sugu_yoru
2022-10-02 14:44:01
1641文字
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【天ヤマ】大和さんが後輩アイドルに告白される話5(おしまい)

アイナナ 天ヤマ 勉強中 モブが出ます。
おしまいです。

 そこには、出番を終えたばかりであろう九条天が身体を折り曲げていて、顔の横を滑る汗を黒いグローブで拭っていた。
「あ、残念。お前さんたちのステージ見逃した」
「あとでWebのアーカイブで見れるよ。それより……
「ああ、十さんには感謝しなくっちゃだな」
「え?」
「大切な気持ち、蔑(ないがし)ろにしちまうところだった……かも?」
「『かも』?」
 それを口にして、天がおうむ返しに首を傾げるのを見て、大和はその子供っぽさに、ふはっと思わず吹き出した。今度は何だか照れてしまって、首の後ろを擦りながら目線を逸らす、でも言いたかったことを口にする。
「俺もあの子と一緒だよ、ホームくんと」
……なにそれ、君たち二人相思相愛ってこと?」
 途端に険気が顔に出る。……思えば前からそうだった。だいぶ前から知っていた、だって。
「いんや、俺もお前さんに憧れて、きっとずっと見ていたってこと」
 あの九条天が、驚いたように唇を引き結ぶ。大和はそれを愉快に感じる。
「好きだよ、九条。お前が俺を想っているくらいには、きっと」
 そう言い放ってやって、十八歳の子供が顔を白黒させるのを敢えて見ないでやって。大和は自分のメンバーの楽屋へ、平常心を装ってゆったりと戻ろうとした。すると、廊下を追って来た天が「バカにしないで」と、彼にしては弱々しくそう言った。
「馬鹿にしないでよ、同じなわけない僕がどれだけ……
「あ、そう。リクよりも?」
「陸は特別枠」
「別腹ってわけか、ずっるいの」
「君だってメンバーは特別でしょ? でも、……僕は嬉しい」
……
「うれしいよ、二階堂大和」
 振り返ると、目元を赤く染めた九条天が大層いじらしく、ピンク色の瞳を潤ませていた。大和の胸もこれ以上もないほど高まって、肩くらい抱いてしまおうかと思った瞬間に、後ろから抱きつかれる。「ヤマート、遅いですヨ? みんな待ってマース」と高い声を出されて、それが誰だかすぐに分かった。
「ナギ……
「ん? お邪魔でしたか?」
「いんや、待たせたな」
 大和が軽く天に右腕を上げて、メンバーの方へ戻ろうとした瞬間、その上げた右腕を取られた。華奢な彼からは想像できないような力強さで引き戻される。
「次のオフの日、ラビチャで必ず僕に知らせて」
 耳元でそう囁くと、手を引き寄せた唐突さと変わらない勢いのまま、踵を返して天は去って行った。まるで宣戦布告みたいだ、と思う。大和は苦笑しつつ、しかしどこか晴れやかな心地になってナギに振り返ると、「ヤマート、何だか嬉しそうですね」と指摘されて参った。

* * *

『それでは記事の内容は、お認めになると』
『はい、つき合っています。僕から告白しました』
 画面の向こうでは、『シトロエン』のホーム君が記者会見を開いていた。なんでも、活動する内に同じメンバーの一人と恋仲になり、今では同棲しているとのこと。
『三ヶ月前、僕が酷い失恋をして、彼が哀しみを癒してくれました』
「ほぇあ〜」
「兄さん、口が開いてますよ」
「いや、あんなに『大和さん』『大和さん』言っていた男の子がさ、すぐ次見つけるもんだなって思って」
「『次』なんて表現はよしてあげてください、うちのリーダーは少なからず傷ついているみたいですよ?」
 一織のフォローに飛びついて、ソファに座った大和も口を尖らせる。
「そうだよミツったら酷い! 振り回されて捨てられた俺の気持ち、分かる?」
「良く言うよ、今自分だって幸せなくせに!」
 ヨヨヨっと、泣き崩れたフリをしたが、三月の言葉に思わず口角が上がってしまう。大和は口元を隠して、「さて、お兄さんはトイレ、トイレ〜ってね」と言いながら通り過ぎたものだから、和泉一織は「いちいち言わないでください」と眉を顰めた。
 部屋を出たところで、大和は自身のにやけ相手からのラビチャに気づき、思わずステップを踏みそうになって、それをぐっと堪えるのだった。

<おしまい>