sugu_yoru
2021-11-28 19:21:50
2520文字
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【天ヤマ】大和さんが後輩アイドルに告白される話2

アイナナ 天ヤマ 勉強中 モブが出ます。

「ミツ、逢ったことあんの?」
「今デヴューしたてで、色んな番組引っ張りだこだよ。俺が一週間に一度帯番組の料理コーナーのアシスタントやってるだろ? あれ大和さんも知ってると思うけど収録でさぁ。ゲストで全員来たんだよ『シトロエン』」
「へぇ、なーるほど」
「大和さんも今ドラマの番宣でそこら中のバラエティ番組出てるだろ。また逢うこともあるんじゃないの? 大丈夫?」
 そしてその和泉三月の読みはひたすら当たっていて、大和はホーム君にそれから猛アピールを受けることになる。

「大和さん、今度こそサインを」
「あー、ドラマのノベルティにサイン書いてきたからそれでも良い? トートバッグなんだけど」
 その場で彼の私物にサインするのが嫌で、二度目に断ったあと和泉一織のアドバイスで用意したものだった。一織も彼の話を聞いて、どこか警戒していた。

「いいですか? 二階堂さん。絶対に二人きりにならないように努めてくださいね。彼からの好意が明らかな以上、写真を撮られた場合、面白可笑しく何を書かれるか分かったもんじゃありませんから」
 例え三人でいたとしても、六弥ナギの存在を消されてしまった十龍之介の件を思い出して、二階堂大和はホーム君のことを避けにさけている。
「イチー、お兄さん『好きな人がいるから』とか『つきあってる人がいるから』とかホーム君に言っちゃえば良いと思う?」
「あなたバカですか? 相手を追求されるでしょうし、断る理由によっては彼の性的マイノリティを否定したと捕らえられる危険性だってありますし、他の誰かとの噂をばら撒かれてしまうかもしれません」
 寮のソファで十七歳に泣きつくと、参考書を片手に淡々とそう返された(それでもスラスラ答えられるということは、それなりに大和のことを考えてくれていたのだと思うと有り難い)。大和は頭のてっぺんを一織の太腿に擦りつけるようにソファに寝そべって背伸びした。
「う~ん、じゃあお兄さんどうすれば良いわけ?」
「一人にならないようにしてください。個人情報はできるだけ断って。ファンに対する態度と同じで問題ないです」
「今まで通りってこと?」
「そうですね、だって普通のファンの方たちって、私たちに個人情報を聞いたり、プライベートに誘ったりしないでしょう?」
「まぁ、そうか」
 ぐりぐりと太腿にまた頭を擦りつけると、左腕を少し下ろして大和の前髪に触れようとしてすぐ引き戻した。「……い人ですね」と思わずと言った風に呟くので、「はぁ?」と聞き返してしまって本を顔の上に被せられた。
「ぶ、イチ。何すんのよ」
「まぁ他にヘルプを出しておきますから。あなたは今まで通り油断しないでください」
 その一織の言葉は、次の日にはもう実証されることとなる。

「話は聞いたぞ二階堂」
「へぇ?」
 そんな最中、また一人でテレビ局へ仕事で来ていた大和の元に現れたのはTRIGGERだった。ノックで楽屋の扉を開いた瞬間に、ドアップでイケメンが三人並んでいたものだから驚いた。
「もうスタジオへ移動するでしょ? 来て」
と九条天に手を引かれて、廊下へ連行される。そのまま、前で手を引く九条天、後ろに十龍之介と八乙女楽が並ぶという、MEZZO”サンドウィッチより強固な体制で大和はスタジオに向かう羽目になる。
「あー……お前さんたち」
「うん、歌番組だった。下の階にシトロエンさんたちがいるから、念のため」
 廊下がエレベーターホールに差し掛かった時、ドアの向こうから現れたホーム君が「あ」と小さく声を漏らす。四人はスタスタとそのまま廊下の端の階段へと向かって行った。
「うわー、本当に来たな。この階にアイツ、用なんてないだろ?」
「ちょちょちょ、エレベーター乗るんじゃないの?」
「見たでしょ? 路線変更。このまま階段から行くよ、運動にもなるし。まだ若いんだから」
 そう天が言って、インベーダー・ゲームみたいにスタッフを縫って進んでいくと、廊下の端にある階段を降りて行く。大和はもう恐ろしくて振り返れずにいたが、目の前を歩く天が一度だけ振り返って来た道を眺めると顔を戻した。
「まだ見てる」
「ふわ~、熱烈だねぇ」
 階段を降りながら十龍之介は感嘆の声をあげた。「立ち止まって、話してあげたら喜ぶんじゃないかな」だとか、根本を揺るがすようなことを言ってくるので、情報伝達の曖昧さに、大和はわずかにため息を吐いた。
「龍の時みたいに、二人でいるところを……いや二人以上でいるところも切り取られて写真を撮られたら困るでしょう?」
 九条天がすらすらと大和の代わりに危惧する事案を述べてくれて、三人は無事に大和の収録先の階に行くことができた。「お前さんたちどうするの?」と問うと、「楽屋に戻って、帰るよ」とのことで恐縮しきりだった。
 大和はその後、つつがなくバラエティ番組の収録を終えて、恐らく、気が緩んでいたのだと思う。マネージャーが大和一人だけを迎えに行くと言ったが、帰りに夕飯を一人で食べることにしてそれを断った。
 TRIGGERとシトロエンが出た歌番組はとっくに収録が終わっている。テレビ局の裏口に一人で出て、わずかに欠伸をしていると、ガサガサッと生け垣から飛び出した人物がいた。「あ」と共に、「しまった!」と思った。
「大和さん、お疲れさまです! 奇遇ですね」
「ホーム君……
 何でこんな時間に? と顔に出ていたのだと思う。「打ち合わせが長引いてしまって」と照れ笑いする彼は、今まであんなに警戒していたことに罪悪感を抱くような純粋さがあった。外気の寒さに、鼻の頭を赤くしている。もしかしたら大和をここで、ずっと待っていたのかも知れない。
……寒くなかった?」
「え?! いや来たばかりですので!!」
 大慌てでそれを否定する彼は、ちら、ちらりと道路の方を気にするようであった。大和は首を伸ばしてそちらの方を眺めて、目の前の青年に顔を戻す。するとやはりと言うか、案の定誘われた。
「あの、そのよろしかったらこの後ご飯を食べに行きませんか?」
「あー……
「僕もうお腹ペッコペコで〜」

<続く>