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sugu_yoru
2022-05-02 17:53:37
1861文字
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【天ヤマ】若返る二階堂大和の天ヤマ3
アイナナ 天ヤマ 勉強中。ニカヤマさんが高校生のころの姿と心に戻ってしまいます。
「その写真家、好きなの?」
「前テレビで見て、四年後だったら見たことない写真集が出てるかと思って
……
そうしたら十さんが『天が持ってるよ』って教えてくれたから」
「それは良かった、僕も彼の写真は好き」
でも、未来を先取りするようなこの行為に、彼は後ろめたさのようなものを感じないのか? 天はそれが急に気がかりになったが、若い大和はそれを察したのか自ら口を開いた。
「俺の今の状況って、高校生の俺と大人の俺が時空を超えて入れ替わったとかじゃなくて、一種の『記憶喪失』なんだと思う」
「十八歳から二十二歳までの記憶をなくして、それで身体が若返ってしまったってこと?」
「そう。だからもとに戻るとき、若返っていたころの記憶はなくしてしまうのかも知れない」
「
……
なぜ、そう思うの?」
「俺が読むフィクションが大抵そうだから」
そう答える幼い二階堂大和は、歳のわりに大人びて見える。和泉一織や天だって相当なものだが、自分たちより、どこか乾いた、諦めを感じさせる達観さだった。途端に天は胸を掴まれた心地になる。気づけば腕を伸ばして、それほど対格差のない大和を抱きしめてた。
「
……
不安だったでしょう、自分だけ取り残されたみたいで」
「みんな優しいし、それほどでもない」
「消えないよ、今キミがここにいた記憶を、キミはきっと忘れない」
「そんな未来のこと、約束できるのかよ」
腕の中で俯いて、九条天の胸元を握りしめた大和が、ゆっくりと体重をかけてくるのに、幸福でどうにかなりそうだった。「そうでなかったとしても、ここにいたキミのこと、僕は絶対忘れない」と重ねて言った言葉が、妙に熱っぽくなった。
* * *
その日から、若い大和は九条天のところで一緒に眠るようになった。実は劣情を抱いているのは、成人した二階堂大和だというのに、このどこか危うげな雰囲気の、硝子みたいな少年を放っておけなくて、甘やかせるだけあまやかしている。
「すっかり天に懐いたね」
大和が風呂に入ってる間、エプロン姿の十龍之介が微笑みかけてくる。「龍のおかげだよ」と感謝はしたものの。「だって、あんなの放っておけなくない? 本当は愛されてるのにさ、それに気づきもしないで不安そうにして
……
」と照れ隠しでつらつら話しはじめてしまう。龍之介の前だとこうだから困る。これが『甘える』ってことかと自覚して、もっとあのメガネの少年が自分に甘えてくれたらいいのにな、とも思う。
「天、今までだって寄り道とかあんまりしなかったけどさ。カフェとか本屋にも寄らずに最近真っ直ぐに帰って来るでしょう? 大和君、それ嬉しそうにしていたよ」
「
……
もっと僕に依存して、抜け出せなくなればいいのに」
「え?」
「何でもないよ。あ、楽が帰ってきたみたい」
「ただいま」
ガチャガチャと少し乱暴に玄関が開く音がして、少し寒そうにした八乙女楽が帰って来た。「うぅ~大分冷えてきたな、雪が降ってきた」と言いながら頭や外套についた雪を龍之介に払ってもらっている。
「風呂、誰が入ってる?」
「ここにいない人物くらい、バカでも分かるでしょう?」
そう言うと、「ふ~ん」と答えて、分厚いマフラーを外しながら部屋を出て行く。てっきり、自室へ戻ったかと思っていたら、風呂場の方から大和の爆笑が聞こえて来た。天と龍之介が驚いて駆けつけると、狭い湯船に、八乙女が抱えるようにして大和と浸かっていた。
* * *
「
……
何か怒ってる?」
大和の枕は九条天の部屋に置きっ放しにはされていない。毎朝起きるときに大和が自室へ持ち帰っている。天の部屋に訪れることを、彼の意思だと確認出来て、それが何だか良かった。
「別に」
天はベッドの壁側にビーズクッションを置いて、そこに座り込んで文庫を読んでいる。チラリと入り口に佇む枕を抱きしめた大和を見て、そう答えた。冷たい返しに、大和はそこから一歩も動けなくなってしまって、天はため息を一つつくと、文庫を傍らに置いた。
「おいで」
空いた腕を広げて、右手を差し伸べると、おずおずとそれに縋るように入室してくる。ベッドサイドまで来ても、大和が目をあわせようとしないので、天の方は根負けして吹き出してしまった。それにホッとする少し幼い青年に気づいて、掴んだ腕を思わず引き寄せてしまった。
「わ」
「
……
」
彼の眼鏡が天のパジャマの前で斜めにズレるのを見下ろして、ハッと掴んでいた手のひらを解放する。
「ご、めんね」
「うん、別に良い」
<続く>
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