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sugu_yoru
2021-12-05 20:03:15
2037文字
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【ヒプ】ハマシブクロ2
ハマの1番手、ブクロの2番手、シブヤの3番手 in ハマ。
うっすらさまじろ感有。おしまいです。
※中の人のエピから妄想しています。
※「2nd Division Rap Battle」以前。
※勉強中ゆえ、何か不備があったら申し訳ないです。
「なんか適当に頼めや、
……
奢ってやるから」
まるで歌い出しそうな若者二人に、でかいテーブルの上を滑るようにメニューを投げつける。このままだと歌わされそうな気がした。口の中に食べ物をぶち込めば、それなりに静かになるだろうと左馬刻は踏んだ。
「マジで! いーのか?!」
にゃんにゃんぉ! とばかりに飛びついたのはギャンブラーの方で、山田二郎の方は少し遠慮がちに帝統の肩越しにメニューを覗き込んでいる。こいつ
……
、あの覇気のないリーマンには寿司をせびっていたくせに、俺様には甘えねぇのかよなどと思って機嫌が悪くなる。
すると、壁の電源コードに充電していた二郎のスマートフォンが、結構な長尺で幾度もいくども震え、その振動でテーブルから落ちた。宙ぶらりんになったそれを右手でキャッチして、覗き込んでから二郎は呻いた。それは少しだけ『悦』を孕んでいる。
「あ~三郎からだわ、全部」
スマフォをスライドした二郎が困ったように呟くのに、顔をビッタリ寄せて、帝統もそれを覗きこむ。もし自分の可愛い妹が、野郎にそんなことされたとしたら秒で引き剥がすが、自分より低いとはいえ両方長身の野郎だからグッと堪えた。
「参ったなぁ、アイツ起きて待ってんのかも」
「三郎って、もう中学生だろ? こんなデッカい兄ちゃん心配して待ったりするかねぇ?」
「それがなぁ、待ってたりすんだよ。昔兄ちゃんがずっと夜遅かった時期があって、俺がそうでも何つーか
……
」
「『過敏』になってるっていうか?」
「うん、そう」
「
……
」
慣れない組の仕事で遅くなった時、合歓に連絡をしそびれたことがある。もう絶対に眠っているだろうと静かにマンションの扉を開けると、玄関の真ん前で、ピンク色の毛布の中、妹が不安そうに瞳を開けた。そのルビーみたいな瞳が自分を見上げた時に、罪悪感に襲われて、崩れ落ちそうになったことが思い出される。
「おい」
「あ?」
「え? どーしたの?」
「前言撤回だ、お前ら二人とも夜明け前に家まで送り届ける」
そう言ってスマフォを耳に当てると、「え~まだ歌ってないのに!」「まだなーんにも食べてねぇのに!!」と若い男たちが口々に文句を言うのをいなしながら部下に指示して車を手配した。「来るまでまだ時間あんだろ、食いもん頼んどけや」と言ってやるが、ブーイングはおさまらない。
「もうこうなったら、左馬刻が歌うの聞くまで俺ら帰らないよなー? 二郎?」
「え、あ、うん」
ギャンブラーに肩を組まれた二郎が、窺うようにこちらを緑と黄色の瞳で見上げて来るので、二人からリモコンを奪い取った。昔、どこにも行く宛がない時に、合歓とカラオケ屋に逃げ込んだことがある。彼女が望むので、ディズニーの曲を幾つか歌ってやったことを思い出してそれを入れた。
『A Whole New World』。いつもは合歓が一緒に歌ってくれた。しかしそれを左馬刻は一人きりで歌いきった。それまで騒がしかった若造二人は、急に借りて来た猫のように大人しくなる。そうして車が来るまで食べれる物を食べたいだけ食べると、大人しく送迎の車に乗り込んだ。
有栖川帝統は毒島メイソン理鶯のキャンプ地近くで放り出し、二郎と二人、後部座席で並んで車に揺られている。沈黙に堪えきれなくなったわけではないが、「飯は足りたか?」と低く尋ねる。すると、それまでまるで大人しくしていた二郎が、ポソリと口を開いた。
「俺、練習する」
「はぁ?」
「『アラジン』のあの歌。一人で歌うの寂し過ぎるもんなぁ」
言われて咄嗟に内容を理解できなかった。でも山田二郎の意図に気づいて、火を点けかけた煙草を箱の中に戻す。そして思わず身体を揺らして笑い出してしまった。
「お前が『ジャスミン』を歌うって?」
「なー
……
!」
「デッカい『ジャスミン』だなぁ、そりゃ」
二郎は屈託なく笑う碧棺左馬刻に一瞬見とれたように黙り込んだあと、「んだよ、せっかく俺が
……
」と唇を尖らせてから小さくクシャミした。左馬刻はこの後車を降りる用もないもので、黒いレザーの上着を脱ぐと、男子高校生に投げて寄越す。
「上手く歌えるようになったら、返しに来いや」
笑いながらそう言うと、二郎はプリプリと憤慨しながらもそれをスカジャンの上から羽織った。そのまま萬屋の前に彼を落とす。車が見えなくなるまで二郎はその場に立っていてくれたが、その頭上で萬屋のビルが次々と点灯するのが視界の端に見えた。
数日後、クリーニングされたレザーの上着が、火貂組の左馬刻の元に届けられる。菓子折りと『二郎がお世話になりました』という手書きではないメッセージカードがついていた。恐らくこれを手配したのは山田三郎だろう。
左馬刻は、山田二郎が歌う『A Whole New World』が聴けないことを少しだけ残念に思いながら、ちゃんと手紙の主に兄を届けられたことに満足して、こっそりと笑みを零した。
<おしまい>
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