sugu_yoru
2022-06-10 00:04:51
1835文字
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【天ヤマ】大和さんが後輩アイドルに告白される話4

アイナナ 天ヤマ 勉強中 モブが出ます。
ニカヤマさんに、中の人の身体的特徴を搭載しているので、お嫌いな方はお避けください。
もう一回くらい続きます。

 歌番組。出番が終わって裏に回ると、ニッコニコの八乙女楽が、大和の傍へ手を上げながら走り寄って来た。「お前さん、次出番じゃあないの?」と大和が驚いて聞くと、「お前! ここ、ここ!!」と言って人差し指一本を大和の胸元にズボリと差し込み、ぐぃ~っと手前に引っ張った。
「ちょ、マジ何すんのさ! えっち!!」
「スクリーンに大写しになってたぜ、お前の可愛い『ココ』!」
「ハァ?」
「ほくろ! 全国放送だぜ」
「ゲ! マジ?! カメラマンえっちだなぁ~。お兄さんのほくろは高いのに」
「お前がこんなV字ネックなんて着てるのが悪い」
「衣装さんに言って!」
「ちょっと、楽。セクハラ」
 くっついてワチャワチャしている二人の間に、割り込むように身体を滑り込ませたのは九条天だった。何でだかその姿に大和はホッとする。こんな風に大和が誰かにちょっかいを出されていると、必ず来てくれるのだと実感できたからかも知れない。
「大和くん、ちょっと!」
 そしてこちらの名前を、スタジオの入り口で呼んだのはTRIGGERの残り一人、十龍之介だった。光る入り口の手前の通路から顔を出して、「来いこい」と手招きしている。大和は「はい」と二人にはしない先輩への態度を露わにして、それに不満そうにする二人を置いて十の元へと歩いて行った。
「出番まですぐだから時間ないけど」
……っ」
「彼の話を聞いてあげて。ちゃんと君のこと想ってるみたいだからさ」
 そこで俯くように立っていたのは、ホームくんだった。大和はあまりのことに、十を責めるように睨みかけてしまうが、下がった眉毛と「ゴメン」という短い謝罪でそれら全てを受け流し、十はその場から居なくなってしまった(次、出番なのである。仕方がないとも言える)。
 大和は頭を掻く。そして、まるでマイクテストのごとき曖昧な声を出した。
「あー……あーあー。こないだはその」
「この間は、本当にすみませんでした」
「もしかして『既成事実』という名のお写真撮ろうとしていた? 俺と、君の」
「はい、分かっちゃいましたよね。ハハ、すみません。待ち伏せして、あんなことを仕掛けて置いて、こんなことを言う権利はもしかしたら、僕にはないのかも知れません。信じてくれないかも知れませんが、僕はあなたのことが本気で、本当に好きです。二階堂大和さん」
……
 ホームくんのピアスがついた下唇が震えてる。
「本当にずっと好きで、あの先生役でのドラマ初出演を観て、僕は恋に落ちたんだ、どんな手を使ってでも、お近づきになりたかった……
「そんなのは、『愛』とは言えない」
 本当に? 大和の言葉に、大和の中の誰かが尋ねる。その執着こそが『愛』ではないのか? 『愛』の形を非難する権利が大和にあるのか?
「分かっています、何を言われても仕方がない。ただ、あなたに知っておいて欲しくて」
 演技かも知れない。でも美しい涙が一筋、まだ幼さが残る頬を滑り降りる。大和は人差し指を折り曲げるとそれを優しく拭って、反対の手のひらを彼の頭の上で弾ませた。
「ずっと見ていてくれて、ありがとう。やり方を反省してくれて嬉しい。俺なんかのこと……好きになってくれて、応援してくれてありがとう」
「大和さん……
「でもゴメン。君とはつきあえない。『好き』とまでは……まだ言えないかも知れない、でも気になる奴がいて」
 大和もまだ計り兼ねている。だから正直にそれを伝えると「何となく、分かっていました」とホームくんは力なく笑った。
「だからこれは僕のエゴなんです。自分のために、前に進めるように、あなたに告白しました」
「フッ、すごい自分勝手だね」
「そうなんですよ、今あなたのその自然な笑顔を見れて良かった」
 彼が、安堵するように長く息を吐き出したところで、「ホーム」「そろそろ時間だよ」と、鮮やかな髪色をした青年たちがヒョコヒョコと非常口に顔を出した。皆、一様に心配を表情に乗せていたので、大和はホームくんの身体をくるりと反転させると、背中を柔らかく押した。
「ありがとね」
……これからも応援して良いですか?」
「もちろん。俺も君を注目してるよ」
「危険人物として?」
「後輩として、そらもう行きなさい」
 走っていくホームくんは年相応に無邪気で可愛らしく思えた。大和が軽く手を振ってホームくんを見送ったところで、彼の人にしては多少粗い息づかいが聞こえて来て振り返った。

<続く>