sugu_yoru
2021-11-28 17:45:04
2402文字
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【天ヤマ】大和に触りたがる九条天3

アイナナ 天ヤマ 勉強中。妙な関係性の二人。続きます(次回最後)。

「いよう」
 元気一杯、殊更騒音が発生するようにドタバタと。入室すると即座に鍵をかけた(その音も敢えて聞かせようと思った)。振り返った九条天はぎょっとしたようだった。
 いやに広い楽屋。そこで九条天が割かしはやく待機していることを大和は知っていた(八乙女情報だ)。TRIGGERの残り二人が到着するまで一人だから、是非かまってやってとのことだった。
「何で君、来たの?」
「え? いつものお前さんに、同じ質問していいの?」
 九条天が不貞腐れた猫みたいな年相応の表情を浮かべるもので、大和は嬉しくなって少し笑いながら腰を下ろした。すぐ彼の隣の丸椅子だ。
「そうだなぁ、お前さん暫く俺んとこ、来ないと思ったから」
……
「二人で出かけるような間柄じゃあないし、こうするしかないって思って」
 そこまで吐露して、九条も同じ気持ちだったんじゃないかということに気づいてハッとした。ハッとはしたが、九条は大和を視界の外に追いやって文庫本を読んでいる。大和は焦れて、言葉を重ねる。
「何で、来ないだろうって思ったの?」
 てっきり無視を決め込んだと思った九条が、活字を追っているフリをしながら聞いてくる。その俯いた耳がまたじわじわと赤くなっていた。大和はそれに苦笑して右手を伸ばす。薄く可憐な横髪に触れる。
「俺の方から触れたから、だろ? 前だってそうだった」
「前のは、君が突然舌何て出してくるから」
「毎回、ちゅっちゅっちゅっちゅ顔に触れてくる方が突然だと思いますけど~?」
……
 九条が黙り込む。困らせたくて来たわけじゃあないのにな。そう思って髪の毛の上から頭を何度も優しく撫でた。すると、まるで取り零すように九条天が吐露し始める。
「確かめたかったんだよ、君のこと僕がどう思っているのか」
「自分の気持ちがわからないってこと?」
「そう、『触れたい』『触りたい』って思うけど、相手は君だし、良くわからなかった。やりたいことやれば、満足するかと思ったらそうでもないし、どんどん欲が出て……
 撫でればなでるほど言葉が零れ落ちてゆく。なんだか距離が遠いと感じたのは大和の方で、椅子を引き寄せると体温が感じられるほど真横に移動した。
「自分が、君に関してはすごい欲張りになってたって気づいた。陸相手にも嫉妬するくらいに」
 そこまで聞いて、大和は椅子の上にのしりと膝で立ち上がった。両手の平で九条天の小さい頭を耳の辺りで掴むと、上向かせる。
「俺も試したい」
「はぁ?」
「俺がお前と先に、進みたいのか否か」
 そう早口で言うと、開いている唇に大和のを斜めに重ねた。すぐに舌を突っ込むが、ビクリと背筋を逸らせた九条天は、今度は大和から逃げたりしなかった(いや、逃げようがなかったのかも知れない)。
 口の中が熱い。九条天は外側はサラッと体温が感じられないが、中はマグマみたいに熱いんだな……と、舌を擦りつけながらぼんやりとそんなことを思う。
 大和の口内の方が温度が低く、熱い舌がこちら側に差し込まれて、天井を舐められると腰が震えた。力が入らなくなって椅子に再び腰掛ける。それと共に口づけは離れてしまって、九条が口内にたまった唾液をんくりと飲み下す小さな音が楽屋に響く。
 マグマみたいな情熱は、彼の仕事への情熱に似通っているなと思う。いつの間にか乱れた息を整えていると、これまたいつの間にかこちらの腰をしっかり掴んでいた腕が動いた。
「あ、え?」
「君が悪い」
 そのまま、怪我をさせないような緩やかな、でも有無を言わせない動作で、楽屋の床に寝かせられる。あっと思う間もなく噛みつくように上から口づけられた。
 今度溢れた唾液を何度も飲む羽目になったのは大和の方だったし、熱い自分よりわずかに小さい手のひらが、衣装の下に潜り込んできて震えた。それが、わずかに汗ばんだ肌を、馴染ませるように撫でてゆく。
「ぅん~……っ」
 これ以上はまずいと大和は唸って、名残惜しいが九条の細い肩を押し返した。唇の端からたらりと名残が垂れる。やはりそれにわずかに傷ついた顔をする。繊細な男だなと大和は思う(人のこと言えない)。
「九条……
「君は、わかった?」
 九条天の白目が赤い。本番大丈夫だろうかと顔に手を添えると、その手のひらを上から手で押さえられた。
「僕はわかった、君のこと好きだ」
「お、俺も~」
……なにその軽さ」
 べちりと顔面を叩かれて、大和は苦笑する。
「お前さんのこと好きだし、そういう意味でいっぱい触りたいし、最後までしたいと思ってる」
「そう」
「そうだよ、でなきゃとっくに拒否してる」
 せっかくの甘やかな雰囲気なのに、九条が立ち上がってしまうので「どこ行くの?」ってまるで恋人との別離みたいな声が大和から出た。九条天は肌というはだを真っ赤に染めながら「……お手洗い」と何とか絞り出して、カツカツと楽屋を出て行ってしまった。
 大和は急に気恥ずかしさや何やらで脱力し、楽屋の床に横に倒れる。ポケットの中のスマフォには、「もうすぐリハなのに、どこにいるんだ?!」と三月から鬼のようにラビチャが来ていた。

* * *

「んで」
「はい」
「それで、どーなったって?」
 居酒屋、二人呑み。和泉三月だけには諸々話しておこうと考え至った上での二人呑みだ。セクハラされている相手が彼には分かっているし、成人している彼には言いやすいと思った(逢坂壮五は追々だ)。
「おおお、おつきあいを」
「することになった?」
「なるわけないでしょ、相手未成年よ?」
 ぐびぐびと水みたいにビールを飲み下す(照れ隠しだ)。それを見ながら先に真っ赤に顔を染め上げた三月が質問してくる。
「てかぁ、いつから好きになったんだよ」
「いつの間にか」
「どこを好きになったんだよ」
「気づいたら」

<続く>