sugu_yoru
2022-05-24 23:57:15
1710文字
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【いちじろ】僕らと二郎と七日間 三日目②【さぶじろ】

女体化した次男と、モンペになる長男三男。続きます。

「よー二郎じゃねぇか。なんだよ、可愛くなっちまって~」
 そう言って、キャップの上からポンポンと二郎の頭を撫でてくる。そのときに少しだけ背伸びしたのが可愛らしかった。帝統はヒールの高いブーティーを履いていて、それを脱げばきっと三郎より小さいだろう(乱数よりは大きいだろうか)。
「わ~僕のあげた服、着てくれてるんだぁ!」
「あ、りがとな……
「うんうん、とっても似合ってるよ~」
 笑う乱数はしゃがんでいて、いつもは子供みたく感じるというのに、何だかお兄さんというかお姉さんみたく感じる笑顔だった。
「そう言えば、帝統が攻撃を受けたのっていつでしたっけ? 確か先週の日曜日、そして本日も日曜日……
 夢野幻太郎がひぃふぃみぃと日付を数え始めた刹那、バフンと音がして、二郎に詰め寄っていた帝統の身長が急激に伸びた。ホットパンツは明らかにキツそうなボクサーパンツのようになり、サイズが小さいのでそけい部から何かこぼれ落ちそうである。すね毛だらけの健康的な脚がにゅいっと伸びて、履いていたブーティーが風船みたいにバチンッと弾け飛んだ。
 グラリとバランスを失った、健康な青年そのものの体が、かろうじて残ったヒールの上でバランスを崩して仰向けにひっくり返る。内側の太股と短パンとの間に何か見えたが、咄嗟に兄と弟が二郎の片目ずつ手で隠して視界を奪った。
「汚いものを一兄に見せるな! この、文無しギャンブラーが……!」
「俺らにもついてる物とは言え、視覚的にさすがにキッツいな」
 口々に感想を言う兄弟の手をやんわり外して、「帝統、大丈夫か?」としゃがみ込む。差し出した二郎の手を掴む手のひらが大きく、指が平たくて、何だかドキリとした(体温が燃えるように熱い)。
「お、悪いな」
「はいはいそこまでそこまで。まったく、綺麗な夢は儚いものですね」
「あーん、もう戻っちゃったぁ。ポッセに女の子一人居るとか、可愛かったんだけどなぁ」
 飴村乱数が残念がって唇を尖らせると、立ち上がった裸足の男(有栖川帝統)はその頬をむにゅりと掴んで歯を出して笑う。
「やぁあっと乱数の着せかえ人形から解放されたぜ! にしてもお前ら酷いな、女の子いなくても俺がいるじゃん、三人でいいじゃん」
「そら、見ず知らずの女の子がポッセにいるのはどうかと思いますが、あなたが女の子になったなら話は別ですよねぇ乱数?」
「うん、帝統だったらどんな姿でも僕らは受け入れるよ」
「お前ら……!」
 ジーンと感動している帝統のモッズコートのチャックを、無言で引き上げた三郎が兄弟に振り返る。
「先程の話を要約すると、二郎が被弾したのは先週金曜日」
「うん、だからあと五日はこのままっつーことだな?」
「やった! 俺今週学校行かなくて良い?」
「三郎」
「わかっています一兄。二郎の勉強が遅れないように、僕が特別なプログラムをこのあと用意しますので」
「宿題ってこと? ゲー、勘弁してくれよ三郎……
 二郎が足を揃えてしゃがみ込むと、三郎が何だかぐらりと体を傾けてゴクリと生唾を飲み込んでいた。着てきたシャツの首元が撓んで、胸元が見えてしまっていたらしい。二郎の帽子をヒョイっと脱がせて、一郎がその部分に押しつけて隠した。
「おやまぁ、思春期ですねぇ」
「念の為、ジジイのところ行こうか帝統。このあと何か後遺症があると僕らが困るし」
「わかるぜ、前轢き逃げされたときよぉ、全然大丈夫だと思ったらあとで腰とか首が……
「あなたの例え、いつもとてもわかりやすいですよね」
「だろ?」
「馬鹿ですねぇ、バカにしてるんですよ」
「あぁー?! 何だってぇ?!!」
 やいのやいのと、帝統を中央にしたポッセ三人組はその場からいなくなってしまった。二郎は違法マイクを拾い上げ、兄と弟に振り返ると家路についた。その日のうちに、『帝統に着せる予定だったやつ』と手紙つきで、飴村乱数から追加の洋服が山のように届いた。
 三郎がそれをまた顔を白黒させながら仕分けにかかっているのを尻目に、二郎は欠伸をして先に寝床へと向かった。明日からは暫く学校へ行かない日々が始まる。

<続く>