ラーメン、そこに餃子を加えるまでは良い。しかしニラレバを読み上げチャーハンを追加し、まだ何か言いかけたので思わず「わわわー店員さんもう大丈夫です!」と制したのは十王院カケルの方だった。
テレビ局でWeb配信番組の打ち合わせをしてきた。時間通りに終わったが、朝の始まりが早かった。朝食は食べて出掛けたけれど、終わるころには二人のお腹はペコペコで、香賀美タイガに乞われて商店街の中華料理店へ入った。タイガは何度か来たことがあるようで、手慣れた雰囲気でメニューを読み上げていた(壁にオバレのサインも掛かっている)。
「ターイガきゅん、ちょっち頼み過ぎじゃない?」
店員が笑いを堪えながら姿を消してから、コソコソと耳打ちする。「おめぇだって米二合くらい余裕だろうが」とかとんでもないことを言ってくるので「ちょ! 心外ナンですけど!!」と言って席を立ちかけた(が、タイガに腕を掴んで引き戻される)。
「ぅんも~、こちとら糖質制限してるくらいなんですけど」
「阿呆抜かせ、育ち盛りがンなことしてどうすんだよ、食え、くえ!」
そう言って、先に届いた餃子の皿を押しつけてくるものだから、カケルも仕方なしに一つ箸の先端で持ち上げてレンゲの上に移動させた。一口食べて、肉汁が溢れる餃子を蓮華へ戻す。それをスープに沈めてから口に運ぶと、まぁ悪くない、美味しい。
「ふぅめぇだろ」
ぐふふと口に肉汁だかスープだかを頬張って笑う一つ年下の恋人は可愛くて、「うん、美味しいね」って素直に答えたら「だっろぉ~?!」と店内に響き渡るくらいの馬鹿デカボイスで叫ばれた。
カケルは諌めるより子供っぽい恋人の言動に嬉しくなってしまって、口元から食べ物が零れ出ないように手を添えてぐふぐふと笑い返した。食熱で汗が滴る。眼鏡が曇る。でもその眼鏡を拭いた向こう側に、誇らし気にニラレバを頬張るタイガが見えて、思わずカケルももう一つ餃子にかぶりつく。
台風の合間の暑い日だ。全く冷めていなかった餃子の肉汁に、口内を痛めてカケルは呻いた。それを何でだか知らないけれど楽しげに見つめていたタイガ。最初は気づかなかったが、きっと同じ気持ちなのだ。薄い曇り硝子の向こう側、きっと合わせ鏡の気持ちなのだ。
思い出したようにタイガはようやく米に手をつけ始めた。カケルもそれに倣って箸を動かす。
「あ、これライス無料なんだぜ」
タイガが気づいて得意げに言うので、カケルも笑って「嘘ぉ!?」だなんて大袈裟に驚いたものの、味の濃いおかずには白米が合うに決まってる! 二人揃って白米を追加で頼み、店を出たところで、ミナトに夕飯が不要なことを電話で伝えると「報告時間がはやくない?」と笑われたのだった(時刻は一時半、タイガの方はそれを不本意そうにしている)。
<おしまい>
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