違ったマネージャーが、「よろしくお願いしますね」と笑いかけた。その声に少し、緊張感がある(だって生放送だ)。その日、大和もわずかばかり緊張していたが、それはきっと違う理由だった。
きっと彼はこの中継を見るだろう。そう思うと、ステージの上でも少し逃げ腰になってしまって、凹んだ腰の部分を和泉三月にポンッと叩かれた。
* * *
「ステージ中央へ行く途中、和泉三月に触らせていたでしょう」
「げ、やっぱり観てらしたか」
「『げ』って何、キミだってボクだけをこの前、ずっと見ていてくれたでしょう?」
「それはお前さんが
……
」
俺に、呪いをかけるから
……
。
スタジオの端のはじ、脚を交差してひっそりと立っていたはずなのに。めざとく見つけて来たのかいつの間にか傍らに立った存在が眩しい。細かく縫い付けられたスパンコールがキラキラ煌めいて、静かに音もなく立っているが、九条天がそれでも呼吸しているのが分かった。
「君、その立ち方よくするよね、脚を交差するの」
「え、どこで見てた?」
「ブラホワのときだってそうだったし、単独LIVEのときフラついたのをそれで持ちこたえたでしょう?」
「マジかぁ、恥ずかし!
……
もしかしてファンも気づいてるかな」
「ボクも、ファンだから良く見てるんだよ」
「おや、俺にこんな綺麗なお顔のファンがいるなんて光栄だな」
「フフ。平静を装ったフリして。君、実は呪い
……
効いてるでしょう?」
突然のぶっこみに、大和の体勢が崩れた。いや外側からはきっと分からないだろう。一瞬黙ってしまった。それって『効いてる』と同義語だ。取り繕って笑ってみようと試みるが、大和の口角は引き攣って、ちょっとでも上がる素振りを見せなかった。
「
……
」
「あぁ、あぁ。そんな顔しないで? そんな顔、させるつもりじゃあなかった」
「じゃあ、どんなつもりだったんだよ」
「キミにも」
そこで九条天は一度息を呑むようにした。
「ボクを、好きになって欲しかった」
* * *
そのまま、九条天は真っ直ぐにステージへ向かい、大和は意識して彼を徹底的に避ける生活に突入した。しかし、同じ番組に毎週出て、同じ場所、同じ行動をしていれば、そら同じ顔と遭遇するのも無理のない話だ。
そのときは未だ気づかずに、売場に並んだ大和が気になっているのは、茶色いシャツに滲んだ汗ジミだった。
……
きっと食べているうちに冷房で乾くであろう。しかし、またスタジオに向かって歩き出したなら、同じところに汗をかいて恥ずかしい思いをするだろう。現に今だってはちゃめちゃ恥ずかしい
……
!
服は、顔バレするようになってからはあまりショッピングには行かずに、スタジオで着て気に入ったものを、衣装さんから購入したりすることが増えた。
<続く>
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