sugu_yoru
2021-11-28 00:13:36
2555文字
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【天ヤマ】大和に触りたがる九条天2

アイナナ 天ヤマ 勉強中。妙な関係性の二人。続きます。

「なぜ、マネージャーと私にすぐ報告しないんです」
「うわ、イチいたの?」
 ダイニングテーブルにいつの間にか座って、環と同じように課題を広げていた一織に吃驚して、大和はビールの缶を取り落としかける。環が馬鹿でかいため息を吐いた(三月は笑って、自分もビールの缶を開けた)。
「いおりん、俺が宿題サボらないかあすこで見張ってんの」
「部屋でだと、あなた絶対やらないじゃないですか。二階堂さんは今からやっと夕飯なんですから邪魔しないでこっちへ来てください、はやく」
「みっきーだってさっき一緒ご飯食べたばっかじゃん」
「兄さんは、お年寄りの晩酌につきあってあげてるだけですよ」
「お年寄りって……
「ショック受けてるとこ悪いけどさ、そのセクハラの相手ってスタッフ? 演者?」
「えんじゃ……
 三月の質問に、どんどん特定されてしまうなと思いながら、大和はビールを飲んで餡掛けの揚げ出し豆腐を食べ、隣で雛鳥みたいに口を開けている環にも一口あげた。大和の返答に三月が眉を下げる。
「十さんとかも、女優さんにいっつもこっそり触られたりしてるもんな」
「あれのどこがこっそりですか。……二階堂さんの相手は男性ですか? 女性ですか?」
 一織の質問に、「相手が男性」という可能性に至って、三月と環が真っ青になった。おそらくベテラン俳優のおじさんたちの脂っこい手のひらが、自分たちのリーダーに触れるのを想像したのだろう。
「大和さん、俺らがいる時はそんなことがないように注意して見ててやるからな!」
「おー俺たちヤマさん守る!!」
「二階堂さん、夕飯が済んだらちゃんとお話を聞かせてくださいね」
という一織の追求は、ダラダラと三月と晩酌をしたのち部屋へ飛び込むことで逃れ、相手が九条天だと打ち明けられない大和は寝転がり、考える。このままではいけないと、それだけは漠然と感じられた。

 休日、仕事。休日の方が学生のメンバーも含め七人揃うので朝から雑誌の撮影だ。北の地方で新雪をバックに撮るとかで、寒いところが得意なナギは車内からもうはしゃいでいた。窓にピッタリ張りついて日本の冬を楽しんでいる。
 心配なのは七瀬陸だったが、常時吸引する薬は朝一吸わせたし、和泉一織によって着せられ過ぎて布の塊みたいになっていた。少し暑過ぎるのか、顔色まで髪色のように真っ赤になっている(大和はそれを見て苦笑した)。
 現場に到着すると、TRIGGERが先に撮影していた。そう、今回はTRIGGERも一緒のコンセプトでの撮影なのだ。白い世界にいる黒い衣装の三人は恐ろしいほど映える。IDOLiSH7も今回グレーが基調の大人っぽい衣装だった。
 IDOLiSH7も撮影に入るが、位置やポーズを決める段階では、七瀬陸のところにはスタッフに立ってもらって、個別の撮影の最後に本人を撮り、集合写真の本番を撮る手はずになった(TRIGGERはそこで合流する)。
 自分の撮影は終わったが、陸が撮る間は外で待っていようと、白い息を吐き出しながら大和は椅子に腰をかける。すぐ始まると思った撮影が、日の角度が変わって調整が必要となり、その場で待たされている陸がひどく寒そうだった。
「リク」
 こいこいと手招きすれば、トテトテとやってくるので、座ったまま脚と腕を広げて「ん」と彼を招き入れる。「わーい」と脚の間に腰を下ろした陸をコートの両脇で包み込むと、熱くて全然飲めなかったホットココアを握らせる。
「冷めるまで持っといて」
「え、飲んじゃ駄目ですか?」
「飲んでもいいよ」
 そう答えて、七瀬陸の腰に両腕を回したところで、鋭い視線に気づいた。少し離れた火を焚いたところでTRIGGERが待機している。その三人の中で、九条天だけが真っ直ぐに大和と陸を見つめている……いや睨んでいる。
……!」
 「別にお前の弟喰ったりしないよ」という意味を込めて腹に回していた両腕をあげると、それと同時にやっと陸が呼ばれた。「大和さん、全部飲んじゃった」と眉を下げる陸に「またもらうから」と笑いかけて、送り出す。陸がいなくなったら急に寒くなって、大和は一度小さいくしゃみをした。
……甘やかし過ぎじゃあないの?」
「お前さんに言われたくないなぁ」
 気づいたら同じく着込んだ九条天が目の前に立っていて、空になった紙コップを奪い取ると、ワルツを踊るような仕草で腰をかけた、何と大和の脚の間にだ。寒くはなくなったが、代わりに体温がぎゅうぎゅうに上がって暑いほどになった。
「っ……
「なるほど、暖かいね」
 今度は腕を回さなかったので、不満に思ったのか九条天は大和にぴったり背を預けるように寄りかかってくる。陸とは違う、自分たちの寮と異なるシャンプーの匂いに、ますますと体温が上がる。大和は行き場のない両腕をダラリとその場に下ろす。
 そんなことよりドッドッドッドッと鼓動の音が速まってしまって、天にそれが伝わっているかと思ったら死んでしまいそうになった。だから、何とか唇を動かして、「今日、皆さんいらっしゃいますけど?」と自分たち以外の存在について言及する。
「陸にだって、こうしてたでしょう?」
「陸とお前さんとは、違うよ」
「僕は他所(TRIGGER)の子だから?」
「まぁ、そうだなぁ」
 そう答えて目の前を見下ろすと、分厚いコートに覆われた首筋が見えて、それがいつぞやの彼の耳みたいに赤かった。だからつい手が伸びた。彼の薄い色の髪の毛を撫でると、それが合図みたいに九条天は立ち上がった。
「あ、天にい〜!」
と無邪気に手を振る弟に、我らがマネージャーからコートを受け取り甲斐甲斐しく出迎えている。大和はそれを見つめてコキリと首を鳴らすと立ち上がる。TRIGGERと合流した際に、八乙女が「お前がこのあいだ質問した意味分かったぜ」と言って揶揄って来た。
「大和さんのセクハラ相手、分かった」
と帰りの車で三月にも言われて、やはり一度、九条天と話し合う必要があると二階堂大和は強く感じる。自分と、彼との気持ちのためにもだ。三月の言葉に、環が「え、嘘! 誰ー?」と騒いでいたが、一織も相手に気づいてしまったようで、聞こえるぐらいのため息を零された。

<続く>