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柩木
2023-12-13 22:01:32
2713文字
Public
崩壊:スターレイル
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丹穹|君が傍にいる目覚め
置いて行かれたくない丹恒×置いていくつもりはない穹
宇宙を駆け抜ける列車という性質上当たり前の事であるが、星穹列車での目覚めに朝日はなく、時計を見ない限りは何時かも判断できない。
しん、と静まり返った部屋は耳が痛い程で、ぼんやりとした覚醒の後にゆっくりと頭が回り出す。昨夜、気絶するように眠りについた穹にとっては、眠ってから数分とも丸一日寝ていたとも思えた。
まだ眠気の残る頭で目蓋を開き習慣化した流れでスマホを引き寄せようとしたものの、抵抗力があって腕を伸ばせなかった。逆にぐっと引き寄せられ首筋に柔らかい体温が押し付けられる。それは食むように首筋を弄び、小さく音を立てて離れていった。
「起こした?」
「ん
……
」
穹の背後、横たわった体を背中から抱き締める形で眠っていた丹恒が呻いた。暫くはモゾモゾと背後で動いていたが落ち着く場所を見つけたのかその内大人しくなる。
動いた拍子に穹の腕が自由になった。その代わりというように腰へ強く巻き付く丹恒の腕をポンポンとあやすように叩く。
ようやくスマホを引き寄せ画面をつけると「6:48」の文字。起きるには少し早い時間帯だ。
二度寝してもいいかと思いもしたが、そのまま残っていた未読のメッセージを読む。ただの雑談と、依頼したいことがあるという趣旨のもの。特に依頼のメッセージを重点的に眺める。詳細を見る限り難しい依頼ではなさそうで、報酬も悪くはない。今日にでも受けてしまおうかと考え始めた時だった。
「出掛けるのか?」
先程よりもずっとハッキリした声音が背後からして思わず振り返る。いつの間にか上半身を起こしていた丹恒が、中途半端に身を捩った穹の体の上に覆い被さってきた。肩を掴まれて仰向けにさせられると流れのままに唇を寄せてくるので穹もそれに答える。
ただ肌をくっつけるだけの触れ合いから始まり、次第に深く舌を絡め合う。暫くは深く優しいキスに夢中になっていたが、さすがに腹を撫でるその手を見過ごすことは出来ない。するすると下に向かって伸びていく手の平を止める。
「っ、こら。もう散々したじゃん」
咎められたのを責めるように覆い被さったまま見つめてくるだけで、丹恒はなにも答えずに身を起こした。二人の体に掛けられていた毛布がずり落ちる。
ただ宇宙空間に散らばる星を見せるだけの窓ではあるが、窓枠を囲うように照明が張り巡らされている。睡眠を妨げない程度の薄ぼんやりとした光だ。僅かに得られる光であっても、丹恒の肌を白く染め上げるには充分過ぎる。それに、ただ白いだけの肌ではない。彼の体に散らばる赤色は、情事の合間に穹がつけたものだ。
それに一糸纏わぬ穹の体にも、丹恒の体についている以上の赤が散っている。
「それはそうだが
……
」
穹の鎖骨を通って心臓までをなぞり止まった丹恒の指先。擦れる肌の感触がくすぐったくて身を捩った。昨夜の情事を想起させるに充分な手付きで顔をひきつらせる。
穹としては充分過ぎる程甘やかしてもらったような気がしていたのだが、それでは丹恒は満足できなかったのだろうか。最中は気持ち良さで何か考えている余裕などない穹の頭に一抹の不安が過ぎったこところで、ぽつり呟くように丹恒は口を開く。
「
……
お前はいつもためらいなく駆け出す。俺は一歩出遅れて、時々自分が不甲斐なくなる」
どうやら懸念したようなことはなさそうだが、見下ろしてくる丹恒のどこか剣呑な眼差しは穹を身構えさせた。
「だからいっそ足腰立たなくしてやろうかと」
「
……
冗談だよな?」
「さぁ。どうだろうな」
その方が効率的だと思えば容赦ない手段ですら取って見せる丹恒である。人命救助の折、穹に人工呼吸を試みようとした者と同一人物とは思えない場面も少なくはない。剣呑さも合間って冗談とは思えなかった。
ただでさえ散々啼かされた後なのだ。これ以上は体が持ちそうにない。本当に足腰立たなくさせられてしまうかもと思うと背筋が震えた。
そうさせてたまるか。胸を撫でる丹恒の腕を掴んで勢いよく引っ張れば、不意を突かれたその体はあっさりと傾いた。落ちてきた体を受け止めて、身を起こさせないように抱き締める。胸の内側に閉じ込めて頭を撫でてやれば、特に抵抗はされないだろうと思って起こした行動だった。思惑通り丹恒は穹の腕の中で大人しくなる。
抱き締め、抱き締め返されて。絶対に離してやるものかという気概を丹恒から感じ取る。本音を言うならば信用ポイント稼ぎに行きたい気持ちはあるのだが、この状態の丹恒を放っておけるほど穹は薄情でもなかった。
穹の上から一向に退く気配のない丹恒は、再び眠るでもなく穹の体を抱きしめている。
「一応俺なりに考えた上で駆け出してるんだけど」
「好奇心に負けてそこらのものを口にしたり不用意に触ったりするのがか?」
「いやぁ、まぁ、
……
うーん」
好奇心に負け、頭で考えるよりも先に体が動いてしまう穹を丹恒はよく嗜める。彼が言うことも最もだとは思うがこればかりは性分だ。今から気を付けたとして簡単にどうにか出来るものでもない。
「
……
あ、じゃあさ。今日の依頼は丹恒も一緒に行こうよ」
行かせる気がないというのなら、丹恒も巻き込んでしまえばいいのだ。目が届かないところでなにかされるのが怖いのであって、目が届く範囲であれば彼もまだ安心感がある筈。
丹恒と一緒ならどんな依頼でも効率的に進められそうだという思惑もあるが、きっと楽しい時間になる。穹はそう考えていた。
「終わったらなにか美味しいものでも食べよう。これでどうだ」
依頼を終えた後にまだ楽しみがあると思うと、尚更早く起きなければという意識が芽生える。
ここはもう、無理矢理にでも上半身を起こすしかない。穹が起きれば丹恒も起きるだろう。案の定、緩慢な動きではあるが丹恒も身を起こした。表情には渋々という感情が滲み出てはいるが。
「
……
お前が食べに行きたいだけじゃないのか?」
「いつも俺が食べられるんじゃ体が持たないんだよ。俺だってたまには食べたい」
「ははっ、凄い理屈だ」
間接照明の淡い照明から部屋全体を照らす強い照明に切り替えると、二人の体が尚更ハッキリと露になる。お世辞にも清らかとは言い難い情事の痕が見受けられて、二人揃って苦笑した。
「まずはシャワーか。一緒に入る?」
「その方が早い、が」
「先に言っておくけど襲うなよ。予定が詰まってるんだから」
「善処はしよう」
寝床の周りに散らばった服を回収し、部屋に備え付けられているシャワー横のランドリーラックへ放る。互いの部屋を行き来するようになってから二人の姿はシャワー室へと消えていった。
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