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sugu_yoru
2021-04-26 00:11:19
2316文字
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【ユウレオ】買い食い
キンプリ、ユウレオ。ユウ君に奢ってあげたいレオ。
ユウ←レオ感。
『買い食い』。
北海道にいたころはほとんどしたことがなかった(母親も姉も自分も、お菓子作りが大得意だったからだ)。しかし、高校一年生の二人に道で追いついたりした時なんかは、駄菓子屋の店先で奢ってもらったりしたことだってある。それが何だか西園寺レオにはとても嬉しかった。
さて、今日一緒なのは自分より年下の涼野ユウである。レオは何となく「今日は自分が」ってむんむんと意気込んでいた。ようは年下のユウに奢ってあげるというのをやってみたかったのだ。今日は制服のポケットに、可愛い兎ちゃんの釜口を忍ばせている。
ユウはコンビニやスーパーなどの決算を、ほとんどカードで済ませている(一緒にいることが多いので、レオはそれを知っていた)。通学途中の駄菓子屋にはもちろん、そういった類いのものは使えないのだから、どちらかというと現金派のレオの腕の見せどころではないだろうか?
「レオ
……
、なにそわそわしてんの?」
横を歩く綺麗な少年が、ヘッドフォンを首にずらして、心底心配そうにこちらを少し見上げてくる。レオは隠すのがそれなりに困難なほどウキウキ浮き足だったまま、「ユウくん、喉乾いてませんか?」とスタッカートつきで尋ねた。
「今はあんまり。ミナトがいれてくれたハーブ茶(ティー)まだ少し残ってるし、乾いたらそれ飲むよ」
「そうですか
……
」
とたんにシュンとしてしまったレオを見かねて、慌てはしなかったけれど「何だよ」っとユウは唇を尖らせた。今はもうすっかり減ってしまった子供っぽい動作だったのだけれど。改めてされると少し可愛い。
レオが黙り込んだことを不安に思ったのか、ユウがレオの手の甲に、同じく少し丸っこくて白い拳をぶつけてくる。ちょうどその時件の駄菓子屋の脇だったものだから、レオの手のひらがわずかに揺れた。
「何だ、寄りたかったならそう言えばいいじゃん」
そう言って、店と反対側へそのまま通り過ぎようと心がけたレオの腕を掴むと、強制的に進路を変更させる。ユウは小さいけれど、指先の力や手首の力、腕の力なんかがレオと比べものにならないくらい強くて、たまにびっくりすることがあった(林檎やなんか手で潰せるんじゃないかって錯覚することもある)。
「なんか飲む? 食う?」
軒先をくぐりながら、ちらりと紫色の瞳がこちらを射抜く。たまにびっくりするぐらい尖っていて、それでいて美しくて。その時もレオは思わず胸元をおさえて、その衝撃に耐えようとした。それに気づかずに綺麗な男の子は笑顔を見せる。
「え
……
と、ユウくん暑くないですか?」
「そりゃ九月つってもまだ暑いし、レオは喉が乾いた?」
落ちてきた群青色の髪の毛を耳にかけて、薄暗い店内を物色している。なぜかこちらの指先を掴んでくるもんだから、何となくレオの背中が震えるようだ。意識しないようにすると逆に難しいものだと気づいたのは最近である。
「アイスにしません? 多いようなら二人で半分こできるのもいくつか売ってますよ」
「
……
何だ、レオ。ハジメテじゃないんだな」
「はい」
「あいす? アイス食べたいの?」
その物言いは彼の年齢よりかは幾分か幼くも思えたが、いつだってこちらのしたいことを察しようとしてくれるのは、レオが遠慮がちだったころを覚えているからだろうな。だから、レオはその欲を彼に伏せているのは止めようと思って、顔を上げて年下の男の子をじっと見つめた。
「な、なんだよ」
「はい、私、ユウくんに一度『奢ってやる』っていうのをやってみたくて!」
「ぶっ、なんだそれ」
ユウは、先ほどまでの幼子の気持ちを探るような気配を破綻させて、吹き出して笑った。「もう、笑わないでください」とレオは言ってはみるけれど、なんだか嬉しくて同時にほっとした。
「
……
たく、しっかたねぇな? じゃあ俺食べたいの選んじゃうもんね」
「安いのにしてくださいよ!」
「『奢りたい』って言ってそれかよ、何なんだレオ」
「フフフ、嘘ですよ。一個でも五個でもどうぞ」
脳内で、実家の両親が作ったがま口の中に何枚五百円玉が入ってるイメージする(恐らく大丈夫そうだ)。しかし、ユウが選んだのはシンプルなソーダ味のアイスだった(真ん中で割れるタイプだ)。
「え、それとってもお買得なやつじゃないですか?」
しかしユウはそれを戸惑いなく持って行って、レオも勢いのままそれにお金を払った(自分のは買いそびれてしまった)。店の奥でこじんまりと座っていた老婆が、「また来てね」っと、小さく手を振った。
「あ! わたし自分のを
……
」
「いいって、いいって。お前が言ったんだろうが」
ユウが支払いを終えたレオの腕を掴んで離さない。そのまま店の外へ連れ出されてしまった。確かに「奢る」と言ったのは自分だが、レオが不満に唇を尖らせると、笑ってユウはアイスを取り出した。パキッと氷が割れる音、水色の氷菓が真っ二つに割れる。
「『二人で半分こできるのも』って」
「あ
……
」
「フフ、奢るだけじゃなくって、結局は『コレ』がやりたかったんだろ~?」
そう言って半分になったソーダアイスを渡された。その通りだ、『コレ』がやりたかった。レオはユウより先にアイスを口に運びながら「ユウくんは何ですか? エスパーですかぁ?」と上機嫌で笑いながら先に歩きはじめた。
アイスの量は寮に戻るまでにちょうど良く、あっという間に食べ終わったユウが「暑
……
」と呻いて額の汗を拭った。その猫みたいに細めた瞳を見つめながら、この陽気ではもう一回くらい今年中に二人でアイスを食べれるんじゃないかとレオはこっそり期待した。
<おしまい>
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