sugu_yoru
2021-03-03 12:50:36
2512文字
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【ヒプ】ハマシブクロ1

ハマの1番手、ブクロの2番手、シブヤの3番手 in ハマ。
うっすらさまじろ感有。

※中の人のエピから妄想しています。
※「2nd Division Rap Battle」以前。
※ゲームの寿司ネタ、未プレイ。
※勉強中ゆえ、何か不備があったら申し訳ないです。

 バタバタと倒れている男たちを跨ぐようにして、細身の男が二人立っている。片方がズボンのポケットからスマフォを取り出して見ると「やべー!」と、馬鹿でかボイスを上げた。そばに立っていた緑色のコートの男が、首をコキリと鳴らしてから「どした?」と、彼にしては親身な声色で尋ねる。
「終電行っちゃった……
「マジか、明日学校は?」
「帝統サン、日曜日は学校休み」
「あ、そっかー! 悪ぃ、わりぃ」
 ガハハハと笑って、シブヤのギャンブラーはバシバシと細身の少年の肩を叩く。叩かれている少年は、身長はその男より少し上背だが、明らかに細くて華奢なタイプ。「肺に穴が空くタイプですね」と自己紹介をしたことがある長身の医師を思い出して、碧棺左馬刻は煙草の煙に少しむせた。
 左馬刻のシマであるヨコハマ・ディビジョン。そこにブクロとシブヤの男がいる理由は、少し前に遡る。追っていた裏切り者の幹部を追い詰めたと思ったら、雪崩れ込むように二人が合流してきたのだ。どうも、有栖川帝統のヒプノシスマイクを、幹部の手下がイカサマで手に入れたらしい。
 買い物をしにシブヤを訪れていた山田二郎は運悪く巻き込まれ、そうして取り戻したマイクで幹部、部下もろとも沈めたところだった。「どうすっかなぁ、始発動くまでカラオケかネカフェ行くかな~」と山田二郎は項垂れる。
 左馬刻は「仕方ねぇから送って……」と、部下に電話しかけたところで、「じゃあ、俺も一緒いる!」と挙手した帝統のせいで即通話を切った。「え、いいの?」と山田二郎の方はなんだか少し嬉しそうなのだ。左馬刻が知らないだけで、二人は元々交流があるのかも知れなかった、が。
「はぁ?」
「未成年だけじゃ危ねぇもんな!」
「いや、待てまてマテ、お前いくつだ? 一郎のダボが許すわけねぇだろ?」
「え、俺もう二十歳っスけど」
「兄ちゃんが『帝統さんに迷惑かけんなよ』だって」
「よし! じゃあ行こうぜ」
 ギャンブラーはニカッ! と笑って、ガスリと山田二郎の腰に腕を回すと、そのままヨコハマの夜に消えて行こうとする。思わず早足で追いついて緑色のフードを引っ張ると、「ぐぅえ!」とのけぞった帝統の喉が見えた。火を点けたばかりの煙草がどこかに飛んでいった。
「どこ行くって?」
「だからカラオケとかに」
……何かあったらどうする、俺様のシマだぞ、俺様も行く」
 あとで考えれば、中華料理屋の一室を借りたり、安いホテルを手配してやったり、理鶯のところに送るのだって良い。とにかくそういったことが疲れていたせいか思いつかなかった。碧棺左馬刻は自分のディビジョンで、馬鹿正直に若い二人の夜明かしについていく羽目になったのだった。

 スマフォの電源が切れた二人の代わりに店を探してやって(と見せかけて組の傘下の店舗を選んだ)、せめてもの見栄でVIPルームを取らせた。カラオケに来るなんざ、……二年ぶりくらいだろうか。廊下を歩いて、目当ての部屋に向かう中で、最年少の青年がくんくんと辺りを嗅いだ。
……なんか良い匂いしねぇか?」
「他の部屋の食いもんの匂いとかじゃねぇの? それか、ここアロマっての焚いてあるみたいだぜ」
 入り口で蒸気を出しているシルバーの筒からは、ハーブ系の香りが漂ってくる。「これじゃなくて、もっと甘い感じの」と二郎が続けるもので「そら左馬刻様だろ」と帝統が言った瞬間バッとこちらへ振り向いた。
「悪ぃ、柔らかい感じだったから、お前じゃねぇと思った」
「アァ? どういう意味だコラ」
「わぁ、見てみろひっれぇ~!」
 帝統が目を輝かせてVIPルームに駆け込んで行く。若い二人はとっとと上着をハンガーに掛けて(なんと、左馬刻の上着はギャンブラーが受け取って掛けてくれた)、二郎の方は腰のシャツまで外してソファに置いた。
 スカジャンだけでなく、腰回りのシャツまで解いたので、左馬刻が少し目を丸くしてそれを眺めていると、こちらに振り返った十七歳と目が合った。恥ずかしそうに帽子を脱いだあと、いつもの剣気とオラつきをどこかに落としてきたのか小さく声を出す。
……さっきバトルしたから、なんかあちぃ」
とニコッと笑いかけられて灰がシャツに落ちた。慌ててそれを払うと、相手も自分の屈託なさに気づいてしまったのか頭丸ごと赤面する。左馬刻はこういう時、若い奴をどういう風にかまっていたか思い出そうとして黙り込んだままだった。また、灰が煙草から長く伸びる。
「なぁー、これどーなってんの?」
と、帝統がカラオケの機械のそばにしゃがみこんで声を出したので、山田二郎はまるで「助かった」とばかりに「えー、どれ?」と席を立った。黒髪から覗く、耳が赤い。碧棺左馬刻は急になんだかそわそわした気分になった。十七歳だったころの、山田一郎を思い出すようだった。
 思わず、灰皿に煙草を捻じ入れると、そう小さくない男二人がしゃがみ込んでいる背後に立つ。真上から青いパンツとピンクのパンツが『こんにちは!』していて、有栖川の方だけ腰の辺りを蹴ってやった。
「~ってぇな! 急に何すんだよ」
「見苦しいもん、俺様に見せてんじゃねぇよ」
「あぁ?」
「とんでもねぇ色履きやがって」
「なんだパンツのことか。良いだろ別に、乱数が試供品くれたんだ」
 そう言って、真新しい操作パレットが外せずに四苦八苦する帝統の横から、黒い腕がスルッと伸びてそれを掴んだ。「帝統、これ多分スライド」「おおマジだ」と会話する二人は、両方細身で長身。黒いトップスにパンツは穴だらけという『いでたち』まで一緒だった。
 ピンク色がなんとなく脳裏に残って(まるでキスマークを見つけた時のような居た堪れない気持ちになった)、飼い猫と飼い犬を同時に保護してる気分になった(二郎の青いパンツだってきっと、三兄弟色違いで履いてるのだろう)。
 真新しいカラオケの機能をヤンキー座りで話し込む、『ハタチ』と『ジュウナナサイ』を眺めながら、一番遠いソファにどっかりと座り込む。そういえば喉が渇いた。グランドメニューを開きながら餓鬼どもに声を掛けてやった。

<続く>