sugu_yoru
2023-06-17 20:18:06
1946文字
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【天ヤマ】大和さんが熱中症で倒れる天ヤマ1

アイナナ 天ヤマ 勉強中。ニカヤマさんが熱中症で意識を失います。一織がちょっと出て来ます。
続きます。

 青空の下、酷い頭痛が始まって、「あれあれこれはヤバいかな?」と思ったが後悔先に立たず、二階堂大和はふらふらと白い壁に寄りかかったところで、傍に居たメイクさんに声を掛けてもらった。
「二階堂さん、大丈夫ですか?」
……少し、横になれるところはありますか?」
「奥の部屋に、マネージャーさんには私たちがお伝えしますので」
 女性のメイクさんやスタッフさんに抱えられるようにして(今思うと恥ずかしい)、バタバタと連れて行かれたのはスタジオの奥の控え室のようなところだった。ソファを用意されて、脇や額を保冷剤で冷やされて、面倒見られている間にようやく息を深く吐き出せた。
 今日来ているのは、中庭でも撮影できるそこそこ広いスタジオだ。小さなプールが付いていて、そこで水着を身につけた六弥ナギと七瀬陸が今は撮影中だ。大和は、先ほど白いベンチに寝そべって、薄手のフーディーを身につけ、撮影を終わらせたばかりだった。
「脱ぎましょうか?」
と聞いては見たが、「その生地透けるし、大和くんは大人の魅力で見せれるからそのままで良いよ」とカメラマンに言われたもので、パラソルの下で早々に撮影を終えてしまった。そのあとも、よせば良いのに、二人の未成年の撮影を外で見つめていたのだ(マネージャーが、すぐ傍のラジオ局へ所要で少し、席を外したから)。
 誰か周りにガヤガヤ居たようだったが、意識はすんなりと『無』に落ちて行った。

* * *

 ぐっすり眠ると、目が覚めても眠気を引きずらずに済むものだなぁと思いながら目を開けて、天井を見上げた。ここはどこだろう? と一瞬思ったが、すぐに自分が調子を崩して倒れていたことを思い出した。
「二階堂さん、意識はありますか?」
……はい」
 起き上がると、すぐそばに先ほどのメイクの女性が居た。
……さん、気がつきましたよ」
「そうですか」
 メイクさんが誰を呼んだのか、寝起きで聞き取れなかった。自分の傍らに置かれた丸椅子の上で、文庫本を携えて座っていた人物が、ポンッと紙面を閉じて顔を上げる。それは大和のグループのライバル……いや戦友ともいえるグループのセンターの青年だった。そこへ腰かけたまま、大和へ言葉を投げた。
「気分はどう?」
「えーっと……。まあ悪くはない、かな」
「それは良かった」
 九条天の、濃いピンク色の瞳が弧を描く。
「あの、お前さんは、どうしてここに居るんですかね?」
「彼女が少し席を離れなきゃいけなくなったから、撮影が終わったボクが見ててあげるって申し出たんだよ」
「それはそれは……
 そう言えば、午前中TRIGGERも同じ建物内で撮影があると七瀬陸がはしゃいでいた。
「俺、どれくらい寝てた?」
「一時間ぐらいですかね」
 九条天の代わりに、ため息のように答えたのは、自分とこのグループのパーフェクト高校生だった。「大丈夫ですか? 二階堂さん」と、簡易ベッドの脇に腰を降ろして来る。普段美形ばかりに囲まれて(しかも小さい頃からだ)慣れてはいるが、間近で見る和泉一織はぞっとするほど美しい。
 あまりそう言ったことが顔に出ないタイプだが、寝起きで「お」と声まで出てしまった。それに「なにを狼狽えているんです?」と一織が怪訝そうに声を出す。
「いやちょっとまだ混乱してんのかも、ごめんねイチ。てか、高校は?」
「ハァ、本当に混乱していますね。……今日は土曜日で午後は放課なんです」
「あ、だから弁当要らなかったのか……
 どうやら、一織はマネージャーから話を聞いて、駆けつけてくれたようだった。
……大丈夫ですか? 今マネージャー呼びますので、もう少し横になっていてください」
「はい、そうします」
「頭痛とかないですよね?」
「今は……ない」
 それを聞くと、和泉一織は少しだけ微笑んで、大和の胸のあたりをポンッと軽く触れてから部屋を出ていった(マネージャーは今、六弥ナギと七瀬陸についているらしい)。
 和泉一織が出て行って、パタンッと音が鳴って控え室が静かになると、これまたずっと黙り込んでた九条天がゆっくりと立席し、こちらへ近寄ってくる。大和の頭の傍らまでくると、じぃっとこちらを見下ろしてくる。猫型の瞳が恐ろしくて、大和は瞳を瞑って死んだふりをした。
「ちょっと、もう目が覚めたんでしょ?」
「はい……
「ふざけないで。起きれる?」
 後半の声色が優しかったもので、大和は目を開くとゆっくりと起きあがろうとした。それを九条天の腕が優しく拾い上げ、助けてくれる。大和が起きあがってからも手のひらは離れていかず、そのまま上下にさすってくれた。
「あ、りがとう」
「ボクにはドキドキしないんだ」
「へぁ?」

<続く>