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sugu_yoru
2021-10-03 18:48:31
2561文字
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【天ヤマ】大和さんが後天性女体化するヤツ3
アイナナ 天ヤマ 勉強中 続きます。
「和泉三月」
「そのフルネームの呼び方は、九条?」
「うん、そっちは今終わり?」
「そうそう、俺だけこれから寮戻るんだ。最近大和さんが毎日ご飯作ってくれてっから、今日くらい休んでもらおうと思って」
おそらく和泉三月は、九条天が二階堂大和の事情を知っていることを知っていて、それで名前を出したのだと思う。天はテレビ局の廊下をパッパッと見渡すが、二人以外人は歩いていなかったので落ち着いて三月を見下ろす。バックパックにキャップ、眼鏡姿だった。
「大和さんに毎日連絡してくれてるんだって? ありがとなぁ」
良い笑顔だが何だか少し牽制にも聞こえる。天はためらったが「彼は元気?」ととりあえずジャブのように聞いてみた。和泉三月は「今日の九条の衣装豪勢だなぁ〜」と一瞬かわしてから、こちらに真っ直ぐ向き直って笑顔を見せる。
「元気げんき。身体はね、健康そのものみたいで」
「医者に見せたの?」
「騒ぎにならないように、社長が懇意にしてる七十代のおじいちゃん先生に診てもらったよ。個人でやってる診療所の。マネージャーが小さいころから診てもらってるって。口は堅いし、俺たちのこと全然知らないから」
「身体に問題はないんだね」
「そう。ナギが『シークレットブーツ履けば、出演ノープロブレムじゃないですか?』とか言ってけどさ、顔も可愛くなっちゃってんだよね、おっさん」
「うん、可愛くなってた」
思わず力強く頷いてしまって、三月に歯を出して笑われた。
「見た人みんなそう言ってるよ、百さんなんて『服買って来るよ〜』ってはしゃいじゃって皆に止められてた」
「もしかして、Re:valeさんたち来たの?」
「休止発表のその晩に突入して来て、大和さん千さんに姿を見せたくなくて自室に籠ちゃってさ、天照大神(あまてらすおおみかみ)みたいになっちゃって」
「何で呼び出したの?」
「あ、ビールビール! あと、ナギと環と陸が踊った」
和泉三月が笑って答えたところで、廊下をスタッフの集団がこちらへ向かって来る。「それじゃあ九条!」と察した三月が手を振ってその場を離れて行くのに、天は追い縋って二階堂大和について聞けなかった。
「オフの日でも、逢いに来てやってよ」
向日葵みたいな笑顔に、後ろから来たスタッフに揉まれながら「
……
うん」と素直に頷くしかなかった。
その日の夜、実家の蕎麦屋を手伝って来た八乙女楽が、「おい、見て来たぞ、二階堂」と言って洗濯を正座で畳む天の脇に胡座で座り込んだ。「楽、手ぇ洗ったの?」とエプロンをした十龍之介も顔を出したが「龍も座れ」と言って手招きした。
「そっとしておかず、わざわざ見に行ったの?」
「蕎麦注文されたから行ったんだよ、アイツ
……
。普通の顔して出てきやがった」
「? ? 話が見えないんだけど」
「二階堂、女の身体になってたんだよ」
「はぁ? え?! 手術したってこと?! もしかして、身体と心が一致しなくて、大和くん
……
ずっと悩んでたってこと?」
「
……
ボクから話すよ、実はロケに泊まった日の夜にね
……
」
「そうだったんだ
……
」
九条天が話し終わるころには、TRIGGER三人正座して畳まれた洗濯物を取り囲んでいた。八乙女が天を睨みつける。
「何で言わねぇんだよ」
「勝手にペラペラ言えるような内容?」
「天はその日大和くんと一緒にいたんだよね? 何か心当たりはないの?」
「ロケ地の名所巡って美味しいもの食べただけだから、正直ないんだよね」
「夜の飲み会はどうだったんだ」
「地元のお酒、たくさん飲まされていたけれど。こっちの駅でも売ってるような名酒ばかりだったから、中身が異なってなければ問題ないと思う」
「大和くん、ずっと寮にいるんだよね。俺、逢って来てもいいかな?」
「興味本位だったら推奨しない」
「そそそ、そんなつもりじゃないよ!」
「天、龍だって野次馬根性じゃないって分かるだろう? 寮に用があるならいいんじゃねぇか?」
「本人に聞きなよ、ラビチャしてるんでしょ?」
「そ、そうだね。て言うか言いそびれたけどご飯できたんだよ、シチュー。あっため直すから楽はまず手を洗って来て」
「オウ! あれ、天どこへ行くんだ?」
「洗濯物、それぞれの部屋に運んで来る」
そう言って、真四角に畳んだ洗濯物を持ち上げる。龍之介、楽、天の自室とやって来て、自室の扉はパタンと閉めた。充電中のスマートフォンを持ち上げて、大和にラビチャを送ろうとして止めた。あの日別れてから、初めてメッセージを送らない夜だった。
今まで、天のラビチャに大和からの発信でメッセージが来ることは殆ど無かった。いつも天から送り、それに大和が答えて数度やりとりして終わる。そんな毎日でも三週間近く続いた。それを自ら一度怠った、すると、二階堂大和の方から連絡が来たのだ。
『次、オフの日でも、寮に来れる?』
実は件の夜二人は、大和がホットミルクを飲んで眠り、九条天がそっと部屋を出て行くところでは終わらなかった。天はボーイからミルクを受け取り、部屋の主の二階堂大和の体調が悪いことを伝える。帰りは地下駐車場からになると伝えると、スムーズにことが運ぶように尽力してくれると言う。
ベッドサイドに戻って来ると、二階堂大和は起き上がっていて、湯気が立つそれを素直に受け取ってくれた。猫舌で飲めないのであろう。辛抱強く口に運ぶのを待ってやる。
「
……
ボクは部屋に戻ってるから、マネージャーから連絡が来たら着替えて待ってて」
そう言って、ミルクを飲む大和の隣で、小鳥遊紡にラビチャを送る。「一人で大丈夫?」と聞くと「寝るだけだから、大丈夫」と言って、ようやく飲み終わったマグをこちらに押しつけて来た。それを受け取る際に、彼(彼女)の指の震えに気づいてしまって、チェストの上にマグを静かに置くと、シーツを捲って彼の横に滑り込んだ。
「く、じょ
……
」
「大丈夫、何もしないから」
そう言いつつ、小さい頭を首の後ろに手を添えて引き寄せる。身体はきっと、柔らかいだろうから接触しないようにしたが、大和が胸の前に腕を持って来て、自分の胸が天に当たらないようにしてくれた。二人分の体温で、ベッドの中がすぐぬくもる。
<続く>
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